底堅いサービス消費と猛暑効果で個人消費は持ち直し
家計行動は新型コロナウイルス禍前の水準まで持ち直す
新型コロナウイルスへの警戒感が薄れ、家計の外出行動も正常なレベルまで持ち直している。内閣府「V-RESAS」の人流データによると、移動人口は、「5類」に移行された直後こそ目立った回復はみられなかったが、2023年6月第3週にはコロナ禍前の2019年同週比でプラスに転じ、学校の夏休みが始まった7月第3週には2019年の同週を2.3%上回った。台風が相次いで上陸した8月中旬にかけて人流の動きはやや弱まったが、足元では2019年と同水準付近での推移が続いている。
こうした外出行動の回復を反映してレジャーや外食を中心としたサービス消費も堅調に推移している。ただ、7月20日頃までに「全国旅行支援」を終了した自治体が多く、国内旅行については政策効果の反動減がみられる。日銀から公表されている「消費活動指数」の内訳項目である実質サービス指数をみても、6~7月はやや弱い動きとなっている(図表)。
もっとも、夏休み期間の旅客運輸や宿泊旅行は新型コロナウイルス禍前の水準付近まで回復している。また、感染拡大防止のために休止されていた祭りや花火大会といった大規模イベントも各地で再開されるなどコロナ禍前の日常をおおむね取り戻している。夏休み前のサービス消費はやや伸び悩んだが、2023年7~9月期全体でみると回復基調を維持していると考えられる。
物価上昇圧力は想定よりも強い
一方、個人消費の足を引っ張っているのが物価高である。飲食料品の断続的な値上げに加え、衣料品や日用消耗品などへも値上げの動きが広がっており、消費者は節約志向を強めている。
2023年7月のコア消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)の前年同月比上昇率は3.1%と6月の3.3%から鈍化した。今春にかけて原油相場が下落し、燃料費調整制度に基づいて電気・ガス料金が引き下げられたためである。ただ、電気代などの影響を含まない「生鮮食品・エネルギーを除く総合指数」の前年同月比上昇率は、2023年6月の4.2%から7月には4.3%に加速している。
昨年来の原燃料高に伴う価格転嫁は道半ばの状況で、多くの企業はコスト上昇分を製品価格に十分に転嫁できていない。企業はこの先も断続的に価格を引き上げていくとみられる。9月末を期限としていたガソリンや電気代などの負担軽減策が10月以降も継続されることとなったため、コア消費者物価の前年同月比上昇率はこの先徐々に鈍化していくものの、年内は物価安定の目標である2%を上回って推移すると予想される。
7~9月期の実質個人消費は前期比プラスに転じる見通し
物価高が食料品や日用品などの消費を押し下げているとはいえ、2023年7~9月期の個人消費は堅調と予想している。夏休み期間中のサービス消費が底堅く推移したとみられることに加え、今年夏の猛暑もプラスに効いてくるためだ。
経済産業省から公表された2023年7月の家電大型専門店販売額をみると、年初からマイナスが続いていたエアコンなど季節家電が前年同月比26.7%増、同様に減少が続いていた冷蔵庫など生活家電も同12.5%増と大幅なプラスに転じている。日銀の消費活動指数をみても、7月は耐久財消費の伸びが加速するなど猛暑効果がモノの消費を押し上げている。
総務省では、家計調査をベースに商業動態統計など供給サイドの統計を組み合わせてGDP統計の家計最終消費支出に相当する指数を算出しているが、同指数は2023年6月、7月とも前月比プラスとなっている。実質GDPベースの個人消費は4~6月期に前期比0.6%減と下振れしたが、7~9月期は0.4%増とプラスに転じると予想している。