イーストスプリング 長期では好材料の多い新興国市場。ESGを含む銘柄選定で高リターンを狙う
イーストスプリングは2018年10月26日に株式ファンド『新興国スタープレイヤーズ』を設定した。同ファンドの共同運用責任者であるフォントベル・アセットマネジメントAGのトーマス・シャフナー氏に、銘柄選定の仕組みについて話を聞いた。(取材日:2018年11月12日)
新興国市場の見通しは。
シャフナー 短期的には米中の貿易摩擦がリスク要因となっているが、生活水準の向上に伴う消費拡大など長期的には好材料が多い。現状を循環的な調整局面であるととらえれば、今はエントリーのチャンスともいえる。
『新興国スタープレイヤーズ』について。
シャフナー リスク調整後も高いパフォーマンスを目指す工夫として、約1400の投資先候補をポートフォリオに組み入れる30~50銘柄にまで絞り込む、当社独自の4ステップの銘柄選定が挙げられる。
1つ目のステップではROIC(投下資本利益率)による企業の稼ぐ力での選定を行い、次に業界内での優位性をチェックする。上記2つのステップでは、それぞれ上位25%内に入る企業だけが投資の対象となる。第3のステップではバリュエーションを算出し、株価の上昇余地が25%以上見込める銘柄をピックアップする。この基準は競合と比較してもかなり厳しいと自負している。
そして最後のステップになるのが、ESGの観点からのスクリーニングだ。銘柄選定の最終段階でESGを取り入れることで、リターンを確保しつつESGに配慮することができる。
ESGを重視する意義は。
シャフナー 現在私が銘柄選定にESGを活用して運用する3つのファンドは、すべて米モーニングスターレーティング(オールデストシェアクラス)で5つ星の評価を得ている(2018年8月末現在)。ESGに着目した銘柄選定には2つのメリットがある。
1つ目は企業が負う潜在的なリスクのヘッジになる点だ。例えば環境問題に対して十分な配慮のない企業は、社会的な批判を浴びて株価を下落させるリスクがあるといえるだろう。2つ目の意義は、投資先をサステイナブルな企業に絞り込める点だ。新興国においてもIT技術者などは不足しているという。ダイバーシティへの配慮などに欠ける企業では、今後ますます人材確保が難しくなるだろう。
ESGは必ずしも経営の重荷になるものではなく、プラスになる面も多い。新興国にあってもESGをうまく導入するような企業こそが今後も成長を続け、世界のバリューチェーンに組み込まれていくのではないだろうか。