資源
原油価格はレンジ切り上げも供給動向に不透明感を残す
本格回復にはなお課題、期待感低下による調整安も
資源価格は2016年に長期低迷・停滞から脱した。2017年は世界経済の成長加速や中国・米国の景気刺激策を後ろ盾に、持ち直しが期待されるが、一本調子の上昇とはならないだろう。ひとつには、OPEC(石油輸出国機構)の減産合意や政策期待がすでに価格に織り込まれていることがある。むしろ、比較的高い値位置から2017年がスタートすることで、期待感の剥落による調整安を経験することになろう。
また世界経済が回復基調にあるとはいえ、景気刺激策に依存し、ドル高、高金利や商品(原料)高を吸収できる自律的な強さを欠いていることも、商品需要の伸びを抑制するとみられる。政治面でも米トランプ新政権の動向やポピュリズムが台頭する欧州主要国で予定されている選挙などが相場の不透明感を高めている。
OPECの減産順守と米国シェール増産タイミングが鍵
原油についても、OPECとOPEC非加盟国の協調減産を背景に基本的には緩やかな上昇を予想する。過去に全加盟国が減産した実績はないが、2018年にサウジアラムコのIPO(新規株式公開)を控えたサウジアラビアにとって、2017年中の石油需給の均衡化は大命題であり、他産油国を巻き込み減産を順守する可能性は高い。
中東の湾岸諸国とロシアが減産を行えば、減産量は日量100万バレルと減産目標の6割に達し、原油市場の需給均衡化に寄与するため、原油価格は50~60ドルで推移するとみられる。なお、減産が市場の期待通り進まなければ40ドル台まで反落するとみられるが、供給過剰幅は1年前から縮小しており大幅な下落リスクは後退している。
不透明な要素は、米国シェールオイルの増産タイミングとOPECの減産合意の適用除外となったリビアおよびナイジェリアの増産有無だ。2016年末の米WTI先物市場では、売りポジションが過去最高まで積み上がっており、シェール生産者が価格回復を受けて売りヘッジを増やしていることがうかがえる。また、米国の石油掘削リグ数が2016年5月に316基で底打ちし、年末には525基まで回復していることも、市場がシェールオイルの増産を懸念する一因となっている。
ただ、いったん掘削のペースを落としたシェール企業が再度増産に転じるには資金や機材を調達し、解雇した労働者を呼び戻す必要があるため、機動的な増産はできないと考える。また、2年に及ぶ油価低迷で財務状況が悪化したシェール企業は、積極的な設備投資よりもフリーキャッシュフローの黒字化を優先する姿勢をみせている。このため、少なくとも下期まではシェールオイルの目立った増産はみられないと考えるが、想定より増産が早まる場合には相場の下押し圧力になる。
需要面では引き続き中国・インドに代表されるアジア新興国が牽引し、2016年度並みの需要の伸びが期待される。中国では、国内原油生産の減退が進み、国営石油会社の製油所の新規稼働で原油輸入の増加基調が維持される見込みだ。インドは、2016年11月に実施された高額紙幣の廃止による経済活動の混乱から、第1四半期は石油消費が鈍化する懸念はあるが、ガソリン・ジェット燃料需要に支えられるだろう。
また、BRICsの一角をなすブラジル、ロシアはともに2年連続の景気後退で需要不振に苦しんだが、IMF予測では2017年はプラス成長が見込まれている。石油化学や航空事業が拡大する中東の需要も底堅く推移するとみられる。