シリーズ第4回は不動産投資です。実物資産への投資として、日本国内でも厚生年金基金時代から長い歴史があります。プライベートアセットへの投資は圧倒的に海外が主流ですが、その中で不動産投資は投資のボリューム、パフォーマンスともに国内優位という例外的なセクターです。ラッセル・インベストメントの山浦厚能さんに現状や背景を詳しく解説していただきます。

1980年〜90年代に不動産バブル

不動産は、年金資産運用の世界ではオルタナティブに区分されていますよね。でも一個人としては、プライベートエクイティ(PE)やプライベートデット(PD)などに比べると身近な存在です。

山浦 家やマンションを購入することもあるわけで、おっしゃる通りですね。今回、不動産投資を解説するにあたって、1980~90年代に日本で起きたバブルの発生と崩壊を振り返ってみたいと思います。

バブルと言われる事象は古今東西で発生しました。記録に残された最初のバブルはオランダのチューリップ(1636~1637年)ですが、日本の不動産も、その発生と崩壊のマグニチュードのレベルにおいて歴史に残るものであったと言えるでしょう。国土交通省が公開する「主要都市における商業地の最高価格の推移」で確認すると、東京23区の商業地価格は1993年にピークをつけ、それを更新するまで15年もの年月がかかりました。また、その他の主要都市では、いまだにピークに手が届かない水準にとどまっています。

物件評価の「物差し」欠く

不動産バブルが起こった背景は何だったのですか。

山浦 当時の経済力や都市人口の増加、金利・融資環境など、様々な要因が複合的に組み合わさったものです。特に「不動産価格が永遠に上昇し、短期的な売買によって簡単に利益を得られる」という大衆心理が、バブルを膨らませる動きを加速させたことは間違いありません。不動産が生み出す収益(インカムゲイン)ではなく、売買益(キャピタルゲイン)に夢中になるあまり、物件を正当に評価する物差しを欠いていたと言えるでしょう。

バブル崩壊で見方が180度転換

日本の企業年金の不動産投資は、前身の厚生年金基金時代からの長い歴史があると聞きました。

山浦 その通りです。かつて、資産運用についての国の規制として「5・3・3・2規制」(1998年に撤廃)がありました。これは、厚生年金基金の資産運用に対して「安全資産は5割以上、国内株式と外貨建て資産はそれぞれ3割以下、土地等不動産は2割以下とする」というものです。かつては不動産が当然の投資対象であり、規制で縛らないといけないほどだったということです。

しかし、バブル崩壊によって不動産投資に対する見方は180度変わりました。経済的な損失が大きかっただけに、心理的嫌悪感が機関投資家の間に広がりました。厚生年金基金はもとより企業年金になっても、母体企業が「年金運用での不動産投資は禁止」という方針を決めた事例が数多く見られました。

投資尺度の定着は2000年以降

しかし、不動産投資そのものが悪いわけではありませんよね?

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