M&Gインベストメント シニア・ファンドマネージャーのリチャード・ライアン氏に、欧州の債券市場の展望などを聞いた。(取材日:2019年5月23日)

リチャード・ライアン氏
M&Gインベストメント
シニア・ファンドマネージャー
リチャード・ライアン

足元の債券市場を取り巻く環境は。

ライアン 2018年第4四半期は世界的な成長鈍化や米中通商紛争などの影響を受け、債券市場は乱高下が続く厳しい局面にあった。我々にとって市場のボラティリティ高騰は、投資機会をもたらし、収益性の高いポートフォリオを構築できるチャンスだ。当社は投資家心理の弱気などを反映した割安銘柄へ投資し、2019年第1四半期は非常に良いスタートを切ることができた。

現在魅力的な投資対象はなにか。

ライアン これまで機関投資家の視線は、ECB(欧州中央銀行)の購入対象である流動性の高い高格付け社債などに集中していた。欧州で最大級のクレジット・リサーチ力を持つ当社は、ヨーロッパ全域の様々なセクターをカバーしており、市場から注目されていない割安銘柄を発掘していく。

最近の有望資産の一つの不動産セクターはここ数年、銀行の保証付ローン債券よりも無担保社債市場を通じて資金調達を行う中小企業が大幅に増加した。豊富な人材を有する当社は、こうした中小企業の調査も徹底し、市場から注目される前に安価な取引を実現している。また、銀行セクターの中でも不良債権を取り扱う、国内市場で確固とした地位を確立する一部の商業銀行や、自動車セクターなども魅力的と言える。

債券市場へ投資する際の今後の注意点。

ライアン 債券市場にとって懸念事項は金融政策の変更だ。特に米国の金融政策は転換期を迎えつつあり、不確実性の高まりでセンチメントが非常に変わりやすい傾向にある。従来は、中央銀行が市場に介入し調整を行うこともあったが、厳しい状況にある近年はこうしたサポートが期待できない。機関投資家は各々で、市場環境が良好な時に利益を確保し、バリュエーションに応じてリスク資産を減らすといった柔軟性あるアクティブ運用が求められるだろう。