オルタナティブ投資でも重視されるESG

オルタナティブ投資の今後の見通しは。

ヤズダニ 世界レベルでは、インフラの金利上昇が見られると考えている。新興国の都市化、先進国の老朽化したインフラの改修の両面で需要が高まることと、例えば自動運転のような新しいテクノロジーに基づく、新しいインフラへの要請もある。一方で、金利上昇はインフラ事業を進めるうえでの制約要因にもなりうるので、金利の動向には注意が必要だ。

PwCではインフラファンドの成長率を、2016年から2020年までが年25%超、2020~2025年は15%超と予測している。

インフラ以外では、不動産とPEが強い成長を見込めるのではないかとみている。一方、ヘッジファンドは大きな課題を抱えている。金融危機後の強気市場において、ヘッジファンドは「強気」ゆえに高いリターンを求められ、機関投資家が要求するレベルでのリターンを達成しづらい環境が続いていた。この先市場環境が大きく変化するときこそが、ヘッジファンドの能力の見せどころといえるだろう。

清水 日本のマーケットを海外と比較すると、PEやベンチャーキャピタルの市場規模が小さい。しかし、日本企業も今後はイグジットや撤退戦略として部門を切り離すような動きが増えると考えられるため、PEの活動も活発化するのではないか。

オルタナティブ投資に関連する、PwCが提供するサービスとは。

ヤズダニ オルタナティブ投資に携わる顧客に対して、PwCは多様なサービスを提供している。ファンドの組成時には投資家、運用会社に関するリサーチ分析やファンド組成支援サービス、組成後はファンドの監査、バリュエーション、税務、ガバナンス・リスク管理・コンプライアンスなどのアドバイザリー業務、償還時には償還監査や各種事務手続きといったアドバイザリー業務など、ファンドのライフサイクルに沿って、さまざまな側面からのサービスやアドバイスの提供が可能だ。またPEに対しては、投資先企業のバリュエーションに関するデューデリジェンスも行っている。

PwCは世界158カ国に及ぶグローバルネットワークを有しているので、グローバルなディールを世界レベルで支援できる点も強みだ。

オング 機関投資家にとって、オルタナティブ投資に関する各種レポートの作成は困難な課題の1つだ。オルタナティブといっても分類ごとに投資の仕方が異なり、リターンの出方も異なる。統一性や整合性を保って、それらについて投資家向けレポートや当局向けレポートを作成することは容易ではない。そうしたレポーティングにおけるサポートも行っている。

また、近年ではPEにおいてもESG(環境・社会・ガバナンス)を重視する傾向が強まっており、ESGに関するサービスには特に力を入れている。

年金基金などに対して、ESG投資の開示を求める国が増えている。将来的にはおそらく、日本を含むすべての地域で開示が義務づけられるようになるだろう。開示義務のみならず、リスク回避の手段としてもESGは重要だ。

ヤズダニ 今後、機関投資家のポートフォリオはますます分散化が進むだろう。オルタナティブ投資においても、複雑性を伴う新たなアセットクラスが出てくる可能性がある。機関投資家が、これら未知の複雑なアセットクラスに対して、リスクマネジメントやバリュエーション、コンプライアンスなどにおいて適切な判断を下し、リターンを最大化させるために、ぜひPwCの知見を活用していただきたい。