マクロ経済 インフレ加速も持続力は乏しく
2022年4月の全国コア消費者物価上昇率は2%超へ
物価上昇率が加速している。総務省が発表した2022年4月の東京都区部の消費者物価指数は、変動の大きい生鮮食品を除く総合指数(コア消費者物価)が前年同月比で1.9%上昇した。プラスは8カ月連続で、3月の0.8%上昇から急加速した。
格安プランの導入に伴う携帯電話料金の値下げの影響が一巡し、押し下げ寄与度が3月のマイナス1.12ポイントから4月のマイナス0.30ポイントに0.8ポイント縮小したことがコア消費者物価の伸び率を押し上げた。
東京都区部の消費者物価指数は中旬速報値として先行して公表されており、2022年5月20日に発表される同年4月の全国消費者物価指数も大幅に上昇する見通しである。
全国の指数は東京都区部に比べて携帯電話通信料のウエートが高く、押し下げ寄与度縮小の影響がより大きくなるとみられる。
携帯電話通信料の値下げによるコア消費者物価の前年比寄与度は2022年3月のマイナス1.48ポイントからマイナス0.39ポイントへ縮小する見込みで、この効果だけでコア消費者物価指数の前年比は1.1ポイント押し上げられる(図表)。
食料品の値上げなどもあって2022年4月の全国コア消費者物価指数は前年同月比2.2%の上昇に加速すると予想している。
【図表】コア消費者物価(全国)の前年比と寄与度
食料・エネルギーを除くと物価上昇率は小幅
もっとも、コア消費者物価の上昇率を押し上げている主因はエネルギー価格の高騰による。2.2%と予測している2022年4月分の寄与度は、ガソリンや電力などエネルギーが1.4ポイント、生鮮食品を除く食料が0.6ポイントと食料・エネルギーの上昇が大部分を占める。日用品や衣料品などにも値上げの動きがみられるものの、全体への影響は限られている。
米国で重視されている「食料・エネルギーを除く総合指数」でみると、2022年4月は前年同月比でプラス0.2%と小幅な上昇にとどまる見通しである。米国では食料・エネルギーを除く総合指数が6%を超えるなど多くの品目で値上げの動きがみられるが、日本の物価上昇はエネルギーを中心とした限定的な物価上昇にとどまっている。
物価上昇率の高まりは一時的
エネルギー価格は当面も上昇傾向で推移するものの、前年同月比でみた上昇率は徐々に鈍化していくとみられる。ガソリン価格は、政府が石油元売りに配る補助金の効果で3月以降は上昇に歯止めがかかっている。補助金は9月末まで延長されることから、今後もガソリン価格の上昇は抑えられることとなる。
電力料金についても、夏場にかけて上昇の勢いは弱まる。燃料価格の変動分を価格に反映させる「燃料費調整制度」に基づき電力会社は料金を引き上げてきたが、2022年6月分の料金設定時点で電力大手10社中6社が上限に達した。残る4社も同年8月までに上限に達する可能性が高く、電力料金の上昇にも近く歯止めがかかる見通しである。
米国のように賃金の上昇を伴ってインフレ圧力が広がっているわけではないため、エネルギー品目の物価上昇率がピークアウトすれば、コア消費者物価全体の上昇率も2%を下回る伸びへ鈍化すると予想される。