「クオリティ銘柄運用」と「インパクト投資」を両立した戦略として欧州の年金基金も注目するのが、「野村グローバル・サステナブル・エクイティ戦略」だ。株式市場の下落局面に強い同戦略の特徴を、3つのKeywordと運用者のコメントでひも解く。

Keyword①
割安なクオリティ銘柄へのこだわり

アレックス・ロウ氏
運用主担当者
アレックス・ロウ

「野村グローバル・サステナブル・エクイティ戦略」(以下、GSE)は、株主リターンと社会的価値向上を同時達成する企業に集中投資するグローバル株式運用戦略だ。実際の運用は、野村アセットマネジメントの英国の運用チームが担う。運用主担当者のアレックス・ロウ氏は、他のESG(環境・社会・企業統治)運用戦略との違いをこう述べる。

「英国拠点では2013年から全ての株式運用戦略にESG評価を反映し、ノウハウを積み上げてきました。私たちは、先行き不透明な現代において長期安定運用を実現するには、クオリティの高い事業を展開する企業の株価の割安度に着目した投資を継続して実践することが重要と考えます。世の中には、足元の成長期待を優先するグロースバイアスの強い運用戦略が少なくありません。一方、『GSE』は本来の企業価値と足元の株価を分析・比較し、私たちの基準で割安と確信した銘柄のみでポートフォリオを構築します」(ロウ氏)

この「GSE」の投資哲学を体現するクオリティ銘柄の一つが、HIV(ヒト免疫不全ウイルス)治療のマーケットリーダーである米バイオ製薬会社だ。同社は、新興国の低所得者層に低価格で治療機会を提供するなど社会課題の解決にも積極的に取り組む。2020年春には新型コロナウイルスの治療薬を開発し、株価は急上昇。しかし、ロウ氏率いる運用チームは、本来の企業価値に比べ株価は割高と判断して全売却に踏み切った。

その後、他の製薬会社のワクチンが世界的に広まり、同社の株価は急落。それを見たロウ氏は、本来の企業価値に比べ割安と見てすぐに再投資した。「割安なクオリティ銘柄へのこだわりが、『GSE』独特のβ(ベータ)値の低いポートフォリオのポイントです。結果として図表1に示すように、相場下落局面でも底堅いパフォーマンスを発揮する特徴があり、安定した実績につながっています」(ロウ氏)。

【図表1】「野村グローバル・サステナブル・エクイティ戦略」の運用実績
「野村グローバル・サステナブル・エクイティ戦略」の運用実績
●GSEのリターンは「ノムラ・アセット・マネジメント・グローバル」に帰属するコンポジット(報酬控除前)の数値です。「ノムラ・アセット・マネジメント・グローバル」は、グローバル投資パフォーマンス基準(GIPS)への準拠を表明しており、その手続きの状況は2005年1月~2022年3月まで検証済みです。
●ベンチマークはMSCI ACWI Index(円換算、Net)です。
●上記は過去のデータであり、将来の運用成果を示唆あるいは保証するものではありません。
※MSCI ACWI IndexはMSCIが開発した指数です。同指数の著作権、知的所有権その他一切の権利はMSCIに帰属します。また、MSCIは、同指数の内容を変更する権利および公表を停止する権利を有しています。
出所:野村アセットマネジメント

Keyword②
運用チーム全員がESG担当者

「GSE」のポートフォリオ構築プロセスは3つのStepに分けられる(図表2)。まず、世界株式約2500銘柄から定量スクリーニングで投資ユニバースを選定。続いて、ボトムアップ分析を通じ投資可能銘柄群の約90銘柄まで絞り込む。このStep2のカギを握るのが、野村アセットマネジメントのグローバル株式銘柄選定委員会(GSSC=Global Stock Selection Committee)だ。

【図表2】「野村グローバル・サステナブル・エクイティ戦略」の運用プロセス
「野村グローバル・サステナブル・エクイティ戦略」の運用プロセス
出所: 野村アセットマネジメント
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トム・ワイルドグース氏
運用副担当者
トム・ワイルドグース

「GSSCでは、自社開発のキャッシュフロー割引モデル(DCFモデル)によるバリュエーション分析を基に、ポートフォリオマネージャーとアナリストが個別銘柄に関する議論・評価を行い、組入銘柄リストを作成・維持します。2005年に現在の形となったGSSCは長期にわたる調査ヒストリーを有しますので、長期目線でのボトムアップ分析が可能です」(運用副担当者のトム・ワイルドグース氏)

「GSE」のボトムアップ分析ではESGも必須項目となっており、運用チームが自らESGに関する調査やエンゲージメントを実施する。「企業のファンダメンタルズを理解している運用者やアナリストがESGの課題に対しても真剣に向き合うことは、株主価値および社会的価値の最大化を目指すために、理想の運用体制であると考えます」(ロウ氏)。「GSSCのメンバーには拒否権があり、一人でも反対すると組入銘柄候補リストから外されることで、特定の運用者の主観やバイアスを防ぎます」(ワイルドグース氏)。

そして最後のStep3で、自然環境、従業員、社会、顧客、サプライヤーの5つの観点からステークホルダーとの関係性をスコア化し、社会的価値向上の確信度の高い銘柄を選定する。加えて市場動向、流動性やポートフォリオのリスク状況などを総合的に勘案し、最終的なポートフォリオを構築する。

Keyword③
インパクト情報開示の透明性の高さ

ESGは非常に広い概念のため、「GSE」では、①気候変動の抑制、②天然資源の有効活用、③感染症の撲滅、④生活習慣病の改善、⑤基本的な金融サービスの提供、⑥安全な飲料水の提供――の6つをインパクト・ゴールに設定。どの銘柄への投資が、どのインパクト・ゴール達成に向けた取り組みかなどを定期的にレポートで公表している。

このようなインパクト情報開示の透明性の高さを評価して「GSE」への投資を決めたのが、欧州でも厳しい倫理的投資基準を適用していることで知られるデンマークの年金基金だ。「同基金は複数のESG運用戦略に投資していましたが、パフォーマンスの変動幅が大き過ぎると悩んでいました。先方の世界株式でサステナブルなポートフォリオを構築したいニーズとも合致し、資金を投じていただいています」(ロウ氏)。

「GSE」の2022年8月末時点の運用資産残高は約1105億円。前述のデンマークの年金基金のほか、日本の保険会社も投資している。株主リターンと社会的価値向上を同時に達成する企業に着目した「GSE」は、ESG運用戦略の新しい選択肢として存在感が高まっている。

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野村アセットマネジメント株式会社

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