J-MONEYカンファレンス「金利変動で広がるチャンスとリスク」 【特別講演】スタグフレーションの発生を懸念。耐性持つインフレ連動国債の活用を運用ポートフォリオ再考 インフレ時代の資産運用について考える
2025年5月16日、J-MONEYカンファレンス「金利変動で広がるチャンスとリスク〜金融市場”新常態”下のポートフォリオ戦略を再考する〜」が、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。当日のプログラムの中から、ラッセル・インベストメントの金武伸治氏による特別講演の概要をお伝えする。
インフレ懸念と財政悪化懸念で先進国の長期金利が上昇

ラッセル・インベストメント
執行役員
トータル・ポートフォリオ・ソリューション本部長
エグゼクティブコンサルタント
足元の大きな問題といえば、やはり「トランプ関税」だろう。一時期より多少落ち着いたとはいえ、今後のインフレ動向を巡る不確実性は依然として高い。本日は、このインフレへの対応にフォーカスした資産運用のあり方を考えてみたい。
まず【図表1】をご覧いただきたい。これは米国債のイールドカーブだ。青い線が2023年12月末で、オレンジの線が直近2025年4月末。
短期金利は低下しているが、低下が予想されていた長期金利は反対に上昇している。短期金利の低下は、景気後退懸念による利下げ観測からだ。

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一方で、関税政策や移民管理のよるインフレ懸念、加えて減税政策や財政拡大による財政悪化懸念により長期金利が上昇している。つまり景気後退懸念による金利低下要因とインフレ・財政悪化懸念による金利上昇要因がイールドカーブ上でせめぎ合っている。このような状態は米国だけではなく、ドイツや英国でも同様に観測される。
トランプ政権の一連の政策は【図表2】のようにまとめることができる。

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これらの要因は、景気後退期における「悪いインフレ」となる可能性がある。それはスタグフレーションとまではならないとしても、緩やかな物価上昇と景気後退が継続する「スタグフレーション・ライト」となる懸念に結びつく。その経路は【図表3】のようになる。

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スタグフレーションに弱い伝統的な年金ポートフォリオ
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