マクロ経済 感染再拡大で景気下振れリスクが高まるも株価は底堅さを維持
新規感染者数の急増を受けて政府は2回目の緊急事態宣言を発令
新型コロナウイルスの感染再拡大に歯止めがかからない。新規感染者数は2020年11月頃から増勢が加速し、2021年1月7日には全国で7,537人に達した。2020年春に比べて検査体制が整備されたことも感染者急増の一因だが、重症者数は第1波に見舞われた昨年春の2倍を超えている。
感染第3波の拡大を受けて、政府は2020年12月28日から「Go To トラベル」を全国で一時停止することを決めたほか、同日から一部のビジネス往来を除いて外国人の新規入国を停止した。さらに、2021年1月7日には1都3県に「緊急事態宣言」を発令した。宣言期間は翌8日から2月7日までで、飲食店には営業時間の短縮(夜8時まで)、住民には夜間外出の自粛を要請した。企業にはテレワークへの協力を促し、人の流れを減らす。また、1月11日を期限としていた「Go To トラベル」の停止措置も宣言期間中は継続する。
サービス消費を中心に経済活動は大きく落ち込む見通し
飲食店の営業時間が夜8時までに制限されると、夜間需要を柱とする居酒屋やパブは需要の大半を失うことになる。一方、大型商業施設や遊園地など娯楽施設への休業要請は見送った。大規模イベントも人数制限を条件に開催を認めるなど、1回目の緊急事態宣言が発令された2020年4月に比べると活動が制限される範囲は狭まる。ただ、緊急事態宣言の発令による危機意識の高まりから外出を自粛する動きが強まる可能性は高く、企業の出張見合わせなどで鉄道や航空機の利用も再び落ち込むとみられる。
今回の感染再拡大を受けて、サービス関連を中心に経済活動は大きく落ち込むと予想される。非製造業の活動を示す第3次産業活動指数は、前回の緊急事態宣言解除後の2020年6月から上向き、直近のデータが公表されている10月まで5カ月連続で回復していたが、11月以降は再び減少に転じる公算が大きい。特に影響が大きいのが外食や旅行、娯楽業など個人向けサービスである。昨春の落ち込みからの回復が途上だったところに再び下押し圧力がかかることになる。飲食店や商業施設を中心に感染防止策が講じられてきたこともあって、2020年4~5月のような状況が再来するわけではないが、コロナ禍からの景気回復にはブレーキがかかろう。
【図表】業種別生産指数と第3次産業活動指数
景気の悪化は避けられないが、株価の下値は限定的
感染再拡大による景気の悪化が見込まれる一方で、株価は底堅く推移している。前回の緊急事態宣言時と比べると景気の落ち込みが小幅にとどまるとみられることに加え、ワクチン効果による景気回復期待も根強いためだ。今後、緊急事態宣言の対象地域拡大や宣言期間の長期などで景気が一段と悪化するリスクは排除できないが、その場合でも下値は限定的と予想される。
新型コロナの感染拡大の影響を受ける業種がサービス業に偏っているということも株価が底堅く推移すると考える理由である。サービス業はGDP(国内総生産)の4割弱を占めるため、サービス消費の減少は日本経済の悪化に直結するが、東証1部の時価総額に占めるサービス業の比率は10%程度に過ぎない。株式市場の主役は時価総額の55%を占める製造業であり、堅調な輸出を背景とする製造業の業績回復が株式市場の下支えとなろう。コロナ禍でIT(情報技術)化の流れが加速していることも株高要因となる。実際に昨年の株価上昇に最も寄与した業種は電気機器だ。米欧を中心に新型コロナの感染拡大が続いていることはリスク要因だが、製造業の回復シナリオに変化がない限り、株価が大きく崩れるリスクは低いと考えられる。