スイスに本拠地を構えるフォントベル・アセット・マネジメント(以下、フォントベル)では、傘下の債券運用ブティック、TwentyFourアセット・マネジメントが運用する短期投資適格社債をコアとする「ARC戦略」とサステナブル株式ブティックが運用する中長期で豊富な投資機会とリターンが見込める「環境インパクト投資戦略」をグローバルで展開している。その特徴と魅力を聞いた。

フォントベル・アセット・マネジメント
フォントベル・アセット・マネジメント
日本における代表者
吉野 剛司氏(左)
エグゼクティブ・ディレクター
辻 英治氏(右)

下落からの回復が早い短期債券。変動金利のABSを組み入れる

米国を中心にした世界的な金利上昇が継続的に続いている。これまでQE(量的緩和政策)が長らく続き、運用戦略を変更せずとも、問題にならないマーケット環境であったが、大きな転換点を迎えた。

「日本の機関投資家の多くはポートフォリオのメインは債券になっている。その債券の価格下落を招く金利の上昇にいかに対応していくかが投資家の喫緊の課題だ」と、フォントベル・アセット・マネジメント・プライベート・リミテッド日本における代表者を務める吉野剛司氏は話す。

フォントベルの傘下でロンドンに本拠を構えるTwentyFourアセット・マネジメントでは、日本の投資家に対し、主に短期投資適格社債とABS(Asset Backed Security)などを組み入れた「絶対収益型クレジット(ARC)戦略」を提案している。

「短期社債は金利の上昇に伴い価格は下落するが、その後のロールダウン効果や、再投資の際に高いインカム収入が期待でき、比較的早い段階で下落からの回復ができる。さらにABSは変動金利のため、足元の金利上昇下においてクーポンの増加が見込める」と、同社エグゼクティブ・ディレクターの辻英治氏は説明する。

同戦略のポートフォリオ基本設計は、5年以内の短期の投資適格社債を67%以上組み入れるほか、ABSやBB格債で構成する(図1)。パフォーマンスの安定性を保つために、エマージング市場やシングルB格以下の債券は投資しない。この組み合わせの実現には、TwentyFourアセット・マネジメントが独自開発したシステムによる分析が貢献している。

【図1】投資適格級欧州ABSコンポジット円ヘッジ・パフォーマンス

】投資適格級欧州ABSコンポジット円ヘッジ・パフォーマンス

「同戦略は低リスク、安定したリターン、高シャープレシオで再現性の高いポートフォリオの作成を目指し、独自開発のシステムを用いて様々な債券クラスの組み合わせを検証した。その結果、短期投資適格社債を3分の2程度組み入れたポートフォリオが最も高いシャープレシオを記録することが分かった」(吉野氏)

このような、短期投資適格社債を中心にしたポートフォリオは、1994年にFRB(米連邦準備理事会)が政策金利を250bps(ベーシスポイント)上げた局面でも、バックテストによると年率1.75%(ドルベース)のプラスリターンを記録している。また、類似の短期社債インデックスファンドよりも低リスクかつ高リターンを上げているのも魅力だ(図2)。現在の金利上昇局面でも、同戦略は相対的に安定したリターンを創出すると見込んでいる。

【図2】短期債券セクター(米ドル建て) ピアグループ・リターン・ボラティリティ比較
短期債券セクター(米ドル建て) ピアグループ・リターン・ボラティリティ比較
ボラティリティは代表口座:TwentyFourARC戦略(ドル建て)の数値で、2016年5月31日以来です。リターンには再投資(ネット)の収益が算入、報酬・費用が控除されています。モーニングスターがカバーする短期債券セクターは、米ドル建てまたは米ドルヘッジされた短期債券に投資するファンドで構成されています。各ファンドの総計した満期は、3年を超えない傾向が見られます。比較対象に選ばれたファンドは、2022年3月時点でセクター内での資産総額が最大のものでした。
出所: TwentyFour、Bloomberg、ICE Indices 2022年6月7日現在
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アンコンストレインド運用で社会貢献とリターンを両立

同社は中長期の収益機会として、「環境インパクト投資戦略」も提案している。同戦略は2008年から運用しており、SFDR(サステナブルファイナンス開示規則)第9条に適合した10年以上の長期のトラックレコードを持つ。

同戦略の特徴は、地球環境改善といった社会的貢献のみならず、中長期的に魅力的なリターンを上げている点である。「図3のとおり、設定来14年間の年率リターンは13.5%と2桁のリターンを出している」(吉野氏)。

【図3】環境インパクト投資戦略パフォーマンス
環境インパクト投資戦略パフォーマンス
出所:Vontobel, 期間:2008年11月17日~2022年7月29日、2008年11月17日=100として指数化、代表口座(Clean Technology fund)、ユーロ建て、運用報酬等控除後リターン、右図 2022年7月末基準
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同戦略の採用銘柄は、環境に対する技術、サービス、ソリューションを提供する企業に限定している。ベンチマークにとらわれないアンコンストレインド運用を採用し、世界の株式約2万5000の銘柄から、環境ビジネスに取り組む企業の中でも競争優位性のある銘柄を段階的に選別し、最終的に株価が割安水準の約60銘柄に投資する。そのため、ポートフォリオ企業の売り上げ全体のうち環境ビジネスからの売り上げは75~80%を占める。

環境分野への投資は、長期的な課題への投資となるため、必然的に中長期投資が基本となる。運用方針について辻氏は次のように語る。

「中長期での運用と聞くと、一度組み入れた銘柄は成長するまで保持し続けるバイ・アンド・ホールドのような運用スタイルと解釈する方もいる。我々はリターンを積極的に取りにいくために、想定する株価を上回れば利益確定の売却を行い、割安になった段階で再投資する。目安としては、想定株価の2~3割ほど割安なものに投資しており、それが13.5%の設定来リターンに結び付いている」(辻氏)

地球温暖化などの環境問題はもはや避けて通ることができない段階まで進行しており、今後長期的に社会が向き合わなければならないがゆえに、莫大な投資機会を持つ。

「フォントベルは、現在ほどESG(環境・社会・企業統治)が浸透していなかった2008年から、環境にフォーカスした同戦略を運用してきた。長いトラックレコードを機関投資家の方に評価されており、問い合わせも増えている」(吉野氏)

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