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長期のイールド確保を目指す運用戦略を提供

J-MONEY2019年6月号 注目記事

TOPインタビュー

世界37都市のローカルオフィスを活用して
長期のイールド確保を目指す運用戦略を提供

米国の保険大手プルデンシャル・ファイナンシャルの運用部門として、世界で約1.2兆ドル(約109億円)の資産を運用するPGIMは、日本でも伝統的資産からオルタナティブ資産まで幅広い運用戦略を提供している。プレジデント アンド チーフ・エグゼクティブ・オフィサーの デイビッド・ハント氏に、運用会社としての特徴や年金基金など機関投資家の注目度が高い資産のほか、今後の運用ビジネスのポイントを聞いた。(柴田哲也)  ※記事中のデータは記載がない限り2018年末現在

PGIM
プレジデント アンド チーフ・エグゼクティブ・オフィサー
デイビッド・ハント氏

「パブリック」「プライベート」
双方の資産クラスをカバー

──運用会社としての特徴は。

デイビッド 地域やリスクが異なる幅広い資産クラスをカバーしている点だ (図表1)。今日の運用業界には2つの潮流がある。一つは、株式や債券など流動性の高い伝統的資産で成長してきた運用会社。もう一つが、プライベート・エクイティやプライベート・デットなど未上場の低流動性資産を得意とする運用会社だ。  

我々は、分散投資で長期運用を目指す保険会社の運用部門であることから、伝統的資産と非伝統的資産双方を提供している。とくにパブリック債券の関連戦略の運用資産残高は世界で4番目に大きい。

■図表1 PGIMの運用戦略ラインアップ

──日本市場での事業拡大に力を入れている。

デイビッド PGIMジャパンの前身は1988年設立で、2019年3月末の運用資産残高は21兆8814億円(図表2)。近年はグループ外顧客の運用資産残高が増え、足元では6兆2800億円にのぼる。公的年金をはじめ幅広い機関投資家と取引があり、企業年金基金からの相談も多い。

■図表2 PGIMジャパンの運用資産残高の推移(2019年3月末現在)

───機関投資家に人気の資産は。

デイビッド イールドを求める傾向は世界共通だが、日本の年金基金の意欲はとりわけ強いと感じる。多くの年金基金は長年、日本国債中心のポートフォリオで運用してきたが、歴史的な低金利環境を受けて6~7年前から米国社債やユーロ債など海外債券のウエートを高めた。  
 
 しかし、米国の利上げなどの影響で2017年頃から為替ヘッジコストが上昇し、コスト支払い後はイールドがほとんど無くなる事態になった。近年は、為替ヘッジコストを支払った後でも目標イールドが達成できるような期待利回りが相対的に高めの運用戦略、具体的には、プライベート・デットやインフラストラクチャー、不動産、エマージングマーケット債、ストラクチャードプロダクツなどの証券化商品に関する問い合わせが増えている。

6つのリセッションを乗り越えた
プライベート・デット戦略

───プライベート・デットやインフラストラクチャー、不動産などは他の運用会社も力を入れている。違いをどう打ち出しているか。

デイビッド 差別化の第一がトラックレコードの長さだ。PGIMのプライベ ート・デットの関連戦略は約50年という長いトラックレコードを誇る。この間にリーマン・ショックをはじめ6つのリセッションを乗り越え、市場変動時の知見を積んだ我々の運用ノウハウに対する投資家の評価は高く、プライベート・デット戦略の2018年末の運用資産残高は834億ドル(約7兆5800億円)にのぼる。  

 第二は、ローカルオフィスをフル活用した商品組成体制だ。PGIMは世界15カ国・37都市にオフィスを持つ。 例えば、プライベート・デットの商品を組成する際は、ローカルのオフィスが企業訪問などを通じて調査したり直接投資したりしている企業の社債などから組み入れを検討する。スタートアップ企業のプライベート・デットに投資するケースでも、多くの運用会社のように自社と関わりのない第三者の銀行が売り出した社債を購入するのではなく、我々がじっくり時間をかけて成長性や収益性を見極めた資産で組成している。

───今後の運用ビジネスにインパクトを与えそうな政治・経済のイベントは。

デイビッド メディアは米国の利上げ停止や米中貿易戦争、ブレグジット(英国のEU離脱)など目先のイベントに注目しがちだ。しかし、運用業界の長期的なトレンドを考えるうえでは、恒常化してしまった経済の低成長と低金利、それに先進国を中心に世界で進む高齢化の3つのファクターが与える深刻なダメージについて真剣に考えなければならないと思う。  

 世界経済の成長力の低下は、リーマン・ショックを境として、主要国・地域の労働生産性が一向に上がらない点が大きな原因とみている。経済が成長しないと、投資の期待収益率は低いままだ。このような環境下では、伝統的な株式や債券の投資妙味の回復は難しい。いろいろなデータを分析しても、伝統的なリスクアセットの今後10年間の期待収益率は、過去40年間の平均より下がることは目に見えている。先進国資産についてはその傾向が顕著だ。日本を含む世界の年金基 金の間では、これからもイールド・ハンティングのトレンドが続き、株式や債券などからオルタナティブ商品へ資産がシフトするだろう。

2018年末までの16年間、
預かり資産は一貫して流入超

───日本の運用業界の課題と、それに対して御社はどう解決に貢献するか。

デイビッド 日本では高齢化対策が急務だ。年金基金など機関投資家を対象としたホールセール分野では、加入者の長寿化への備えなどを目的としたイールド確保の需要が一層強まるだろう。エマージングマーケット、ストラクチャードプロダクツ、ハイイールドなど相対的に高い利回りが期待できる資産をきっちりリスクコントロールしながら運用する商品のニーズはさらに高まるのではないだろうか。  

 機関投資家の意識変化へのサポートも重要だ。日本の年金基金の多くは、イールドの確保にはオルタティブなど期待収益率の高い資産への投資が重要と頭ではわかっているものの、実際の投資行動には移していない。典型がエマージング資産で、価格変動リスクを恐れるあまりアンダーウェイトのスタンスを取り続けている。しかし、我々は、今後30年間の世界の経済成長の8割はエマージング市場由来と確信している。年金基金などの長期投資家にとって、目先のボラティリティはキャピタルロスに直結するものではない。適切にリスクコントロールしながら長期で向き合うことで、目標イールドの達成が視野に入ってくる。

───日本市場の今後の事業展開は。

デイビッド 我々は日頃から、「いかに高いリターンを実現するか」に集中している。当社のパフォーマンスを見て、興味を感じたらぜひお声かけいただきたい。アクティブマネジャーとして、投資家のリターン向上に尽くす。2018年末までの16年間、我々のグローバルの預かり資産は一貫して流入超だった。これはひとえに運用成果を実感した年金基金などが、新規投資や追加投資してくれたためだ。これからも「運用ありき」で臨んでいきたい。