欧州不動産市場が新たなサイクルの入り口に立つ今、注目すべき運用会社がある。約30年にわたり高い実現リターンを積み上げながら、損失を投資額のわずか2%に抑えてきたBauMont Real Estate Capitalだ。2024年にM&Gグループ入りした同社の欧州不動産を投資対象とするバリューアッド戦略の魅力について、M&G Investments Japanの森岡祐弥氏に聞いた。

割安な取得機会が広がる欧州

森岡 祐弥氏
M&G Investments Japan
営業部
森岡 祐弥

日本の機関投資家の間で、不動産投資を見直す機運が高まっている。長らく投資家の資金を集めてきたコア不動産に加え、より高い収益性を求めてバリューアッド戦略を探す動きが着実に増えてきた印象だ。

そこで、いま目を向けたいのが欧州だ。2022年以降の金利上昇で2割前後の価格調整を経た欧州不動産市場は、2024年半ばに底を打ち、緩やかな回復軌道に乗りつつある。調整局面では、償還請求に直面したオープンエンド型ファンドや資金繰りに窮したデベロッパーなど、売却を急ぐ売り手が数多く生まれ、優良な物件を割安に取得できる機会が広がっている。オフィスの低迷が長引く米国とは対照的に回復が鮮明になりつつある今、上昇サイクルの入り口から参画でき、米国に偏りがちな不動産ポートフォリオの分散にもつながる。

安定稼働する物件を保有し、賃料収入を中心にリターンを積み上げるコア戦略に対し、バリューアッド戦略は空室の解消や改修、用途転換などで物件に積極的に手を加え、価値を高めたうえで売却益を狙う。その分、運用者の目利きと実行力がリターンを大きく左右する。欧州不動産市場が構造的なリセットを迎える中、M&G傘下で欧州バリューアッド投資に特化するBauMont Real Estate Capital(以降、ボーモント)は、単一の市場環境や収益ドライバーに依存することなく、分散されたリターン源泉から魅力的なリターンの獲得を目指すアプローチを取る。

「損失わずか2%」を支える規律

ボーモントの源流は、米穀物メジャーのカーギル傘下で運用を担ったカーバル(現ABカーバル)の欧州不動産投資部門にあり、チームは約30年にわたり欧州で不動産のバリューアッド投資を続けてきた。同社の実現済み案件のグロスIRR(内部収益率)の分布を見ると、最頻値は20~25%のレンジにある。一部の大当たり案件に依存せず、この水準に集中してリターンを積み上げてきた証左だ。

特筆すべきは、損失に終わった案件が投資額全体のわずか2%にとどまる点である。LTV(借入比率)を5~6割程度に抑え、投資前に複数のダウンサイドシナリオを精査したうえで、耐性のある案件だけを厳選する規律が背景にある。オフィス、リビング(住居系)、リテール、物流の主要4セクター全てで20%超の実現グロスIRRを上げてきた実績は、欧州でも希少といえる。

実は、欧州最大級のコア不動産投資家であるM&G自身が、この実績に着目した当事者だ。M&G傘下の保険会社の不動産ポートフォリオは足元でコア戦略が約95%を占めているが、これを見直し、長期的にバリューアッドの比率を大幅に引き上げていくという。その中核を担う運用者として、高い確信度を持って2024年にグループへ迎えたのがボーモントである。

■約100件の投資が築いたトラックレコード(うち85件を実現済み)
約100件の投資が築いたトラックレコード(うち85件を実現済み)
出所:M&G Real EstateおよびBauMont Real Estate Capital。1. 2026年3月31日現在のBauMontの全実現済みバリューアッド投資のグロスリターン(ポートフォリオレベルの費用、成功報酬および運用報酬控除前)の合算。2017年以前はBauMontの前身のカーギル及びカーバル(現ABカーバル)による投資を含む。過去の運用実績等は将来の運用成果等を保証するものではありません。

収益源泉の異なる2つの手法

ボーモントの戦略の要諦は、欧州不動産市場に吹くマクロの追い風を、収益ドライバーとリスクの性質が異なる2つの投資手法で捉えることにある。第一が「オポチュニスティック・コアプラス」だ。一定程度稼働しているにもかかわらず、売り手側の事情で割安に売り出される物件を取得し、リースアップや賃料交渉、設備投資などで価値を高めて売却する。第二が「インテンシブ・バリューアッド」で、低稼働物件を取得し、再生や用途転換といった抜本的な改変を加える手法だ。開発計画の立案から許認可の取得、工事、売却まで長いプロセスを完遂する執行力が問われるため参入障壁が高く、その分高いリターンを狙える。

前者は価格の歪みとインカムの底堅さが、後者は物件の陳腐化の進行が収益機会となる。同じ不動産投資でありながらリターンの源泉が全く異なる2つの手法を組み合わせることで、単一の市場前提に依存せず、魅力的なリターンと安定性の両立を図れるのだ。

なお、同社が足元で特に注目するのが、構造的な供給不足が続くリビングセクターである。欧州では都市化などを背景に実需層からの住宅需要は想定以上に堅調に推移している。そのため、賃貸住宅として評価される投資用不動産価格との間に大きな価格差が生じる場合がある。そこで、割安な賃貸住宅のポートフォリオを一括取得したうえで、各住戸を個別に売却し、区分所有化をすることで、価格差のアービトラージ機会をつかみ、リスクを抑えながら高いIRRを達成している。これはボーモントの「オポチュニスティック・コアプラス」手法の典型例だ。

次に需給の歪みを両面から収益化する「インテンシブ・バリューアッド」の事例も見てみよう。欧州のオフィス市場では都心の優良物件が高いパフォーマンスを出している一方で、周縁部の老朽化したオフィスは空室率上昇と価値下落が続き回復の目途が立っていない。他方、住宅・学生寮・ホテルといったリビングセクターは、構造的な需要の強さと供給不足を背景に堅調な市場環境が継続している。このような需給の歪みを背景に、老朽化したオフィスを質の高い住宅に用途変更することで、供給不足が続く都市部住宅市場への投資機会と高い投資収益の追求を両立することができる。

■収益源泉・リスク特性の異なる2つの手法の組み合わせで、単一の市場前提への依存を回避

M&Gが支える専門性

ボーモントは少数精鋭チームであり、グローバル大手のプラットフォームと比べれば小規模で、日本での知名度も高いとは言えない。しかし、欧州バリューアッド戦略には、優れたアンダーライティング能力に加え、高いソーシング力と経験豊かなオペレーティングパートナーとのネットワークを持つ欧州特化型のマネージャーに一日の長があると言えるだろう。

その専門性を、M&Gのプロパティーリサーチや法務・税務などグループのリソースが支える体制も整った。欧州不動産への資産配分を検討する際には、一般的なバリューアッド戦略を上回るリターン水準と、下方リスクを抑えた安定性を両立するボーモントの戦略に、ぜひ目を向けていただきたい。

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