来週を考える|The Week Ahead 「意志と表象」としての市場2024年2月16日(金)配信号
市場の意志は明確です。市場は、上へ上へと上昇しています。実際、いくつかの主要な経済指標は一時的に、新たな史上最高値に達しています。たとえば、S&P500種株価指数は節目の5,000を一時上回りました。「マグニフィセント・セブン」だけで時価総額全体の3割を占めています。同時に、日本株は先週、34年ぶりの水準に上昇し、ドイツ株価指数(DAX)は17,000近辺で取引されました。
ドイツの哲学者アルトゥール・ショーペンハウアー(1788~1860)の言葉を借りれば、市場は意志と、私たちの表象という二重性の中に存在しており、その両方において現実の試練に耐える必要があります。
一部の市場参加者は、近い将来の利下げという表象を思い描いています。しかし、ここ数週間の(時に予想外の)底堅い経済指標はおそらく、そのような考え方に終止符を打つでしょう。実際、主要中央銀行の最近のコメントも、この見方を裏付けています。中央銀行は、年内の金融緩和の可能性を残している一方で、3月にも利下げが実施されるとの期待を市場参加者に抱かせないようにしています。
インフレ率の低下を伴う「ソフトランディング」という表象にはいくつかの調整が必要であることを考えると、こうした中央銀行の行動はもっともと言えます。弊社のグローバルなマクロ指標は、先進国市場と新興国市場の両方の改善を受けて1月に、2カ月連続で上昇しました。
米国、ユーロ圏、英国の経済指標は引き続き上昇したものの、ユーロ圏(ドイツは言うまでもなく)の数値は成長鈍化を示唆しています。日本は勢いを失いました。中国のマクロ指標は5カ月連続で若干上昇しました。この動きは、国内総生産(GDP)成長が継続しているものの、その安定性にはばらつきがあることを示唆しています。他の新興市場は、より強弱まちまちの展開を見せ、後退した市場もありました。
弊社の短期的なマクロベースの予測モデルによれば、米国がリセッションに陥る確率はさらに低下しました。しかし、リスクはまだゼロではありません。今後数週間、数カ月の動向が、景気がハードランディングに向かっているのか、それともソフトランディングに向かっているかという問いの決め手になるでしょう。
さらに、これまでとは全く異なる意志と表象の関係が近い将来に明らかになるかもしれません。ミシガン大学消費者信頼感指数を分析すると、回答者が共和党支持か民主党支持かで、顕著な差が見られます。2021年に消費者心理が目覚ましく好転した後、民主党支持者は共和党支持者よりも明らかに楽観的です(「今週のチャート」を参照)。
政治的嗜好が景気に対する評価を反映しており、その逆もまた然りであるように思われます。さて、これらの2つの異なる表象は、2つの異なる現実を反映しているのでしょうか。
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