2018年は米国の利上げに伴い、多くのエマージング債券が売られた。ベアリングスLLC マネジング・ディレクター エマージング債券投資チーム ポートフォリオ・マネジャーのジェム・カラジャダ氏に、エマージング債市場について話を聞いた。(取材日:2018年11月29日)

ジェム・カラカダグ氏
ベアリングスLLC
マネジング・ディレクター
エマージング債券投資チーム
ポートフォリオ・マネジャー
ジェム・カラジャダ

エマージング市場の現状をどう見る。

カラジャダ 新興国全体では依然高成長が続いているが、成長率は鈍化しつつある。エマージング市場に対する逆風としては、①米中の貿易戦争、②米国の金利上昇、③主要国中央銀行の資産縮小、④原油価格の高騰が挙げられる。

①の米中貿易戦争は長期化が見込まれるものの、世界経済への影響は限定的とみている。②の米国金利については今後も上昇の余地がありそうだ。しかし、2018年11月の米中間選挙によって「ねじれ議会」が誕生したことで、米国政府は財政刺激策を継続しにくくなり、金利の上昇が緩やかになる可能性も出てきている。

主要国の金融正常化に伴い、③の主要国中央銀行の資産縮小は今後も続く見込みだ。④に挙げた原油価格は、そもそもボラティリティが大きい。そのためエマージング市場へ投資する際は、原油価格の変動を調整できるような政治的枠組みの整った国を選定するべきだ。

具体的に注目している国は。

カラジャダ メキシコの債券は当社のポートフォリオの中でも大きな割合を占めている。トランプ米大統領が2016年に就任して以来メキシコ経済を懸念する声は多いが、同国がデフォルトする確率は極めて低く、長期利回りも10%前後と魅力的な水準だ。十分投資妙味がある。

読者へのアドバイスを。

カラジャダ ひとくちにエマージング市場といっても様々な国があり、なかには投資妙味があるにも関わらず、様々な逆風を受けリスクが誇張されている国もある。現在のような逆風の環境下では、個々の国を詳細に分析してバリュエーションを見極め、しっかりと投資先を絞り込んだアクティブ運用を行うことが重要だ。そのためにも、運用会社選びには慎重になるべきだろう。パフォーマンスだけでなく、優れたポートフォリオを構築し、ハードルの高い運用目標に応えるための投資プロセスを有するか否かを見極めてほしい。