機関投資家のオルタナティブ投資が加速し、近年は特にプライベートアセットが選好されてきた。そんな中、足元ではヘッジファンド(以下、HF)を再評価する投資家が増えてきているという。HFの最新動向と運用のアドバイスを有識者に聞いた(記事内容は2025年4月末時点)。
再評価が進むヘッジファンド。期待リターンは8~12%に上昇か

代表取締役社長
眞保 二朗氏
年金基金などの機関投資家のオルタナティブ投資は、2000年代初頭からファンド・オブ・ファンズ(FoF)でのHF投資(ファンド・オブ・ヘッジファンズ、FoHF)を中心に始まった。2008年の世界金融危機により、HFの流動性リスクが顕在化したことでしばらく下火になったものの、2010年代半ばに世界的な金融緩和に伴う金利低下が定着し、伝統的資産だけでは目標リターンを達成しにくくなったことから、インフラ、プライベートデット(PD)、プライベートエクイティ(PE)などオルタナティブ資産への投資が広がった。
「ここ数年はプライベートアセットが選好されてきたが、足元ではHFを再評価する投資家が増えてきた」。そう明かすのは、タスク・アドバイザーズ代表取締役社長 眞保二朗氏だ。2022年に各国中央銀行が利上げを実施した結果、資本市場が冷え込んだことが背景にある。PEの分配金は滞り、順調だったPDも新規投資は選別的になった。結果として流動性のあるHFへの回帰に繋がったのだ。
「2024年からようやく分配金が出始めたが、完全な回復にはまだ時間がかかりそうだ。また2022年以降、米金利の上昇で『キャッシュポジション』が利回りを生み、見た目のリターンが少し改善したことも、HFに目が向くようになった理由だろう。投資家がHFに期待するリターンはドル建てで5~7%の水準から、最近は8~12%程度に上がっている印象を持つ。流動性を確保すると同時に、ある程度の期待リターンを求める投資家にとってHFの一部の戦略が有力な選択肢になっている」(眞保氏)
「ボラティリティ裁定」や「転換社債裁定」などボラティリティが投資機会に
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