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「アンコンストレインド債券戦略」

J-MONEY2014年秋号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

金利リスクに備える「バンクローン」と
「アンコンストレインド債券戦略」

多くの機関投資家のポートフォリオ戦略のコアとなる「債券」の有力な選択肢として、バンクローンやアンコンストレインド債券戦略が脚光を浴びている。その背景などを関係者に聞いた。(工藤晋也)

株式を避ける機関投資家
債券がポートフォリオのコアに

 機関投資家関係者の間では、世界一の規模を誇る年金基金、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)の株式比率の引き上げが大きな話題になっている。2014年10月1日時点では依然として検討段階のままだが、GPIF改革の旗振り役だった塩崎恭久氏が厚生労働大臣に就任したことで、株式比率引き上げの流れが加速すると見られている。

 だが、GPIFの動きに追随し、株式比率を見直す機関投資家はほとんど見当たらない。年金基金であれば予定利率の引き下げや積立不足を母体企業のバランスシートに即時認識する会計基準の導入、金融法人であればバーゼル規制を意識して株式への投資を避ける動きの方が目立つ。

 透明性や流動性がひときわ重視されるようになったことでヘッジファンドにも一時の勢いはない。「低金利」「低スプレッド」「低ボラティリティ」というリスクオンの運用環境下にもかかわらず、機関投資家のリスク回避のセンチメントに変わりはなさそうだ。
 消去法的な選択も含めて、高い透明性と流動性を持ち、比較的に安定したパフォーマンスが期待できる債券が機関投資家のポートフォリオのコアに位置付けられている。

 とはいえ、債券にも一抹の不安がある。「2014年9月末時点で米国投資適格社債に投資したとしても1%あまりのスプレッドしか得られない。米国経済の景気回復を受けて、米金融当局がいつ利上げに踏み切ってもおかしくない状況になっている」とインベスコ・アセット・マネジメント外国債券部長の有村健一氏が指摘するように、歴史的な低金利を背景にしたスプレッドの低下と金利上昇リスクが債券のネックとされている。

国債を上回る利回り水準
金利上昇リスクに耐性

 こうした背景から注目を集めているのが比較的に高いスプレッドが期待でき、金利上昇リスクへの耐性を持つバンクローンだ。銀行などの金融機関が主に投資適格未満の企業に対して行う貸付債権で、相対的に高い利回りが得られる。「2014年9月末時点の利回りは6.2%と日本10年国債の0.5%、米国10年国債の2.5%を大きく上回り、エマージング債(ドル建て)の5.4%、米国ハイイールド債の6.5%とそん色のない利回りが得られる」と有村氏は説明する。

 債務不履行時における資産保全として担保が付与され、債券や株式より優先的に弁済を受けられる権利を有していることと、コベナンツと呼ばれる厳しい制約条項があるのもバンクローンの特徴だ。

 一般的に支払い金利は、30日から90日ごとに基準金利(LIBOR+スプレッド)が見直しされるため、「デュレーション(金利が変動した場合の債券価格の金利感応度)はほぼゼロに近い。金利が上昇すればLIBORも上がっていくので、金利変動にきわめて強い耐性がある」(有村氏)。

 実際に米国の政策金利の推移とバンクローンのリターンを見ると、①「1994年1月-1995年2月」、②「1999年6月-2000年5月」、③「2004年6月-2006年6月」の過去3度の金利上昇局面ではいずれもプラスになっていることがわかる(図表1)。

 トータルのリターンも安定しており、バンクローンの代表的なベンチマークである「CSレバレッジド・ローン・インデックス」の年平均騰落率(1992年1月-2013年12月、暦年)は6.7%となっている。

総勢40名の専任チームが優良な銘柄を絞り込む

 ただし、バンクローンといえども万能ではない。主に投資適格未満の貸付債権であるため、少なからずデフォルトの可能性がある。しかも私募形態で発行され、情報量が限られることから、デフォルトを回避するには個別銘柄の分析によるスクリーニングが欠かせない。

 「当社のバンクローン運用の強みは、2014年6月末時点の運用資産は309億米ドルとバンクローン運用大手の一角を占めるとともに、業界最大規模の総勢40名ものバンクローン専任の運用チームを抱えていることにある。バンクローン特化チームによるクレジット分析やバリュエーション分析というボトムアップ手法で個別銘柄を絞り込んでいく」と有村氏は話す。

 このボトムアップと、160名にもおよぶさまざまな債券市場をカバーする債券運用チームからのトップダウン見通しを融合させた運用アプローチも同社の強みだ。2008年のリーマン・ショックの時はマクロ経済分析に基づいて格付の低い銘柄を減らし、マーケットの回復とともにその比率を増やすなど、ブレーキとアクセルを踏み分けることで安定したリターンを実現している。

金融機関も投資可能な「アジアバンクローン」

 一般的なバンクローンに投資するファンドは相対的に信用力の低い投資適格未満企業への貸付債権であることから、行内指針に抵触して投資できない金融機関が多い。

 日興アセットマネジメントでは金融機関向けのバンクローンとして、東南アジア最大の金融グループであるDBSグループホールディングスの中核銀行であるDBS銀行とともに「アジアバンクローン」に投資する商品の開発を検討中。投資対象を投資適格以上の企業向けの貸出債権にすることで、これまで行内指針によって投資できなかった金融機関でもバンクローンに投資できるようにする。

 欧米のバンクローンはセカンダリー市場が発達し、市場規模も大きい。対するアジアバンクローンは「セカンダリー市場はほとんどないに等しい状態で、市場規模も小さい。欧米のバンクローンと比較して、流動性の劣るアジアバンクローンへの投資を可能にする商品を開発し、融資の代替としての活用を金融機関に提案する」と話すのは同社機関投資家営業部長の絵面功二氏だ。

 さらに流動性プレミアムなどによって魅力的なスプレッドが期待できる。「債券での比較になるが、例えばトリプルAを付与されたシンガポールの政府系機関であれば、欧米のシングルA企業と同程度の水準のスプレッドになる」と同社シニア プロダクト マネージャーの草分隆幸氏は説明する。

 日本国内では預貸率が60-70%程度と低迷しているが、シンガポールやタイといったアジアの国々では80%から100%を超える預貸率となっており、相対的に旺盛な資金需要がある(図表2)。「ポートフォリオの分散化という意味合いだけでなく、アジアバンクローンを通じて資金需要の強いアジアの国々とのリレーションが深められ、融資の拡大にもつながるWIN-WINのスキームといえるだろう」と絵面氏は話す。

 同社が開発するアジアバンクローンに投資する商品スキームには、それぞれの投資家のニーズにより、ファンド形式とSPC(特定目的会社)形式の2タイプが予定されている。「いずれも2014年中の商品化を目指し、開発を進めている」(草分氏)という。

制約がない運用 多彩な債券の組み合わせも

 バンクローンと同様に「金利上昇リスク」と「スプレッドの低下」への対策としてにわかに脚光を浴びているのが「アンコンストレインド債券戦略」だ。「Mercerのデータによると現在登録されているアンコンストレインド債券戦略のうち、2000年以前の運用実績を有するものは6つしかないが、10年後の2010年以前の運用実績を有するものは35に達する」と有村氏は説明する。

 アンコンストレインド債券戦略は、「アンコンストレインド(制約のない)」という名の通り、「ベンチマークに追随しない」「デュレーションや資産配分を柔軟に調整できる」など、運用の自由度が高いのが最大の特徴だ。金利上昇局面ではデュレーションを短くすることで債券価格の下落も軽減できる。

 急速にプロダクトが増えたのは「金利上昇リスクへの備えとイールド(利回り)の確保が大きな理由」とマニュライフ・アセット・マネジメント取締役、債券運用部長の津本啓介氏は指摘する。

 「国内年金基金の平均予定利率は2.5%程度なので、単一のアセットクラスでのキャピタルゲインを積み重ねて運用目標の達成を狙うよりも、インカムゲイン重視の安定運用を中心に据えることでよいのではないか。アンコンストレインド債券戦略であれば、バンクローンやハイイールド債券、エマージング債券などへの分散によるイールドの確保も可能」(津本氏)

 運用担当者のスキル次第では投資機会を的確にとらえることができ、「結果的にイールドの確保にもつながる」と話すのはシュローダー・インベストメント・マネジメントのプロダクト・マネジメント部長、福澤基哉氏だ。

 昨今はガバナンスの厳格化により、機関投資家の運用には高い透明性や流動性が求められるようになったが、「アンコンストレインド債券戦略の投資対象はいずれも債券であり、基本的に透明性と流動性は高い。資産運用委員会などへの説明がしやすいのも支持されている理由といえるだろう」と福澤氏はいう。

「体制」「分散」「機動性」を軸に
安定した収益の追求目指す

 ただし、制約がないというのがアンコンストレインド債券戦略の定義であることから、運用会社によって中身は大きく異なる。シュローダー・グループの「ストラテジック・ボンド戦略」の特徴は、「体制」「分散」「機動性」を運用の軸にあらゆる投資環境下で安定した収益を追及することだ。

 例えば「体制」では、同グループは世界の先進国と新興国の主要地域にグローバル拠点を構えており、各拠点の意思決定者が集い、今後の投資の方向性を決める「QIF(四半期投資フォーラム)」などを通じて、マクロ経済の予測の確度を高めている。
 実際にストラテジック・ボンド戦略を運用するチームには金利や通貨、クレジット、テクニカル分析などに精通したスペシャリストをそろえ、それぞれの視点で投資アイデアを出している。

 2004年に運用を開始し、過去5年の年率リターンは5.51%(米ドルベース、2014年9月末)という実績を残している。「運用開始から継続的に優れたパフォーマンスを残してきたが、債券市場の環境変化を見越して3年前に運用チームのさらなる強化に取り組んだ。チームヘッド兼リード・ポートフォリオ・マネジャーとして招聘したボブ・ジョリーは、入社以前よりアンコンストレインド運用を長く手掛けてきた実績を持つ。その結果、より高いパフォーマンスを実現している」とプロダクトマネジャーの中村知弘氏は胸を張る。

 「分散」では金利や通貨、クレジットといった超過収益の源泉だけでなく、投資ホライズン(運用の時間軸)も分散する。金利やクレジットにリスクが集中することを避けるとともに、「3カ月-1年」と「3カ月未満」という時間軸の異なる2つのアプローチによって収益の安定性を高めている。

 「例えば静かなマーケットの時は時間軸を3カ月-1年に設定し、マーケットが荒れそうな時は3カ月未満に設定している。そして『機動性』として、刻々と変化する市場の収益機会にあわせて機動的なリスク配分を行っている。これにより、安定したリスク・リターンを実現している」(中村氏)

市場環境に応じて
アクセルとブレーキを踏み分ける

 インベスコ・アセット・マネジメントが提供するアンコンストレインド債券戦略の強みは4つある。まずは運用を担当するインベスコ・パーぺチュアル社は、運用資産残高745億ポンド(約12.9兆円)と英国最大級の資産運用会社の1つであること。加えて、債券運用チームを率いる2人の共同ヘッドはいずれも25年超の経験を有しており、リーマン・ショックやITバブル、アジア通貨危機などの危機をいくつも乗り越えてきた。

 実績豊かな共同ヘッドが率いる同社のアンコンストレインド債券戦略の実績も申し分がなく、19年という長いトラックレコードを誇る。そして「自由度の高いアクティブな運用」という強みも持つ。

 「リーマン・ショックでリスクが高まった時は安全資産を増やし、マーケットが落ち着いてきたら逆にリスクを取るなど、当社では市場テーマに沿って数年タームでアクセルとブレーキを踏み分けている。これほどアクティブに動いているアンコンストレインド債券戦略はないだろう」と有村氏は自信をのぞかせる。

イールドを意識した戦略
充実のリサーチで個別銘柄選定

 
 マニュライフ・アセット・マネジメントの「ストラテジック・インカム戦略」は、各債券の魅力度は市場環境によって異なるという考えのもと、投資適格社債やハイイールド債券、エマージング債券など、さまざまな債券に分散投資し、市場見通しにあわせてアロケーションを機動的に変えている。

 昨今では金利上昇のリスクが懸念されているが、「国内金利はすぐに大きく上がるとは思えない。収益機会の小さい金利戦略に重きを置くより、イールドを意識して利回りの高い債券の配分を厚くし、利回りの向上を目指す。金利上昇懸念に対しては、バンクローンの配分を増やしている」と津本氏は明かす。

 金利を過度に意識しないのは、金利以外にも収益の源泉があるからだ。「グローバル債券市場では、金利以外に信用力、流動性や為替など、多様なリスクをいかに取るかがアンコンストレインド債券戦略運用のポイントになる。ただし、セクターアロケーションだけでは運用はうまくいかない。通貨選択に加えて、複数のセクターにわたる個別銘柄の選択が重要になる」と津本氏。

 つまり個別銘柄選択がパフォーマンスを左右することになる。その鍵を握るのが同社のリサーチチームだ。豊富な人員に加え、10-20年超の経験を有するベテランも多く、「3名構成のポートフォリオ・マネジメント・チームがリサーチチームをうまく活用する体制が機能している。とくに、リーマン・ショック後の2009年度にはバークレイズ・キャピタル・グローバル総合指数(含む日本)に対して24.30%の超過収益率(米ドルベース)を残した」(津本氏)という。

 今回紹介したもの以外にもさまざまなアンコンストレインド債券戦略が存在する。そのなかから選ぶには、「運用実績が重要な目安になる」と中村氏は話す。3、4年程度の運用実績しかないアンコンストレインド債券戦略は現在の低金利、低ボラティリティの局面しか経験しておらず、「金利上昇局面やボラティリティが高まる局面に耐性があるか分からない」というのがその理由だ。

 津本氏の見方も似ており、「リーマン・ショックなどの危機時の投資行動が大きな判断材料になる。セクターアロケーションに限らず、どのような個別銘柄選択だったのかを見るべきだ」と話す。

 「スプレッドの低下」と「金利上昇リスク」によってクローズアップされるようになったバンクローンとアンコンストレインド債券戦略。どのタイミングで金利上昇に反転するのか、ボラティリティは高まるのか判然としないなか、バンクローンとアンコンストレインド債券戦略は運用の安定性を高める有効な手立てになるのではないだろうか。