借り手のキャッシュフローではなく資産を担保とする法人向けローンのアセット・ベースド・レンディング(ABL、動産・債権担保融資)ファシリティは従来、それほど注目を集める投資戦略ではなかったものの、機関投資家からは独自の特性を持つ収益源として認識されてきました。数十年来の水準でインフレが高止まりし、マクロ経済の先行きが不透明な中、機関投資家の間では、他のパブリック・クレジットやプライベート・クレジットへの投資を補完し得る分散効果のある手段として、プライベート・クレジット市場の一領域であるABLへの関心が高まっています。2020年7月、ABLソリューションの推進を担うリーダーとして、同分野で豊富な経験と実績を有するラリー・クラフとリサ・ガレオタがファースト・イーグル・オルタナティブ・クレジットに参画しました。このQ&Aでは、クラフとガレオタが、ABLファシリティの概要とノンバンクが機関投資家の資金を活用してどのように投資リターンを追求できるのかを解説します。

ファースト・イーグルのラリー・クラフ氏(左)とリサ・ガレオタ氏(右)
  • ABL(アセット・ベースド・レンディング:借り手の特定の資産を担保とする法人向け融資)は、企業が最適な資本構成と十分な流動性を維持するために活用できる手段の一つです。
  • 投資家にとってABLは、強固な契約条項や明確な担保の裏付けをもとに、より高い利回りの可能性と魅力的なダウンサイドリスクの抑制効果が期待できる選択肢であることから、プライベート・クレジット分野において他とは異なる収益源となることが期待されます。
  • ファースト・イーグルは、ABLの引受会社として、借り手の資金アクセスを最大化しつつ、自社の損失リスクを最小限に抑えることを目指しています。借り手の担保資産を保守的に評価することが、当社のリスク管理プロセスにおける重要な要素です。
  • キャッシュフロー・ベースのローン市場と比べるとABLは比較的小規模ですが、2人合わせて45年以上の経験を持つABLのベテランであるクラフとガレオタが、これまでに築いてきた人脈とアクセスを活かし、案件の創出と貸し手としての差別化に大いに貢献してくれるものと考えます。

Q.アセット・ベースド・レンディングとは

クラフ: 簡単に言えば、在庫、売掛金、不動産、機械設備、知的財産など、借り手が保有する特定の資産を担保とした法人向け融資のことです。ABLファシリティは、資本構成の最適化や十分な流動性の確保を図る企業にとっての一つの手段にすぎません。特に、企業が過渡期にある局面では従来の資金調達手段では不十分なことが多く、そのような場合にABLが有効な選択肢となります。

こうした状況下では、ファースト・イーグル・オルタナティブ・クレジットのようなノンバンクの貸し手は、借り手に加えて、必要に応じてその取引銀行やプライベート・エクイティのスポンサーとも連携し、流動性ニーズに応じた柔軟かつカスタマイズされた融資スキームを構築するのが一般的です。投資家にとってABLは、プライベート・クレジットの世界において他とは異なる収益源となり得る手法であり、強固な契約条項と明確な担保の裏付けにより、より高い利回りの可能性と魅力的なダウンサイドリスク抑制の効果が期待できます。

ガレオタ: ABLについて詳しく説明する前に、よくある誤解を簡単に整理しておきましょう。名前が似ているため投資家の間でアセット・ベースド・レンディング(ABL)とアセット・バックド・セキュリティーズ(ABS)が混同されることがありますが、この2つは構造が異なり、ABLは一般的に、売掛債権などで構成される大規模な証券化プールであるABSとは異なる仕組みで構成されるスキームです。また、ABLは「ファクタリング」とも異なります。ファクタリングは、企業が売掛金の支払いを待つ代わりに、それらの売掛債券を割引価格で金融機関に売却し、早期に現金化する手法です。ABLでは売掛金を担保として利用することができますが、担保として差し入れられた資産の所有権は引き続き借り手が保有します。ただし、是正措置が必要となった場合はこの限りではありません。

おそらく最も重要なのは、ABLと、広くシンジケートされたローン(いわゆるレバレッジド・ローン)やダイレクト・レンディングを始めとする従来型のミドルマーケット向けローンのスキームを区別することです。従来型のローンは通常、借り手のキャッシュフローの評価に基づいて引受がなされ、そのキャッシュフローに連動したさまざまな財務維持コベナンツによって管理されます。これには、最大レバレッジ・レシオや最低インタレスト・カバレッジ・レシオといった信用指標が反映されます。

これに対し、ABLファシリティでは通常、何よりもローンの担保となる資産に重点が置かれます。デュー・デリジェンスの主な目的は、その担保の評価です。ローンは一般的に、借り手が保有する担保資産(「借入ベース」)の価値に対する一定の割合(「アドバンス・レート」)を上限として設定されます。通常、私たちは担保の評価を、平常な市場環境での売却を想定するのではなく、下振れシナリオを前提として行います。担保に対するアドバンス・レートは資産クラスごとに異なり、貸し手となる金融機関がその資産クラスにどれだけ精通していて安心感を持っているかにも左右されます。例えば、ABLの貸し手は、借り手が保有する在庫の価値に対して100%まで融資することがあっても、機械設備に対してはその価値の70%までにとどめる場合があります。アドバンス・レートとABLファシリティの構造はいずれも、担保資産の質や安定性に影響を与えるさまざまな要因に基づいて決定されるのです。

Q.ABLは一般的にどのように組成されるのでしょうか

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