J-MONEYカンファレンス「2025年どうなる世界経済 どう見る日本経済と金融政策」 【パネルディスカッション】2025年以降を見据えた企業年金の運用戦略を考える「資産」配分より「リスク」配分を重視 〜「リーマン」教訓、マイナス運用回避のJTB基金に学ぶ
J-MONEYカンファレンス「2025年どうなる世界経済 どう見る日本経済と金融政策」が2024年10月30日、東京・日本橋のベルサール東京日本橋で開催された。当日のプログラムの中から、ボラティリティーの一層の拡大が懸念される2025年以降、企業年金として「リスクを抑えながら一定のリターンを獲得する方策」をどう構築するかなどについて議論が交わされたパネルディスカッションの模様をダイジェストでお伝えする。
一層のボラティリティー拡大。リスク抑制の運用さらに重要
阿部 米国の新大統領が年明け2025年1月に就任する。国内の分断が進み、さらに内向きの政策を打ち出すことが予想される。超大国の舵取りが代わり、世界経済のボラティリティーは一層拡大することになるだろう。そういった中、日本の企業年金は2025年以降、どのような運用方針で臨むべきか。
そこで、J-MONEY Onlineの連載「知りたい!隣の企業年金」で採り上げた企業年金の中でも、最も「リスク抑制」に注力されてきたJTB企業年金基金をご紹介したい。本日は松尾俊明常務理事・運用執行理事をお招きし、ここ最近のパネルディスカッションで貴重な知見を披露していただいているNFRCの木須さんとともに議論を深めていきたい。また松尾さんは、企業年金同士の組織である企業年金連絡協議会(企年協)でも積極的に活動されている。一般的に少人数で運営される企業年金の実務者としての日常や、企年協活動の様子などから伺いたい。
松尾 企業年金の資産運用というのは恐らくどちらも似たような体制で、ほぼ常務理事や運用執行理事が1人でこなしているのではないか。私自身、相談できる相手は事務局内にも母体にもいなかった。母体企業は同業者などと競争関係にあるが、企業年金同士には利害関係がない。それぞれのステークホルダーへの共通した責任、いわゆるフィデューシャリー・デューティーを背負っている。そうした同じ境遇にある仲間同士のつながりは非常に重要だし、ありがたい。その貴重な受け皿が企年協だと思っている。
資産運用知識の向上もさることながら、常務理事になりたての頃、運用成績が芳しくないときにメンバーの一言に精神的に救われた経験もあり、資産運用初心者の私がこの世界に比較的早くなじめ、今までやってこられたのも一緒に活動させていただいている皆さんのお陰と、心から感謝している。
阿部 コンサルタントの立場からはどう見えるのか。
木須 グローバルに見ると、日本の企業年金は相対的に規模が小さい。そうなると、単体では運用会社との力関係で負けてしまう。企業年金同士が情報交換したり相談しあったりというのは、そういう意味でも大事ではないかと感じている。
リーマン直後に運用マイナス16%。「リスクファクターベース」に変更
阿部 ここから本日のメインテーマとして、リスク抑制を最重視しているJTB企業年金基金の運用について伺っていきたい。
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