Nasdaq eVestment™ プラットフォームには、世界の運用会社から機関投資家が運用する伝統的資産およびヘッジファンドの資産データが戦略単位で報告される。それらのデータを基に、機関投資家の運用動向を振り返ろう。

■Nasdaq eVestment™とは……
ナスダックが提供する機関投資家向けのデータ分析プラットフォーム。2万7800以上のアクティブ運用戦略を網羅し、アセットオーナーやコンサルタントが資産運用会社のスクリーニングなどに活用する。パフォーマンスやリスク指標の比較、ESG 分析、資金フローの把握が可能で、投資判断の精度向上に貢献する

米国大型株戦略からパッシブ運用へのシフト

2024年第4四半期(10~12月)にNasdaq eVestment™プラットフォームが収集したデータによれば、世界の機関投資家のAUM(運用資産残高)では、株式戦略および債券戦略に広く資金流入があった様子が窺えた。

特に株式戦略については、同プラットフォームに登録されているプロダクト全体の33%の商品で資金フローの収支がプラス(流入超過)となった。株式全体では流出超過が続いているものの、今期の流入額の合計は3672億ドルに上り、2021年第2四半期以来で最大のインフローとなった。資金流出額の合計は、過去3年間で最も低い水準となった。こうした結果は、株式投資の回復傾向を印象付ける。

Nasdaq eVestment™プラットフォームのプロダクトセクターの全体ランキングでも、第4四半期に最も高い流入額を記録したのは「米国パッシブ型S&P500株式戦略」(+447億ドル)であった。同セクターは第3四半期(7~9月)においても+240億ドル強の資金流入を記録していたが、今期はほぼ流入額を倍増させてトップの座を守った。

米国パッシブ型S&P500株式戦略の好調さの背景には、米国の大型株(US Large Cap)戦略からの資金シフトが滲む。今期の戦略セクター別の流出額ランキングの上位には米国大型株戦略が並び、「米国大型株グロース戦略」(-276億ドル)が流出トップ、続いて2位が「米国大型株コア戦略」(-192億ドル)、4位が「米国大型株バリュー戦略」(-138億ドル)だった。

■機関投資家のAUMにおける第4四半期のネット資金流入・流出ランキング
機関投資家のAUMにおける第4四半期のネット資金流入・流出ランキング
出所:Nasdaq Institutional Intelligence Report Q4 2024 Data

世界の機関投資家の関心は高リスク債券から株式へ

他方で、債券戦略※については第4四半期で+357億ドルの資金流入を記録し、債券全体で流入超過となった。また2024年の年間で見ても2806億ドルの流入超過を記録。ハト派的な金融政策と地政学リスクの高まりの中で、機関投資家が一貫して債券戦略への配分を増やしてきた傾向が窺える結果が示されている。

なお、Nasdaq eVestment™にはプロダクト情報が「いつ・どこから」閲覧されたか追跡可能なNasdaq eVestment Advantage™というツールがある。同ツールの分析を基に、各地域の機関投資家の閲覧上位3位までの戦略リストを見ると、第3四半期には欧米や中東アフリカ、オセアニアなど多様な地域で、ハイイールド債券や米バンクローン、CLO(ローン担保証券)がランクインしていた。しかし今期はそうした高リスクなクレジット戦略は見当たらない。

今期のリストでは米国・日本の機関投資家がそれぞれ自国の株式戦略に関心を示したほか、各地域の閲覧トップ3に最も多くランクインしたのもグローバル大型株コア戦略と、株式戦略への関心が目立つ結果となった。

※文中およびグラフに示す「債券戦略」は、キャッシュおよび元本保証型商品を除く(noncash/non-stable value fixed income strategies)

問い合わせ:analyticsapac@nasdaq.com