ハト派のイエレン氏を財務長官に。ドルは適正水準からみて割高

上席研究員
橋本 将司(はしもと・まさし)
慶應義塾大学卒業後、三菱UFJ銀行に入行。国際通貨研究所研究員、グローバルマーケットリサーチ・シニアアナリスト、経済調査室ニューヨーク駐在などを歴任し、グローバルな為替市場やマクロ経済に加え、米国金融規制など幅広い分野の調査業務に従事。2020年より再び国際通貨研究所へ出向し、為替市場や主要国の金融政策・マクロ経済動向の分析を担当。理論的な観点からの為替市場分析を得意とする。国際通貨研究所ホームページ( https://www.iima.or.jp)にも各種レポートを掲載
波乱含みの米大統領選は、紆余曲折はあったものの、結局大方の予想通りバイデン前副大統領が勝利し、4年ぶりの民主党政権となるバイデン新政権が誕生する。同政権の主要閣僚も指名が進んでおり、財務長官としてはジャネット・イエレン前FRB(米連邦準備制度理事会)議長が指名された。
イエレン氏は、FRB議長在任中は主にリーマン・ショック後の金融緩和政策の正常化を行ってきたが、元来はハト派のスタンスであった。バイデン次期大統領も政策構想の中で、米国の技術優位を維持するための製造業強化や、米国内の分断を緩和するための中間層・労働者層の所得の底上げを推進するとしており、自国産業保護的な政策バイアスが強まれば、ドル安政策に通じていくとみることもできる。こうした観点から新政権はドル安志向が連想されやすい。
確かに現状一定のドル安が米国にとって望ましいのは事実だろう。まず、2%のインフレ目標を速やかに達成するためには、FRBの金融緩和を素直に反映したドル安による輸入物価を通したインフレ圧力などはその一助とる。そしてより直接的には、趨勢的にみてドルの水準が割高な位置にあるとみられるためだ。
この記事は会員限定です。
会員登録後、ログインすると続きをご覧いただけます。新規会員登録は画面下の登録フォームに必要事項をご記入のうえ、登録してください。