マクロ経済 米中による新冷戦構造の本格化でディスインフレ終焉へ
G7が対中国で協調して厳しい姿勢を示す
米中関係が先鋭化する中で、新冷戦構造が本格的に形成されつつある。
バイデン大統領は2021年4月29日に連邦議会の上下両院合同会議での施政方針演説で、同盟国とともに、「民主主義vs専制主義」という大義名分の中で、中国とあらゆる面で対峙していく方針を明確に示した。これを受けて、5月5日にロンドンで開催されたG7(主要7カ国)外相会議においても、米国の方針に沿った形で、香港・台湾・新疆ウイグル問題を例示しながら、対中国で協調して厳しい姿勢を示す共同声明を出している。
自国第一主義かつモンロー主義的な様相を呈していたトランプ政権と違い、バイデン政権は、同盟重視を強く掲げており、このことが新冷戦構造を決定的なものにする流れを作っている。
もともと、第二次世界大戦後の東西冷戦構造は米国を中心とするNATO(北大西洋条約機構)とソ連を中心とするワルシャワ条約機構との軍事的対峙を軸に「資本主義・民主主義」vs「共産主義・全体主義」のイデオロギー対決という形で進んできた。その結果、東西のブロック経済圏が形成され、COCOM(対共産圏輸出統制委員会)によるソ連への幅広い技術関連物資の輸出禁止に象徴されるように、世界経済を大きく分断することになったわけである。
その後、1950年代の朝鮮戦争、1960年代のキューバ危機、1970年代のソ連のアフガニスタン侵攻など、東西の緊張を極度に高める事象を経た後、1989年のベルリンの壁崩壊によって東西冷戦は終結し、1991年にソ連は崩壊した。東西冷戦の残渣(ざんさ)の地とも言えるアフガニスタンから米国が撤退したたことは、今後、インド太平洋を主な舞台とする新冷戦本格化のシンボリックな出来事として、捉えることができる。
事実、ここ数カ月の間に、米国だけではなく、英国、フランス、ドイツの軍艦や潜水艦が南シナ海を航行し、同地域の覇権を強めている中国を強く牽制している。1979年のアフガニスタン侵攻の時に、西側の欧米諸国がソ連を厳しく指弾した時と似た状況になっているわけだが、その翌年の1980年に西側諸国からボイコットされたモスクワ五輪を想起すると、2022年に開催される予定の北京冬季五輪はまさに歴史の皮肉としか言いようがない。