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マクロ経済 根強い資金余剰が示唆する日本経済の中立金利の低さ
高齢化時代の期待インフレ率の評価
2024年7月の金融政策決定会合で日本銀行がややサプライズ的な利上げを実施したことを受け、市場は政策金利の到達点としての「中立金利」の水準を従来にも増して否応なしに意識せざるを得なくなりつつある。
7月31日の定例記者会見での植田和男総裁の「中立金利に関して大幅な不確実性があるという点は認識が変わっておりません」との発言から窺(うかがわ)われる通り、日銀は具体的な中立金利の水準感を示唆することについて慎重である。
一方、同じ定例会見での「現状では、その不確実な範囲よりは(筆者注:大幅な不確実性のある中立金利水準より現状の政策金利水準が)かなり下にある」とした植田総裁の発言から、市場参加者は日銀が相応に高めの中立金利水準を想定している可能性を読み取りはじめている。
一般に市場参加者は、日銀が複数の推計式に基づいて提示しているマイナス1%程度からプラス0.5%程度の自然利子率のレンジを念頭に、物価安定目標の達成を前提にいずれ実現するであろう年2%の期待インフレ率を足し合わせ、プラス1%程度を下限とする中立金利の水準感を想定することが多い。
しかし、高齢化時代の期待インフレ率の評価は、以下2点から、実績としてのインフレ率との比較で相応に割り引いてみる必要があると考えられる。
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