知りたい!隣の企業年金・第31回 ブリヂストン企業年金基金 ──「DBは三方よし」再認識〜常務理事は3代続けて信託銀行出身、一種の「OCIO」
タイヤ事業をコアに、世界約150の国と地域で事業を展開しているブリヂストンの企業年金基金を訪ねました。草薙辰夫(くさなぎ・たつお)常務理事兼運用執行理事は、同基金の総幹事である三井住友信託銀行の出身です。従業員数が12万人を超えるグローバル企業が、年金資産の運用担当者を外部から招いているのはなぜか。そこには合理的な社風が反映されているようです。

「グローバル研修センター」の一角に基金
六本木と恵比寿の間の東京メトロ広尾駅から徒歩5分ほど。全面ガラス張りのような「ブリヂストン グローバル研修センター」の一角に、ブリヂストン企業年金基金のオフィスはある。
いかにもハイスペックのタイヤが並んでいて、ブリヂストンらしい光景ですね。
草薙 いや、普段は何も置いていないのですよ。グローバルのグループ企業のメンバーが集まって明日(=2月27日)、新年度のミーティングが開催されます。それに向けて特別に陳列したのです。ブリヂストンの本社は中央区京橋にあり、企業年金基金も従来はその近くにあったのですが、2023年にこちらに移ってきました。
この時期に「新年度」というのは不思議な気もします。
草薙 企業年金基金は厚生年金基金を引き継ぐ形で3月決算となっているのですが、ブリヂストン本体は昔から12月決算でした。今は海外の売り上げ比率が7割超ですから、グローバルな観点からも12月決算で良かったのでしょうね。
ブリヂストン企業年金基金の概要
- 所在地/東京都港区南麻布5丁目
- 設立年月/厚生年金基金(1974年設立)の代行返上で2005年4月に設立
- 資産総額/約1700億円
- 加入者/約20000人 受給者/約8000人
- 予定利率/2.5% 期待運用収益率/約2.3%
- (いずれも2024年3月末現在)
DBは製造業にとって重要
まず年金制度全般について伺います。DB(確定給付型)のほかにDC(確定拠出型)もあるわけですね。
草薙 はい。当方ではDB5割、残りがDCと一時金になっています。私は銀行から移ってきて3年になりますが、銀行と製造業では年金制度の意味合いが全く違うと感じました。銀行は本部、支店ともに全国均一の「事務職」ですが、こちらは本部以外にも多くの生産現場や研究・開発拠点を抱えています。そういう従業員の多様性も考えると、DBは大変良くできた制度だと改めて認識しています。従業員にとっては、自分に代わって会社が資産を積み立ててくれるし、一定基準を満たせば終身で給付を受けられる。会社にとっても節税になるなど、加入者、受給者、母体のいわば「三方よし」なわけです。ただ、この利点が従業員や母体企業にもまだ十分に浸透していない。当社の退職給付制度全体を社内でもっと啓蒙しなければ、と思っています。
運用は「保守的スタンス」
それでは資産運用について。直近までの収益率の推移はどのようなものだったのでしょうか。
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