中国軍の近代化を抑え込む米国の包囲網

中国への投資を巡って、米中対立や台湾情勢など地政学リスクが大きな問題になっており、その行方を懸念する声が広がっている。経済や経営の視点から言えば、政治と経済、もっと言えば政府の行動と企業の行動は別次元のものであり、相互に影響を及ぼさない方がいい。多くの経営者や投資家たちはそう思うはずだ。

国際政治や安全保障の専門家として、筆者も政治の経済への影響は必要最小限に留めるべきだと思う。だが、国際情勢はより複雑化し、その境界線はより見えなくなってきており、必要最小限に留めるべき政治の経済への影響“度数”も、全く不透明なものになろうとしている。

その懸念事項の1つが、米中対立の行方だろう。今日、米中間では先端半導体分野で覇権競争がヒートアップしている。2022年10月、米バイデン政権は先端半導体が中国に軍事転用されるリスクを回避するため、同分野で対中輸出規制を開始した。また、2023年1月、先端半導体の製造装置で高い世界シェアを持つ日本とオランダに同調するよう呼び掛け、日本は同年7月下旬から先端半導体関連23品目で対中輸出規制を開始した。今後オランダも実行に移す。

軍の近代化を目指す中国の習政権は、先端半導体関連の輸出規制を第三国を巻き込む形で強化するバイデン政権への不満を募らせ、2023年8月からは半導体の材料となるガリウムやゲルマニウムの輸出規制を開始した。事実上の報復措置であるが、中国は米国と足並みを揃える日本への不満もいっそう強めている。

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