NPO法人学校経理研究会主催セミナー 学校法人のための資産運用戦略【その2】〜インフレと金利ある世界におけるプライベートアセットの意義〜
NPO法人学校経理研究会(理事長 小野元之・元文部科学事務次官)は2025年7月3日、「学校法人のための資産運用戦略〜インフレと金利ある世界におけるプライベートアセットの意義〜」と題したセミナーを東京都内で開催した。基調講演「長期投資家におけるプライベートエクイティの投資意義と実務上の課題」と、テーマ講演(インタビュー形式)「リアルアセット投資を通じた資産運用立国への挑戦」の2部構成。その概要を紹介する。
リアルアセット投資を通じた資産運用立国への挑戦
大口 克人氏
日経マネー編集長、日本経済新聞マネー報道部長などを歴任。現在は日経電子版「マネーのまなび」を担当。講演やテレビ出演多数
豊島 俊弘氏
日本政策投資銀行でグロース・クロスボーダー投資グループ長などを歴任。世界銀行上級民間セクター専門官も務めた。ホールディングス化前のマーキュリアインベストメント創設メンバー
法定通貨への信認が揺らぎ
実物資産由来の資金循環に脚光
大口 基調講演で、大学ファンドのチャレンジングな資産運用のお話があった。日本でも35年前ごろは貯蓄商品の利回りが8%という時代があったわけだが、その後にバブルが崩壊して低成長、低金利時代が長く続いた。昨今、久々に「金利ある世界」が戻ってきたが、まだカラダが金利に納得していない感じがする。
豊島 確かに第2次世界大戦後の日本は、石炭、鉄鋼から始まり造船、自動車、石油化学といった基幹産業を重点的に育成する「傾斜生産方式」を採用。そこにお金を回すために、銀行による「マル優」などの非課税かつ金利のある貯蓄を奨励することによって国民から長期資金を吸い上げた。いわゆるメインバンクシステムである。ただ、預金が集まり過ぎて過剰流動性相場、土地神話、そしてバブル崩壊とその処理の為のゼロ金利の時代に至った。
そして今、再び「金利のある世界」が復活してリスクマネーによる資金循環が活発になってきた。ここで従前と違うのは、銀行中心の貨幣や決済市場の機能が弱くなっていること。より踏み込んで言えば、法定通貨への信認が揺らいでいる。これは、マネーの過剰流動性の一方で日本はもとより欧米先進国も政府負債比率が高まっており、財政の持続性への疑念が生まれているからだ。
そこで脚光を浴びてきたのが、貨幣と債券の「流動性市場」における投資商品の物足りなさを補う「低流動性市場」。なかんずく非公開企業や不動産、インフラ、航空機といった「実物市場」だ。【図表1】で示したように、低流動性オルタナティブを扱うマネージャーが、実物市場の価値を発見し、それを「みなし有価証券(二項有価証券)」に変換して流動性のある資本市場に資金を供給するといった流れになる。

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オルタナティブ専門の
運用会社が乏しい日本
大口 しかし、企業年金など機関投資家のオルタナティブへの投資は拡大してきたが、上場株や債券などにくらべると日本はまだまだ低水準ではないか。
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