トランプ関税は実はドル高政策だった
- トランプ関税の趣旨は関税賦課と輸出・対米投資の増大
- 貿易収支の改善と対米投資によるドル上昇期待
- ドル安誘導も第二のプラザ合意も不必要
- ステープルコインはドルと米国債にポジティブ
トランプ関税の趣旨は関税賦課と輸出対米投資の増大
トランプ大統領による関税政策は、交渉によって、米国への輸入品に15%の関税賦課、輸入相手国による米国製品の購入と米国への投資を勝ち取ることを趣旨としていることが明らかとなった。これは、ドル高政策である。
貿易収支の改善と対米投資によるドル上昇

梅本 徹
トランプ政権の関税政策による目論見は、以下のようになる。
まず、関税は、ドル建て製品価格の15%引き下げによって、輸入相手国が負担する。この場合、米国の輸入が減少するが、関税賦課後の輸入価格が不変なため、国内物価も上昇することなく、米国経済にインフレは起こらない。
一方、関税収入によって、米国の財政収支が改善する。輸入相手国は、米国製品を無理やり購入させられるので、米国の輸出が増加する。その結果、米国の貿易収支が改善する。
それに加えて、対米投資の増大によって、ドルが上昇する。仮にドルが15%上昇すれば、輸入相手国はドル建て製品価格の引き下げによる損失をすべて取り戻すことができる。また、対米投資の増大によって、米国経済の活性化が期待される。

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ドル安誘導も第二のプラザ合意も不必要
このように、トランプ関税によれば、ドル安政策によって、米国の赤字ファイナンスをリスクに侵すことなく、貿易収支の改善が可能となるわけだ。むしろ、ドル高と交渉で勝ち取った対米投資によって、経常赤字のファイナンスが助長されよう。
ベッセント財務長官が語った通り、米国にとって、為替相場は市場で引き続き決定されればよく、強いドル政策は継続されることになるのである。ドル安誘導も第二のプラザ合意も必要ない。
ステープルコインはドルと米国債にポジティブ
また、GENIUS法(Guiding and Establishing National Innovation for US Stablecoins Act)の成立によって、米国債に担保されたステープルコインの発行が可能となった。その詳細はまだ不明だが、米銀などによる米国債担保のステープルコインの発行は、ドルと米国債にポジティブとなる公算が高い。
例えば、米銀が米国債を購入して発行するステープルコインは、他の暗号通貨に比べて圧倒的な信用力があるため、相応の需要が期待される。米銀にとっては、現在4%台の米国債を保有して金利ゼロのステープルコインを発行する取引は極めてプロフィタブルといえる。
また、Fed(連邦準備制度)が自己資本規制(SLR)を緩和すれば、米銀による米国債購入は自己資本比率に影響を及ぼさない。米銀は、米国債担保のステープルコイン発行ビジネスを積極化させる公算が高い。
トランプ政権による関税政策とGENIUS法、SLR緩和によって、ドルは上昇すると考えられる。