政府が打ち出した「資産所得倍増プラン」を巡り、国民の「貯蓄から投資へ」を本気で加速させるため、官民挙げての議論が活発化している。そこで浮き彫りになったのは、顧客目線による金融商品の販売の在り方だ。長年、個人顧客と接点を持つ地域金融機関には、従来の販売業務だけでなく、生涯に渡るアドバイザーとしての役割が期待されている。市場部門の基盤強化を通じて、地域金融機関のビジネス変革を支援するプレーヤーを追う。

田中 あけみ氏/井上 武宣氏

北國銀行による投資助言会社

「御行が掲げる先進的な戦略を実現するには、市場部門の役割がますます重要になります。有価証券運用の拡大や運用の多様化などのお手伝いをALCOLABにさせていただけないでしょうか」。北國銀行の本店役員室で、杖村修司頭取を前にALCOLAB(アルコラボ)の田中あけみ氏は、そう訴えかけた。田中氏との対話以降、北國銀行の企画や市場部門とALCOLABが協働で行う数々のプロジェクトが立ち上がった。

地銀など地域金融機関では、顧客の資産形成支援をビジネスチャンスと捉えつつも、従来どおりの販売戦略だけで顧客本位を遵守できるのかとジレンマを抱えるところは少なくない。ただ、顧客へのアドバイスで対価を得るには投資助言業登録が必要であり、助言業には運用のプロ人材の確保・育成やビジネスモデル確立への試行錯誤が必要だ。

日本において投資助言業がいまだ確立されていない中、それでも北國銀行は、2021年5月末に地銀初の投資助言会社としてFDアドバイザリーを設立した。事業を立ち上げたのは、顧客本位への強いこだわりと、銀行業とは異質の資産運用分野に挑戦しようとする社内文化に加え、SOMPOアセットマネジメントやALCOLABら周囲のサポートが背景にある。

経営陣と市場業務を再定義

田中 あけみ氏
ALCOLAB
代表取締役
田中 あけみ

ALCOLABは、地域金融機関の市場部門の基盤強化や改革の支援を目的に2019年4月に設立されたスタートアップ。自身も投資助言業の免許を持つが、それに限らず顧客と協働する形で市場業務改革をサポートする。

元々は外資系資産運用会社でキャリアを積んだ田中氏が会社を立ち上げたのは、金融機関への営業での「忸怩じくじたる思い」(田中氏)が底辺にあるという。銀行経営における市場業務の重要性が増す中で、市場部門の将来像や到達するための道筋を具体的に示せる経営は少ない。経営が市場部門の役割を再定義し、コミットするための働きかけも重要だと痛感した。「RAF(リスクアペタイト・フレームワーク)の活用も有効なので、その導入や実践的な活用の支援も行います」(田中氏)。

伝統的な銀行業務が縮小傾向にある中、資産形成支援や資産運用といった成長分野への参入を検討する銀行も増えており、投資助言業への参入支援やコンサルタント育成支援なども行っている。

ただ、数名規模のスタートアップが、地銀へのビジネスをスタートさせるのは容易ではなく、自ら運用業を行うにもインフラや資金面で敷居は高い。「私たちに信頼を貸してください」と田中氏が運用会社に願い出て、そのパートナーシップに賛同したのがSOMPOアセットマネジメントだ。

「社内でも反対意見があったのは確か」と、同社の井上武宣氏は胸中を明かす。「ただ、当社はプロダクトベースではないかたちで地域金融機関と長期のビジネスを模索しており、会社としてチャレンジを推奨する方針を打ち立てていたため、社長である小嶋は否定的な態度を取らず、検討を進めるよう促しました」(井上氏)

地域金融機関の傘下に助言会社を設営し運営する場合、2社のビジネススキームを整理すると図のようになる。SOMPOアセットマネジメントはALCOLABからの投資助言を得て、その内容に基づいた運用を提供する。あわせて、助言会社に対しては設立への手続きや専門人材の育成といったノウハウを供与する。北國フィナンシャルホールディングスの投資助言会社であるFDアドバイザリーも同様の動きを取っている。

◆SOMPOアセットとALCOLABの地域金融機関向け支援スキーム図

SOMPOアセットとALCOLABの地域金融機関向け支援スキーム図

◆ALCOLABによる地域金融機関への主な支援策

ALCOLABによる地域金融機関への主な支援策

地域のお客様と同じ船に

井上 武宣氏
SOMPOアセットマネジメント
機関投資家営業部長
井上 武宣

SOMPOアセットマネジメントが2021年10月に設定した「FDA日米バランスファンド(安定型)」「FDA日米バランスファンド(成長型)」は、その名の通り、FDアドバイザリーの投資助言を受けて運用するファンドで、日米の株式と国債にETFを通じて長期的に分散投資する。信託報酬の一部をFDアドバイザリーが得る。「運用会社として地域のお客様と同じ船に乗っている思いです」(井上氏)。コストを徹底して削減したコンセプトも特徴だ。FDアドバイザリーは顧客のニーズに応じてこのファンドを紹介するが、必須ではない。

個人にとって投資助言会社は「家庭医のような存在」を目指すべきだと田中氏は話す。「高度化する金融の世界で自己責任で長期投資を継続することは難しい。相場環境が難しいときにも一緒に悩み、専門的に考えてくれる安心感が価値になります。人生に悩みは尽きず、資産形成は解決へのピースの1つに過ぎません。だからこそ、地元の暮らしに密着した地域金融機関が果たすべき役割は大きいのだと思います」(田中氏)。

資産運用会社としてのみならず、「SOMPOグループとして広い視座で地域金融機関を支援していきたい」と井上氏。保障や介護といった運用以外の強みと全国ネットワークを活かし、総力を挙げて取り組む決意だ。

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SOMPOアセットマネジメント株式会社

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