2022年4月にスタートしたこの連載では、直近の【もっと知りたい!債券】シリーズまで債券、株式、オルタナティブと、資産種別ごとの解説を展開してきました。こうした知識を踏まえて今回からは、実際に企業年金のポートフォリオを組み立てていくために必要な知識や留意点を学んでいきたいと思います。新米常務理事の私(阿部圭介)が、前任者との引き継ぎ期間にこの連載で勉強して独り立ち。いよいよ資産運用の責任者として、頭も手も動かしていく想定です。引き続きラッセル・インベストメントの金武伸治さんに、運用実務に資するよう分かりやすく説明していただきます。

「長期運用・分散投資」が大前提

今回からは、実際にポートフォリオのラインアップを、金武さんの助言をいただきながら作り上げていくイメージです。さて、例によって大変基礎的なことから伺います。企業年金制度における資産運用にとって、第一に重要なことは何でしょうか。

金武 自分たちの企業年金の財政状況を知ることが大前提です。今回はまず、そこからスタートしましょう。

資産運用の目的は言うまでもなく、収益を上げることです。しかし年金運用の場合は銀行や証券会社、あるいは運用会社や個人投資家が行っているような運用とは、やや目的の達成方法が異なります。

この連載では、主に確定給付企業年金制度(DB)を考察の対象とします。DBの場合、あらかじめ定められた予定利率と、それに基づく運用目標(主に目標リターン)があり、資産運用の実績が運用目標を達成することで、健全な年金財政が維持される仕組みになっています。

「資産運用の実績が運用目標を達成する」というのは、毎月・毎年必ず達成しなければならないものではなく、単月や単年での変動を許容しつつ、長期で達成されるべきものです。

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