日興アセットマネジメント 機関投資家向け「FOREWORD」セミナー開催。各国の分断化でテールリスクが高まる
日興アセットマネジメントは2019年7月11日、都内で国内外で活躍する著名なスピーカーを招き、機関投資家向けセミナー「FOREWORD JAPAN 2019」を開催した。オープニング講演で、ユーラシア・グループ社長 イアン・ブレマー氏は、「G20後の国際政治情勢」について語った。(取材日:2019年7月11日)
日興アセットマネジメントの「FOREWORD」は、東京をはじめ、シンガポール、オーストラリア、ニュージーランドなどで毎年開催するグローバルセミナーだ。今回の「FOREWORD JAPAN 2019」では、投資環境の変化がもたらす影響をテーマとし、国内外の有識者が講演を行った。オープニングを飾ったイアン・ブレマー氏は、ユーラシア・グループの代表に加え、地政学リスクを専門とする国際政治学者としての肩書を持つ。本講演でブレマー氏は、2019年6月下旬、大阪で行われた20カ国・地域首脳会議(G20サミット)が与えたグローバルな投資環境の変化について語った。
ブレマー氏は、「近年、想定外の大幅暴落が発生するテールリスクが高まっている。理由は、国や市場が分断され、一体感を失っているからだ」と指摘。これまで我々は、2001年のアメリカ同時多発テロや2008年のリーマン・ショックなど、大きな政治・経済の危機によるテールリスクの顕在化を幾度も経験してきたが、各リスクイベントの直後に開催されたG20では、ロシアや中国を含め、ほとんどの国々が解決への尽力に同意したと振り返った。
「その結果、世界各国は一体化して対応にあたり、経済的なショックを無事に乗り越えることができた。しかし、今回のG20では参加国の分裂が際立ち、その結果には悲観的な見方が多かった。今後は世界各国が協働してテールリスクに対応することは難しいといえる。昨今の世情を見ていると、近々どの国で地政学的な危機が発生してもおかしくはないが、おそらく過去の危機対応時のような結果を得ることは容易ではなく、経済危機からはなかなか抜け出せないだろう」(ブレマー氏)
今後発生しうるテールリスクは何だろうか? ブレマー氏は、例として3つ挙げた。1つ目は、英国のEU離脱(ブレクジット)だ。離脱が決定すれば、世界市場に大きな影響を与えることは間違いない。英国内では、税金や失業率が上がり、倒産も相次ぐだろう。
2つ目は、米国がイランへ軍事攻撃をする事態。「数年前では考えられなかったが、今後1年では40%の確率で起こりうると見ている」(ブレマー氏)。そうなれば、原油価格は最低でも1バレル100ドルまで上昇すると予測。世界中に与える経済的打撃は深刻と見る。
3つ目は、米中貿易摩擦の悪化だ。これまでは何らかの合意へ向かう可能性もあったが、NYダウが記録的な高水準を記録し、自信をつけた米国のドナルド・トランプ大統領は強硬路線へと切り替えた。ブレマー氏は、「米国内では失業率は低いものの、賃金水準は伸びず、米経済の強靭さはいまだ取り戻せていない。よって、米政府は利下げを続けると思われるが、米景気が好況になればなるほど、中国との合意からは遠ざかることになる」と危惧した。
ブレマー氏はどのテールリスクが生じたとしても、世界が分断化される中、各国一体化して対応にあたることは期待できないほか、かつてはアメリカ中心で見られた地政学的な秩序が崩壊していくのは確実と強調。「投資に対しても、これまでの常識が通用しないことを理解しておく必要がある。簡単に経済動向を読むことはほとんど不可能といってもよいだろう」と警鐘を鳴らした。
ブレマー氏ら複数の外部有識者による基調講演に続き、同セミナーの主催者である日興アセットマネジメントからはグローバル各拠点の投資スペシャリストが登壇し、「株主からステークホルダーへ ― ESGと企業の将来価値への投資における進化」と「トータルソリューションの提供と管理~垂直統合モデルのご紹介」という2つの題目で講演を行った。