非製造業を支えに日本経済は回復基調を維持
生産活動の減速が続く
国内製造業の生産活動が減速している。経済産業省から公表された2022年11月の鉱工業生産指数は前月比0.1%減となり、3カ月連続で低下した。生産回復を牽引してきた生産用機械や汎用機械が大きく落ち込んだほか、車載用半導体不足が続いている影響で輸送機械の生産も減少した。
製造業は世界的にみても減速局面にある。2022年12月のPMI(製造業購買担当者景気指数)は、日本、米国、中国、ユーロ圏とも好不況の分かれ目となる50を下回っている。世界の製造業に同調して動く世界半導体売上高(3カ月移動平均)も2022年8月に前年比でマイナスに転じ、同年11月には前年比9.2%減とマイナス幅が拡大している。
世界経済が減速傾向で推移していることから、国内生産も弱い動きが続くと予想される。経済産業省では2022年12月の製造工業生産予測指数が前月比で1.3%低下すると試算している。
仮に、12月の鉱工業生産が前月比でマイナスになると、同月の景気動向指数から機械的に判定される基調判断が「改善」から「足踏み」に引き下げられるとみられ、日本経済全体でも景気後退局面入りが意識されることになろう。
個人向けサービスを中心に回復の動きが広がる
製造業の動きとは対照的に、非製造業には回復の動きが広がっている。サービス業や小売業、運輸、情報通信などの活動を指数化した第3次産業活動指数をみると、2022年10月は前月比0.1%増と小幅なプラスにとどまったが、基調として上向きの動きを維持している(図表)。
非製造業の回復を牽引している業種が生活娯楽関連サービスである。宿泊業や飲食業、遊園地などの娯楽業が大きく持ち直している。新型コロナウイルスの感染は依然として拡大と沈静化を繰り返しているが、ワクチン接種の進展などで人々の感染への警戒感が薄れ、外出意欲が上向いているためだ。
2022年10月11日から始まった「全国旅行支援」の効果も旅行・娯楽需要の回復に貢献している。特に、観光旅行はコロナ禍で3年近く抑制されてきたこともあって、潜在的な需要が積み上がっている。旅行支援による割引額が減額される2023年1月以降も回復基調を維持すると予想される。
コロナ禍からの正常化に向けた動きが日本経済を下支え
非製造業の活動は上向いているとはいえ、コロナ禍前の2019年の水準には届いない。政府による活動制限が大幅に緩和された米欧と比較しても回復が遅れている。ただ、その分だけ回復の余地が残されているということでもある。
新型コロナウイルスの感染収束はなお見通せないが、2023年も日常を取り戻そうとする家計行動が続くとみられ、この動きが非製造業の持続的な回復に寄与しよう。
日本の景気循環において製造業の動向は重要な要素であり、これまでも製造業の減速をきっかけに景気後退に転じてきたが、今回はコロナ禍からの回復という過去とは異なる状況にある。
世界経済の減速感が強まる2023年前半にかけて、国内生産活動への下押し圧力はもう一段高まるとみられるが、非製造業の回復を支えに日本経済は景気後退を回避すると予測している。