金 世界の政府債務の急増は波乱要因。金価格はまだ上昇余力がある
地政学リスクと金利の反転
金市場の快進撃がまだ続いている。2024年に入り、日次ベースで数十回の過去最高を更新した金価格は、ついに10月に1オンスあたり2700ドルを突破した。また、円ベースでも史上初めて1グラムあたり1万5000円を超えた。
最大の要因は地政学リスクの蓄積である。イスラエル・ハマス戦闘がヒズボラおよびイランを巻き込む紛争に拡大し、中東がかつてない緊張感に包まれるなか、金が安全資産として買われた。また、ロシア・ウクライナ戦争も2年半以上継続し、着地点がいまだに見えない状態が続いている。台湾海峡の緊張、中国の南シナ海進出、北朝鮮のミサイル発射問題がもたらす対立を低下させる政治リーダーシップも今のところ見当たらない。
2024年の大統領選を通して増幅している米国内の政治対立も、もう一つのリスク要因である。これら地政学リスクは複雑に絡み合っており、解決への道筋が見えなければ、グローバル経済活動、物価、企業の経営、消費者マインドに影響を与えるだろう。投資環境の不確実性の高止まりをもたらし、質への逃避の受け皿としての金への期待は一段と底上げされる可能性がある。
金価格のさらなる底上げを支える要因は他にもある。鈍化する自国経済を刺激するため、米国や欧州をはじめ、多くの金融当局が金融政策を転換した。2024年以降、ECB(欧州中央銀行)は既に3回の利下げを実施しており、FRB(米連邦準備理事会)も9月に4年半ぶりとなる政策金利の引き下げを決定した。インフレが落ち着きを取り戻しつつあることもあり、両中央銀行とも、さらなる利下げを行うと予測されている。
つまり、ここ数年、金市場に大きなマイナス影響を与えてきた金利環境がプラス要因に反転したのである。ここ40年におけるFRBの2回の利下げサイクルにおける金のパフォーマンスを見ると、2000年代初頭に起きたドットコムバブルの崩壊時は約60%、2007年/2008年の金融危機発生時は140%以上の上昇を見せており、影響が極めて大きいことが分かる。
金ETFへの資金流入が加速
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