反ESG・反DEIは本流にはならない
ESG・DEIの振り子はどこを指して止まるのか
トランプ就任式直後から、次々出て来た。
パリ協定離脱、EV(電気自動車)化の2030年までの目標取り下げ(補助金を含め促進策を廃止する)、化石燃料の増産(によってエネルギー価格を引き下げ、インフレの抑制を図るのが趣旨)、DEI(※)施策の廃止(連邦政府として認める性別は変更不可能な男性と女性の2つだけ)……などなど。
※DEI=ダイバーシティ(多様性)、エクイティ(公平性)、インクルージョン(包括性)の頭文字をとった語
こうした動きを察知していた反ESG(環境・社会・ガバナンス)・反DEIのモノ言う株主が強く企業に働きかけ、このところ、企業側からもDEI政策を廃止、撤廃、縮小するという流れが強く見られている。
そうしたニュースを見て、「当然だ」「ほら見たことか」と思っている日本のとくにシニア世代や「ESGは間違っているから、シュリンクして当たり前だ」と言う経済の有識者も中にはいるであろう。
私はESGストラテジストなる肩書を持っており、簡単にこの説に乗るわけにはいかない。しかし、実は心の片隅ではいささかやりすぎになっていたDEIについて疑念を持っていた面は否定しない。そこは前出の人々と変わらない。
ESG・DEI振り子は激しく振れていた結果、大きく揺り戻しが来て、反対の声が強まっているように見えている最中なのではないか。振り子は振れ幅を次第に小さくして、均衡点を見つけていずれ止まる。企業にとってのESGやDEIの在り方とはどういうものか。反ESG・反DEIは本当に本流にならないのか。整理したい。
まずは現状から見ていく。サステナブルファイナンス市場は拡大してきたが、2024年は史上最大を更新した(図表1)。
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