フランス国債の投資妙味
フランス国債は日本の投資家に人気のある投資対象である。フランスの格付けはイタリアやスペイン対比でずっと高くデフォルトするとは思えないのに、比較的常にスプレッドが乗っていて、投資妙味があると思えるからである。
グローバルマーケット統括本部 副会長
チーフクレジットストラテジスト
チーフESGストラテジスト
中空 麻奈
なぜフランスの国債が相対的な投資妙味を残すかというと、小党分立・少数与党で予算が決まらない状況が続いており、それが財政弛緩を招いているからである。これでは格下げがあっても当然で、そうした状況から逃れられない中、財政見通しにも差が付き始めている。
例えば図表1を見てもらいたい。図表1は主な欧州国のプライマリーバランス対GDP(国内総生産)比の比較図だが、2026年に向けて、イタリアやスペインは改善していくのに対し、ドイツ程ではないにせよ、フランスも財政状況が悪いことがわかる。

注:緑は良い状況、赤になるほどよくない状況を示す
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こうした状況を勘案して図表2を見ると、それでも財政状況は相対的に良好で信用力が高いドイツ国債は対EU債で割高である一方で、フランス国債も、スペインやイタリアのそれと同様に割安であることがわかっている。

さらに今後のフランスは当面の政治リスクに加えて、予算が決まらない、信用力に重しがかかる状況が続くことも想定される中、ますますフランス国債の投資妙味が発揮されるであろう。
とはいえ、フランスの政治状況や今後のリスクについては、どの程度まで見ておくべきか気になるところである。今回はフランスの現状をアップデートしておくことにする。
バイル政権崩壊と今後の展開
バイル首相が9月8日に信任投票で敗北した。これは予想通りで、不信任が364票、信任が194票、そして棄権などが25票という結果に終わり、右派・共和党LRの一部議員が棄権したと見られるなど首相は連立政権全体210票の支持さえ得られなかった、いわば惨敗である。
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