【事例】国際基督教大学の資金運用

過去10年間の実質収益率は 年5.8%。債券0%、株式6割で高リターンを狙う

ICU新井氏
国際基督教大学
基金担当理事
新井 亮一

そもそも、エンダウメント運用の参考とされる米国の有力私立大学は、充実した教育を提供するために授業料や補助金などの収入を上回るコストを投じており、その結果生じる教育活動収支の赤字を資金運用で賄っている。これと同様の財政運営を行っているのが、東京・三鷹にある国際基督教大学である。

国際基督教大学は、1953年に米国のキリスト教団体による精力的な募金活動とそれに触発された非基督者を含む国内の募金活動により集められた寄附金により設立された。学生納付金に加えて寄附金・補助金を収入源としているが、そこから教職員人件費などの支出を差し引いた教育活動収支は、建学以来常に赤字だという。1970年代、教育事業の赤字が深刻化した時期に、ゴルフ場として利用されていたキャンパス用地の一部を売却する話が持ち上がった。

その売却代金300億円超が基金の原資となり、現在に至る。同大学で基金担当理事を務める新井亮一氏は、J.P.モルガンで運用実務を経験した後、2014年に基金担当理事に着任した。当時470億円だった基金の時価残高は2025年3月末時点で702億円にまで拡大。2014年度~2024年度に教育研究予算へ繰り入れた分を加えると、運用によって累計409億円の収益を上げた計算になる。

新井氏は「教育研究活動を充実させることと、奨学金の拠出が運用の目的だ。着任当初は、基金を取り崩しながら教育研究費を捻出していた。運用益を稼がなければ基金を維持できなくなるため、『インフレ率+4%』を目標に高リターンの獲得を目指している。これは、長期のデータが入手可能なS&P500種指数で過去50年、100年でインフレ率+5%超のリターンを出ていることから、十分達成可能であり、財政計画もこの目標リターンに基づき策定している」と説明する。

2024年度はインフレ率を除いた実質収益率が0.1%と目標の4%を下回った。しかし過去 10年間の年率収益率は名目で7.1%、実質で5.8%と、基金の目標を2%弱も上回っている。

このように高リターンを狙いつつ、中長期的なペイアウトや、元本毀損発生時とその後の回復期間を想定して、資金を『短期(5年以内に取り崩される資金)』『中期(6 ~10年後以内に取り崩される資金)』『長期(10年以上取り崩す予定のない資金)』の3つに区分し管理している。

足元の目標資産配分は、短期資産の下限が20%、中期資産が20%、長期資産が上限6 0%だ。図表の通り、2024年度末時点の資産配分比率は日本株式3割、プライベートエクイティ3割と株式が6割を占める。加えて、債券には投資しないという方針が、他の国内大学と大きく異なるポイントと言える。

■国際基督教大学の運用商品類型配分(2024年度末時点)
国際基督教大学の運用商品類型配分
出所:国際基督教大学

「債券の期待収益率は、当基金の運用目標を下回るため基本的には投資対象としていない。また、一般的には、ボラティリティを低減する目的で株式と債券に分散投資するのがセオリーとされているが、本学は、時価ベースの自己資本比率が70%を超えている上、基金の資金は投資家からの出資ではなく寄附金だ。よって、短期的な資産の時価変動リスクを抑制する必要性はないと考える」(新井氏)。

今後も、引き続きインフレに対応しながら世界の経済成長を取り込むべく、株式比率を高水準で維持していく方針だ。

他大学へのアドバイスとして、新井氏は「運用の前段階として、まとまった原資がなければ経営に資するほどの運用益を上げることは難しい。地道だが、積極的に募金活動を行うことが大切だ。また、個人で投資の成功体験がなければ、大学の資金運用にも前向きになれないのではないか。理事会や幹部教職員が株式投資を始めてみることも良いきっかけになるはずだ」と語る。

同基金の運用方針や実績は国際基督教大学の公式ウェブサイトで詳細に公開されている。情報開示の観点でも参考にできる部分が大きいだろう。