世界各国に拠点を持つ大手資産運用会社のベアリングスは、日本を重要な拠点と位置付け、機関投資家向け資産運用ビジネスのさらなる拡大を目指す。このほど来日した、同社の債券運用とマルチアセット運用を統括するマイケル・フレーノ氏に、日本でのビジネス展開について話を聞いた。(取材日:2018年2月22日)

母体は米国の大手生保、世界の各拠点に手厚い人的サポート

マイケル・フレーノ氏
ベアリングス
マネージング・ディレクター
グローバル債券&マルチアセット投資責任者
マイケル・フレーノ

ベアリングスにとっての日本市場の位置づけとは。

フレーノ 我々の顧客の資産残高トップ3のうち、2社が東京の顧客だ。過去から現在までのどの時点においても、ベアリングスにとって日本は重要な市場となっている。

日本の投資家の多くは安定的なリターンを求めている。ベアリングスでは歴史的に、安定したインカム重視の商品展開を行っており、そうした方針が、日本の機関投資家のニーズに合致しているものと考えている。

ベアリングスの運用の強みとは。

フレーノ ベアリングスは世界16拠点で事業展開を行っている。米国の1カ所の拠点から世界全体を見ているわけではなく、各拠点にスタッフが常駐しており、それぞれローカルな視点に依拠した深い洞察に基づく投資を行っている。

従来、ファンダメンタルズ分析を礎としたボトムアップの投資戦略を我々のグローバルの共通理念としてきた。各地域でその投資理念を実践し機能させるには相応のリソースが必要となる。ベアリングスはマスミューチュアル・フィナンシャル・グループの一員であり、その中核である米国のマスミューチュアル生命保険は相互会社であるため、上場会社のように四半期ごとに収益を追う必要がない。目先の収益だけにとらわれるのではなく、長期的な計画に基づいて着実にビジネスのインフラを築くことができる。新しい投資商品や地域に進出する際に、必要となる先行投資に対して親会社のサポートが得られることは、他社にはない優位性といえる。

現在のベアリングスは、2016年9月にマスミューチュアル傘下の資産運用会社4社が統合してできた。そのうちの1社であるバブソン・キャピタル・マネジメントは、ボトムアップのファンダメンタルズ分析に基づく投資で超過収益を追求してきた。一方、かつてのベアリング・アセット・マネジメントはトップダウンベースの運用戦略に強みを持っていた。この両者が融合したことで、ベアリングスはボトムアップ、トップダウンのいずれの戦略からも超過収益を生み出せる、より総合力を発揮できる運用会社になったと自負している。過度なリターンを追求するのではなく、適度にリスクを調整したうえで安定的なパフォーマンスを目指す、バランスの取れた運用がベアリングスの投資スタイルである。

投資対象としては流動性の高い資産はもとより、プライベートデット、インカムを重視したプライベートエクイティなど、幅広い商品を取り扱っている。

日本の機関投資家のニーズは多様化。アジア全体で人員を増強

現在のグローバル債券市場をどう見ているか。

フレーノ 米国、欧州、日本や中国も景気は低成長ながら安定的に見通している。いずれの国の企業収益状況も堅調に推移しており、金利リスク、信用リスクのどちらを取る場合でも、基本的には良好な運用成果が期待できるのではないか。我々の見解では、2018年の1年間はどの商品からも相応な投資リターンを期待できる状況が続くと考えている。

足元の状況で最も大きなリターンを期待できるのは、2017年に引き続き現地通貨建てのエマージング債券であろう。常に悲観的な見方の対象となりがちなハイイールド債券については、デフォルト率は引き続き限定的と予想している。おそらく1~2%というきわめて低いレンジに収まるのではないか。

日本の機関投資家に向けて、どのような商品やサービスを展開していくのか。

フレーノ 米国の利上げ観測によるヘッジコストの上昇に頭を悩ませている日本の投資家に対して、グローバルな運用体制に基づく投資効果の高いソリューションにより、良好なリスク調整後リターンを提供できるのがベアリングスの強みだ。

当面は投資適格以下のハイイールド債券やバンクローン、あるいはエマージング債券が、底堅い景気に支えられて魅力的なインカム収入を提供するものと考えられる。一方、リターンプロファイルは下がるものの、先進国債券も有効な選択肢になるだろう。後者では、トップダウンのマクロ経済分析に基づき、機動的に資産配分を行う戦略の受託が増えている。

ベアリングスは日本でのビジネスを拡大する計画であり、アジア全体でも人員を増やしている。現在、我々の顧客は北米、欧州とアジア・パシフィックでほぼ3分の1ずつ分散しているが、アジア地域は今後のビジネスの拡大が最も見込める地域である。当然、アジアのなかでも有数の市場である日本にも積極的にリソースを投入していく方針だ。

日本の機関投資家のニーズは多様化しているが、長期にわたって安定したリターンを求めるという姿勢は一環している。これは我々の運用スタイルとも一致する。今後も日本市場に重きを置いた資産運用ビジネスを継続していきたい。