企業のディスクロージャー(情報開示)やIR(投資家向け広報)活動をシステムおよび関連サービスでサポートするプロネクサス。上場企業の約6割と定期的な取引があり、95-96%の高いリピート率を誇る同社の強みや今後の事業戦略などについて代表取締役社長の上野剛史氏に聞いた。(工藤晋也)

株券印刷を皮切りにディスクロージャー、IRに進出

企業のディスクロージャーやIR支援を中核ビジネスとする御社から見て、最近の日本企業にどのような変化が表れていますか?

上野 個々の企業によって温度差はありますが、全体ではディスクロージャーやIRへの取り組みが強化されています。とくに外国人投資家や個人投資家の存在感が高まっており、決算関連書類などの英文化や写真・グラフを活用した分かりやすい株主総会資料を制作する動きが目立ってきたと感じています。

そもそも御社は株券印刷を専門とする企業として産声を上げました。

上野 1930年の創業から1960年代まで当社の成長を支えたのが株券印刷でした(図表1)。1970-80年代には株主総会招集通知などの商法(現在の会社法)関連書類の分野に進出。その後、有価証券報告書などの証券取引法(現在の金融商品取引法)関連書類、国内の投資信託やJ-REITの目論見書、運用報告書の制作、IR分野へと事業領域を広げていきました。

2000年代に入ると、2001年のEDINET(電子開示システム)をはじめ、ディスクロージャーやIRの世界でも電子化が加速。当社では2003年に他社に先駆けて編集作業の効率化や強固なセキュリティ環境などを実現した開示書類作成支援システム「エディッツ・サービス」の提供を開始しました(図表2)。

2008年にEDINETが財務諸表のXBRL(財務報告用コンピューター言語)データでの提出を義務付けた際も、いち早くXBRLにも対応した開示書類作成システム「プロネクサス・ワークス」をリリースしました。

上場企業の約6割と取引があり、リピート率は95-96%もあります。

上野 その原動力が「システム開発力」「コンサルティング力」「高い情報セキュリティ環境」です。「システム開発力」では「エディッツ・サービス」をはじめ、これまで顧客ニーズに合ったシステムやサービスをゼロからつくり上げており、マーケットシェアを上積みするけん引役になっています。

ディスクロージャーやIRを取り巻く環境は法律改正を含め、目まぐるしく変化しています。当社ではディスクロージャー研究部というコンサルティング部門を立ち上げ、ディスクロージャーに関する法律や制度の最新情報やドキュメント作成時のポイントなどをセミナーやガイドブックを通じて伝えるとともに、お客様の原稿をチェックするサポート体制を整えています。これが「コンサルティング力」です。

3つ目の「高い情報セキュリティ環境」は、創業時に極めて現金に近い株券印刷を手がけてきたことが源泉になっており、情報の正確性やセキュリティの堅牢性、あるいは強固なコンプライアンス体制の確立につながっています。

2013年は5期ぶりに増収に転じましたが、その要因は何でしょうか?

上野 日本の株式市場が回復したことが要因の1つです。アベノミクス効果を背景とした株高で企業のディスクロージャーやIR活動が活発化したことが業績好転に寄与しました。

さらに2014年1月に始動したNISA(少額投資非課税制度)の効果も加わり、投資信託の新規設定が相次ぎ、開示書類などの受注が増加していることもプラスに働きました。外国人投資家や個人投資家向けのディスクロージャーやIR関連のドキュメントやWEBサイトの作成ニーズが強まっていることも追い風になっています。