ベネフィット・ストリート・パートナーズ 2026 BSPクライアントセミナー BSPが展開する多彩なクレジット戦略― 米欧プライベート・クレジット、スペシャル・シチュエーション、CLO―
フランクリン・テンプルトン傘下のベネフィット・ストリート・パートナーズ(BSP)は6月11日、パレスホテル東京で「2026BSPクライアントセミナー」を開催。BSPとアペラ・アセットマネジメント(Apera)の責任者が、米国および欧州プライベート・クレジット、米国スペシャル・シチュエーション、グローバル・ストラクチャード・クレジットの4戦略を解説。AIや金利の不確実性が高まるなか、元本保全を重視する規律と、市場変化を投資機会に変える考え方を紹介した。

【講演】元本保全を重視したBSPの米国プライベート・クレジット戦略

ベネフィット・ストリート・パートナーズ
米国ダイレクトレンディング 投資委員会メンバー
元本保全を重視する運用を追求
BSPは、約930億米ドルを運用する世界最大級のオルタナティブ・クレジット運用会社である。2008年の創業以来、米国ダイレクトレンディング戦略を中核に据え、リーマン・ショック、新型コロナウイルス禍、2022年以降の急速な利上げなど、複数の市場サイクルを経ながら、累計約440億米ドルを米国ダイレクトレンディングに投資してきた。
当社の運用の特徴は、元本保全を重視したポートフォリオ構築にある。1つの銘柄がファンド全体に占める投資比率は平均1~2%程度にとどめ、フルランプ(投資完了)時のポートフォリオは、200社超の借り手へ分散されている(2026年3月末時点)。融資実行時のL TV(企業価値に対する負債の比率)は平均46.1%と保守的で、企業価値が約54%下落して初めて債務額と同水準になるため、相応のエクイティ・クッションが確保されている(2025年末時点)。加えて、案件の約半分は既存投資先との長年の関係から発掘されたもので、借り手を深く知る立場が投資判断の精度につながっている。結果、BSP創業来の実現損失は累計1.01%、年率換算で7ベーシスポイントにとどまる。
短期的な市場の一服はむしろ好機に
最近、プライベート・クレジット市場では、投資家の不安を誘う出来事が相次いでいる。ABF(資産担保金融)分野での不正事案、AIの進化によるソフトウェア企業の業績変化、投資ビークルの一種であるBDC(ビジネス・デベロップメント・カンパニー)の解約制限報道、そして銀行のプライベート・クレジット向け与信の厳格化などである。
当社では、その多くは市場全体の問題ではなく、あくまでも個別的な要因にすぎないと分析する。不正事案については、投資スキームが複雑で不透明なABFにほぼ限られ、伝統的なダイレクトレンディングではほとんど起きていない。また、BDCの解約請求が集中した際に払い戻しを比例配分する「プロレーション」という仕組みは、資金を全面的に凍結する「ゲート」とは性質が異なる点を理解する必要がある。
ただし、AIの影響は本質的な変化と捉えている。プライベート・クレジット業界全体ではソフトウェア企業向け融資がポートフォリオの20~25%を占めるが、当社は同比率を10%程度に抑えてきた。さらに、AIによる事業の代替可能性や競争環境の変化を点数化する独自のリスク評価フレームワークを導入し、実際に多くの案件を見送ってきた。
今後、AIが市場にもたらすインパクトによって、運用者間のパフォーマンスは二極化するだろう。短期的には個人マネーの流出で市場の成長が一服する可能性もあるが、それはむしろ融資条件の改善、すなわちスプレッドの拡大にもつながる。分散の徹底、保守的なLTV、既存投資先との関係を通じた案件発掘―こうした規律を積み重ねてきた我々にとって、現在のプライベート・クレジットを取り巻く環境はむしろ好機であると考えている。
【講演】欧州LMM戦略で、シニア担保付きローンの実現損失ゼロ、平均10.5%のリターン

Apera
創設パートナー
保守的ながら10%超のリターン水準
Aperaは2016年の設立以来、欧州の中堅企業のなかでも規模の小さい層、すなわち1件あたりの負債規模が1,500万~1億ユーロ程度のLMM(ロワー・ミドルマーケット)にフォーカスし、ダイレクトレンディングを中心とするクレジットへの投資機会を提供してきた。ロンドン、パリ、ミュンヘンなど4拠点に34名の投資プロフェッショナルを擁し、運用資産は61億ユーロ、投資件数は118件に達する(2026年6月末時点)。2025年にフランクリン・テンプルトンの傘下に入り、現在は同社のグローバルなオルタナティブ・クレジット・プラットフォームの一員として事業を展開している。当社ポートフォリオ全体の現在利回りは平均10.5%を誇る。この優れたリターン水準を、レバレッジ3.6倍、LTV36%という保守的な運用で実現できている点が、当社の何よりのアピールポイントだ(2026年3月末時点)。シニア担保付きローンの実現損失も設立来ゼロを維持している(2026年6月末時点)。
では、なぜ欧州LMMなのか。LMMは、年間700件超と欧州で最も案件数の多いセグメントだが、そこに向かうファンド資金は大型案件を扱うアッパー・ミドルマーケットの約4分の1程度しかなく、大きな需給ギャップがある。加えて、近年は銀行もLMMへの融資を細らせており、貸し手に対し多くの融資案件が下りてくる。
ゆえに金利マージンは大型案件より厚く、財務コベナンツ(借り手に一定の財務基準の維持を義務付ける契約条項)も1案件あたり2~4本確保できる。実際、企業価値が2割下落する局面を想定しても、当社の完了案件では下落後の企業価値は負債残高の1.43倍に相当し、なお負債全額をカバーできる計算となる。これに対し、欧州シンジケートLBO(レバレッジド・バイアウト)市場では同比率が0.91倍にとどまるため(2025年末時点)、元本保全の面で当社案件に構造的な優位性がある。3年保有を前提とした想定グロスリターンは、ユニトランシェ(シニアとメザニンを一本化した貸し付け形態)で9~12%、シニアローンで8~9%を目標としている。
3,500件超の案件から5%を厳選
もっとも、有利な市場でも案件の選別を見誤れば元も子もない。当社がこれまで目を通してきた案件は3,561件に上るが、審査を経て実際の投資へ至るのは5%に満たない。投資先企業の売上は2017年以降累計で74.8%伸びており、同期間の投資先所在国GDP(国内総生産)の成長率6.8%に大きな差をつけている(2026年3月末時点)。
足元の欧州経済は方向感を欠く。物価上昇率は中東情勢の緊迫化を機に再び上向き、レバレッジド・ローンのデフォルト率も上昇に転じた。また、貿易摩擦やAIによる事業環境の変化といった構造的な変化が、投資先の事業基盤をどこまで揺るがすかも不透明である。
そのため当社のポートフォリオは、いずれのリスクからも距離を取るようにしている。投資先の79%は米国での売上を持たず、関税政策の影響を受ける経路そのものが限られる(2025年9月末時点)。AIリスクについても投資中の全案件を対象に審査し、リスクが高まったと判定したのは5社のみ、投資全体の6%にとどまった(2026年3月末時点)。これも元本保全を第一に考えた選別の結果である。
2025年には、シニアローンのみで構成する欧州LMM戦略を立ち上げた。目標規模は30億ユーロ、LTVは25~35%と保守的に設定し、100件超への分散を図る。このような安定性を最優先とするAperaの戦略の価値は、不確実性が長引く局面でこそ、際立つと考えている。
【講演】不確実性を投資機会に変える米国スペシャル・シチュエーション戦略

ベネフィット・ストリート・パートナーズ
米国スペシャル・シチュエーション ポートフォリオマネージャー
クレジットで株式並みのリターンを目指す
これまでご説明したのは、いずれも健全な企業に対する平時のクレジット投資である。他方、私からお話しする米国スペシャル・シチュエーションは、市場の歪みや個別企業の資本構成上の課題そのものを投資機会として捉える戦略だ。
BSPの米国スペシャル・シチュエーション戦略は約10年の運用実績を持ち、CLO(330億米ドル)、ダイレクトレンディング(260億米ドル)、不動産(152億米ドル)といった各プラットフォームのリサーチアナリスト35名、シニア・オリジネーター20名の知見を活用する(2026年3月末時点)。こうした部門横断の情報連携により、個々のプラットフォームだけでは把握しにくい投資機会を発掘できることが、同戦略の強みである。
投資対象は3つに分かれる。第1がキャピタル・ソリューション。財務的な困難に直面した企業に対し、低いLTVで組成するクレジットであり、DIPファイナンス(法的整理下の企業への融資)や救済融資が含まれる。第2がディスロケーテッド・クレジット、すなわち市場の混乱で本源的価値を下回った債権への投資。第3がロイヤリティ(権利使用)収入や清算債権といった資産である。配分はそれぞれ35~50%、40~55%、5~15%を目標とし、投資件数は15~25件に絞り込む。
適切な管理の下でリスクを取り、株式に引けをとらないリターン水準を追求しながら、担保や返済順位の構成で下値を固めるというのが本戦略の設計思想だ。本戦略の代表口座はネットで15%以上(米ドル建て)のリターンを目指す。ポートフォリオの約6割を担保付きとし、安定感を維持しながらも、HFRディストレスト・ヘッジファンド指数の7.4%、S&Pレバレッジド・ローン指数の平均リターン6.5%を大きく上回るリターンを目指すのがポイントだ(2026年5月末時点)。案件選別も厳格で、例えばキャピタル・ソリューションで検討される年間約110案件のうち、実際に投資に至るのは8%程度にすぎない。
不透明な環境が投資機会を広げる
足元の市場環境は、この戦略に追い風となっている。マクロ環境は不透明感を増し、原油高とインフレ再燃、また、米国30年債利回りはここ数年でも高い水準にある。クレジットの質は二極化が進み、CCC格とBB格のスプレッド差は急速に拡大した。ディストレス水準で取引されるローン残高は数年来の高い水準に積み上がっている。
とりわけ注目すべきはAIとダイレクトレンディングの動向だ。AIの浸透はソフトウェア業界を直撃し、同セクターのローン価格は他セクターから明確に乖離した。ソフトウェアはローン指数の21%を占めるまで膨らみ、しかも信用格付けは低位に偏る。
また、ダイレクトレンディング市場全体で、利息を元本に上乗せして満期に返済するPIK(繰延利息)方式へ切り替える、いわゆる「バッドPIK案件」が10%台に達し、潜在的なデフォルト率も上昇している。同市場全体で融資の約半分が2029年までに満期を迎えると言われるなか、借り換えに窮する企業は確実に増えるだろう。
こうした市場環境では、資金調達や借り換えに窮する企業が増える一方、信用力への懸念から大きく価格が下落する債権も増加する。これは、企業への柔軟な資本供給と、割安となった債権への投資という2つの機会をもたらす。厳格な審査規律と柔軟な資本を併せ持つ運用者にとって、これほど恵まれた局面はない。当社は2026年第3四半期のファーストクローズを目指し、次期ヴィンテージの組成を進めている。
【講演】欧州BB・B格に着目したCLO投資で高いスプレッドを実現

ベネフィット・ストリート・パートナーズ
グローバル・ストラクチャード・クレジット ポートフォリオマネージャー
地域、トランシェ、タイミングを見極める
BSPのストラクチャード・クレジット部門は2009年の第1号戦略以来、16年にわたりCLO(ローン担保証券)投資に特化してきた。米英に9名の専任チームを置き、約45名のクレジット・アナリストと連携しながら、91億米ドルを運用している(2026年6月末時点)。投資判断は、3つの問いに集約される。どこで買うか、どのトランシェ(階層)を買うか、いつ買うか。
まず「どこ」で買うか。CLOの裏付けとなるレバレッジド・ローン市場は、米国と欧州で質が明確に異なる。デフォルト率は過去10年で見ると欧州が米国より低位で推移してきた。より重要な回収率は、欧州65%に対し米国は45%と、その差は20ポイントに及ぶ(2025年末時点、過去12カ月ベース、S&P Global)。米国では貸し手間の競争や債務の再編が回収率を押し下げており、この構図は当面変わらないと見ている。ただ、欧州のデフォルト率も今後上昇に向かうと予想され、この優位性が続くとは考えていない。地域配分は固定せず、両市場を常に相対比較の対象として捉えることで、両市場の相対的な優位性が変化した際に機動的に配分を動かせる体制を維持している。
次に「どの」トランシェを選ぶかである。当社は、劣後部分による元本保全とスプレッドのバランスに投資妙味があるとして、BB・B格のジュニア・メザニンに注目している。例えば欧州CLOでは、BB格の下にB格とエクイティを合わせて約10%の劣後部分がある。この部分が原資産の損失を先に吸収するため、BB格の元本が直ちに毀損するわけではない。
仮にデフォルトしたローンから50%を回収できるとすれば、原資産のデフォルト率が20%を超えて初めて、BB格のトランシェの元本が毀損する。計算すると、このB格とエクイティを合わせた約10%の劣後部分が損失を吸収し切るまで、BB格の元本に損失は及ばない。さらに、原資産の額面残高が一定の基準を割り込んだ場合には、エクイティなど下位トランシェへの支払いを停止し、その資金を上位トランシェの元本返済に振り向ける「OCテスト」が作動する。こうした仕組みも、上位トランシェの毀損を抑える役割を持っている。
そして「いつ」。足元でCLOのスプレッドは拡大傾向にあるが、背景にはAIを巡る楽観の修正や中東情勢の再燃がある。だが、裏付けローンのファンダメンタルズが崩れたわけではない。実体は変わらず価格だけが動くという乖離が生じるいま、投資実行のチャンスが訪れていると考えている。
市場の歪みを捉え、局面ごとに勝ち筋を目指すCLO戦略
CLO市場は米欧合わせて1.4兆米ドルを超え、欧州はこの10年で4倍に拡大した。1995年に同資産クラスが登場して以来、金融危機を含む複数のサイクルを経てきた市場である。それでも価格変動は繰り返し生じており、その都度、実体と価格の乖離を捉える余地が生まれる。
当社CLO戦略がそうした変化に柔軟に対応してきた実績は、トラックレコードに刻まれている。例えば、第4号戦略では、コロナ禍とウクライナ侵攻後*といった、情勢が不安定な時期においては、状況を見極めつつ慎重にリスクを取った結果、相対的に高いネットIRRを実現した。逆に2025年前半、バリュエーションが過度に締まった局面ではエクイティ部分を積極的に売却し、8月までに保有エクイティの95%を現金化している。
局面に応じてエクイティからBB格まで、資本構造のどこでリスクを取るかを機動的に変えられるかどうかが、この資産クラスでは決定的な違いを生む。
* コロナ禍:2020年3月1日~2021年6月30日、ウクライナ侵攻後:2022年4月1日~2024年2月29日
●当資料は、フランクリン・テンプルトン・ジャパン株式会社(以下「当社」)が当社および当社のグループ会社(フランクリン・テンプルトン・インクとその傘下の関連会社を含みます。)の説明資料として作成したものであり、特定の金融商品等の推奨や勧誘を目的とするものではありません。●当資料は、当社が信頼性が高いと判断した各種データ等に基づいて作成したものですが、その完全性、正確性を保証するものではありません。●当資料のデータ、運用実績等は過去のものであり、将来の運用成果を示唆・保証するものではありません。また、当資料に記載される内容・見解は作成時点のものであり、予告なく変更されることがあります。【手数料等】●投資一任契約に係る投資顧問料は、対象となる期間の運用資産の平均時価残高に、上限年率2.2%(税抜2.0%)の料率を乗じて算出した金額とします(一般的な場合)。契約によっては別途、成功報酬をいただく場合があります。成功報酬は運用状況等によって変動するものであり、あらかじめこれを見積もることが困難であるため、その上限額または計算方法を表示することはできません。また、投資信託等を組入れる場合、別途、当該投資信託に係る運用報酬等・その他諸費用がかかる場合があります。その他の費用として有価証券等の売買委託手数料等がかかります。売買手数料がない取引であっても取引価格に実質的に売買手数料相当額が加算されている場合があります。各種報酬・費用等は契約内容ごとに異なりますので、事前に詳細を示すことができません。【投資リスク】●投資リスクには、金融商品・デリバティブ取引等の価格変動、金利変動、為替変動、発行体の信用リスク、運用に関する取引相手方の決済不履行等、流動性リスク、経済・政治情勢等の影響等があり、投資元本は保証されているものではなく、投資元本を割り込み、損失を被る場合があります。また、デリバティブ取引に関する損失が委託証拠金等を上回る可能性があります。オルタナティブ投資においては、非公開企業、投資非適格または無格付けの企業へ投資するため、利用可能な情報の不足や流動性の欠如、価格評価が困難とされる場合があり、流動性リスク、デフォルト・リスクが高くなります。CLOへの投資においては、証券化商品特有の構造リスク等が生じる可能性があります。不動産投資には不動産所有に特有の様々なリスクが含まれます。また、その他各種報酬・費用等、利益相反の可能性など、プライベート市場特有のリスク・費用等が伴います。リスクは上記に限定されるものではありません。●ご投資にあたっては契約締結前交付書面等の内容を十分にご確認ください。●当資料は当社の許可なく複製・転用することはできません。

