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投資家の欧州資産に対するイメージを変える

J-MONEY2019年12月号 注目記事

TOPインタビュー

欧州債とダイレクト・レンディングの情報発信で
投資家の欧州資産に対するイメージを変える

欧州の国債・社債、エマージング債運用に強みを持つブルーベイ・アセット・マネジメントは、近年では、プライベート・デットの一種である欧州ダイレクト・レンディング戦略にも注力してきた。日本において15周年を迎える同社の歩みと、年金基金や金融機関が欧州資産クラスを採用するメリットなどを日本における代表者の北信也氏に聞いた。(柴田哲也)

リーマン・ショックを機に
顧客と運用資産が拡大


ブルーベイ・アセット・マネジメント・インターナショナル・リミテッド
日本における代表者
北 信也氏

 ──会社設立は2001年、日本には2005年に進出した。
 ブルーベイは、ユーロ誕生とともに成長する欧州の社債市場における非効率性の活用と、エマージング市場の投資機会に対応すべく設立された。現在は欧州最大級の債券運用のアクティブマネジャーであり、社債、ソブリン債、金利、通貨を活用して600億米ドル(約6兆4800億円)を超える資産を運用している。運用戦略としては、欧州国債・社債、エマージング債を中心にダイレクト・レンディングなどを提供している(2019年9月末時点。図表1)。

 2005年に開設した東京支店は2名でスタート。リテール向け投資信託の外部運用委託先として少しずつ実績を上 げていった。現在は19名のスタッフで、年金基金や金融機関など機関投資家ビジネスに注力している(図表2)。

──業務拡大のきっかけは。
 大きな転機の一つが、2008年のリーマン・ショックだ。運用業界全体にすさまじい逆風となり、それまで3~4%だった欧州の社債の利回りが8~9%に急上昇した。すると機関投資家の間で、「格付けが投資適格の欧州社債でそれほどの利回りが取れるのなら投資を検討したい」とのトレンドになり、顧客と運用資産が一気に増えた。コンパクトな経営規模と、元本毀き損そんを防ぐことに重点を置きながら絶対リターン獲得を目指す運用哲学が金融危機という嵐の影響を最小限に抑え、かえって飛躍の機会になったと考える。
 

ダイレクト・レンディングの伝道師
として日本における認知度高まる

───近年、年金基金など機関投資家から引き合いの多い運用戦略は。
 ダイレクト・レンディング戦略だ。欧州では間接金融が主体だが、2010年代初頭のソブリン危機の再発防止などの影響で自己資本規制などが強まり、銀行は長期貸出しを増やすことが難しくなっている。一方、足元では景気の改善で企業の資金需要が増しており、供給と需要のミスマッチが生じている。欧州の中堅・中小企業を主な対象に、我々のような運用会社をはじめとした銀行以外の貸し手が融資を行うダイレクト・レンディングは、もともとノンバンクが発達していた米国に比べて拡大途上であり、今後も投資機会は増えていくと見ている。

 日本では、ダイレクト・レンディング戦略とシニア担保付ローン戦略の2シリーズ(図表1)を通じて3ファンドを提供してきた。『シニア担保付ローンⅠ戦略』は、シニア・ローンのみで安定した利回りを求める日本の投資家のニーズに応えて立ち上げたもので、さらに円ヘッジのビークルを設定するなど使い勝手の良い設計が特徴だ。現在はシニア担保付ローンⅠ戦略の後継ファンドの募集を行っている。当社は、ダイレクト・レンディングの伝道師として日本における認知度が高まっていると感じる。

───他社の類似戦略との違いは?
 ブルーベイが、多くの同業他社に先駆けてダイレクト・レンディング市場に本格参入したのが2011年。この先行者メリットを最も象徴するのが人材面だろう。プライベート・デットの世界で実績のあるアンソニー・フォベル氏を採用し、彼をトップとした運用チームがダイレクト・レンディング戦略を担当している。

 これまで12カ国・80超の欧州中堅企業に貸し出しを実行、40超のプライベート・エクイティ・スポンサーとの案件を取りまとめてきたが、損失レシオは0.0%。つまり、融資先企業が返済遅延・事故に至った案件は1件もない。

 フォベル氏は融資検討プロセスが厳格で、100件の候補案件のうち実際に投資するのは5件未満だが、その5%未満の融資先が年率6~7%のリターンの呼び水となる。専門チームの「目利き力」こそが強みと位置付けられる。

為替ヘッジコストの低さと
地域分散が図れるメリット

───日本の投資家がブルーベイを通じて欧州資産クラスに投資するメリットとは。
 流動性を気にされる場合には、欧州投資適格債を通じて1%弱、欧州ハイ・イールド債で4%前後の利回りが期待できる。欧州ダイレクト・レンディングは、流動性をギブアップする代わりシニア・ローンで6%前後の安定したインカムが期待できる資産クラスだ。さらに、ユーロ圏と日本が同じマイナス金利環境下にある以上、ユーロと円のヘッジコストは実質ゼロ。日本の投資家も同程度のリターンが狙えるのは大きな魅力といえるだろう。

 加えて、ポートフォリオの地域分散を図ることも可能だ。日本の年金基金や金融機関では、海外のインカム資産が米国の国債やMBS(不動産担保証券)に偏っているところが多い。一方、欧州はドイツ以外にも多様な国があり、どこにアロケーションするかでパフォーマンスが変わる。欧州資産クラスのエクスポージャーが小さい日本の機関投資家は、我々の欧州債券や欧州ダイレクト・レンディングなどを組み入れることで、ポートフォリオ全体の地域分散効果を高めることができると考える。

───2019年11月に新オフィスに移転した。今後の抱負を。
 近年は機関投資家向けの情報発信に力を入れている。週に3~4本は日本語のマーケット分析や運用コメントなどをリリースしているほか、年に2~3回は運用者がセミナーを通じて直接見通しを説明する機会を設けている。

 新オフィスでは、20人規模のミニ・勉強会などを積極的に開催したい。欧州は、かつての債務危機や現在進行中のブレグジット(英国のEU離脱)など混乱しているイメージが強いかもしれないが、動きのあるマーケットのほうが投資機会は生じやすいともいえる。今後も欧州債とダイレクト・レンディングを入口に、日本の欧州資産に対するイメージを変えたい。