- 投資のあらゆる局面で人権課題は顔を現す
- 人権要素を考慮しない投資行動のリスクは甚大
- バリューチェーン全体で相互に取り組みを促すことが重要
企業も人権尊重の主役に
経営リスクにも直結
日本での関心は高いとは言えないが、企業活動における人権尊重は、ESG(環境・社会・企業統治)の中の「S(社会)」「G(企業統治)」に含まれる重要な要素の1つとして、国際的に注目度が高まっている分野だ。
ESG投資と聞くとどうしても「E(環境)」に目が向きがちだが、日本の機関投資家が今後、ESG投資を加速させていく上で、「人権」の視点は無視できなくなってくる。
そもそも人権とは、人間が人間らしく尊厳を持って幸せに生きる権利のことだ。国籍や性別、宗教、民族、職業、障害の有無などで差別を受けない自由や、結社の自由、居住移転の自由、プライバシーの権利などが含まれ、全ての人が生まれながらに持つものと認められている。戦後の国際社会では、基本的に国家が主体となって人権の保護を推進してきた。
しかし、経済活動がグローバル化し、サプライチェーンが国境を越えるようになるにつれて、環境破壊やそれに伴う健康被害、強制労働など、企業活動により引き起こされる地球環境や社会生活への悪影響が看過することのできないほど大きな問題となっている。
その潮流の下、人権に関する課題の中心プレーヤーとして、国家に加えて企業の役割までもが重要視されるようになってきたことは、本テーマを巡る近年の動きの中で最も注目すべきトレンド転換であったと考えている。
こうした企業の人権尊重の動向は、当然その企業に投資を行う投資家にとっても深く関連してくる重要な動きであるため、少し細かく見てみよう。
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