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「かゆいところに手が届く」邦銀

J-MONEY2014年秋号 注目記事

グローバル・キャッシュ・マネジメント

取扱通貨と支店網が充実した外資系銀行
「かゆいところに手が届く」邦銀

企業の国際的な資金管理への意識が高まるなかで、国内外の金融機関は高度化するニーズにどのように応えていくのか。各金融機関の取り組みを紹介する。(杉浦直洋)

 グローバル・キャッシュ・マネジメント(GCM)における邦銀の強みは、融資などを通じた長年のビジネスパートナーとして、日本企業のビジネスを熟知していること。GCMにとどまらない、周辺のあらゆる金融サービスを含めた総合的なアドバイスを提供できること。そして、日本ならではの「かゆいところに手が届く」サービスのきめ細かさだ。

シンガポールに新部署を設置

 みずほ銀行では、アジアを中心に高まるGCMへのニーズや貿易取引に関するファイナンスなどに応えるため、10月に「アジアトランザクション営業部」をシンガポールに設置。アジアや東京からトランザクションの専門知識を持った人材を集結させ、23人の体制でスタートした。

 同部の役割について、トランザクション業務部長の富永直彦氏は「これまでは個別のサービスごとに別々の担当者が対応に当たっていたが、新体制では資金管理に関する複数のニーズに対して、1人の担当者が幅広い知識と専門性をもって対応できるようになる。お客さまの海外展開ステージに応じたさまざまな商品やサービスを提供できる部署を目指す」と説明する。顧客ニーズの段階に合わせてGCMの各種プロダクトを組み合わせながらテーラーメードのソリューションを提供できるのが強みだ。

 システム導入後のサポートも重視している。「部内に専門のヘルプデスクを設け、お客さまからの相談にきめ細かく対応するとともに、アフターケアに関するノウハウを専門的に集約してサービスのさらなる強化に役立てていく」(富永氏)

 同行はASIA MONEY誌の2014年キャッシュマネジメント調査※で1位を獲得。海外向けインターネットバンキング「みずほグローバルCMS」はさらなる利便性向上のため、今年3月のリニューアルに続き、10月にもレベルアップを実施、名称も「みずほグローバルe-バンキング」に改めるなど顧客へのサービス提供力向上に余念がない。富永氏は今後、これらの取り組みをアジア全体からさらには欧米にも広げ、顧客基盤についても日系企業から外国企業まで拡大することを挙げている。「海外のお客さまとの関係をより一層深めるべく、GCMに携わるスタッフの質、量ともさらに充実させていきたい」と富永氏は力を込める。

※日本におけるキャッシュ・マネジメント・サービス顧客満足度企業規模別ランキング(大規模企業部門)1位

資金の「見える化」を実現

 GCMのニーズは日本国内の本社以上に、アジアの子会社の方が強いことが多い。地域ごとの金利差が大きく、規制もまちまちなため、資金管理のシステム化による効果が相対的に高いためだ。三井住友銀行は、2013年からアジアを中心に、グローバル財務管理システム「SMAR&TS Treasury」を展開。東京、シンガポール、香港、タイ、上海、シドニーの6つの拠点で、こうしたニーズに対応している。

 トランザクション・ビジネス本部長の石塚敏夫氏は、GCMの意義について「企業におけるキャッシュの動きは、いわば人間の血液。常にその動きを注視しながら、きれいに流れるように管理する必要がある。キャッシュは経営課題や問題点がいち早く現れる先行指標でもあるため、とくにグローバル化を進める企業にとっては、いかに資金の『見える化』を実現するかはきわめて重要だ。GCMは世界標準のガバナンスを実現する手段でもあり、キャッシュを媒介としたビジネスの『共通言語』でもある。日本企業のグローバル展開にとって、ますます欠かせないものになる。10月には外為関連の事務系子会社を銀行本体と統合し、オペレーション面をサポートする体制も強化した」と説明する。

 三井住友銀行は、GCMの機能面の整備にも力を入れている。グローバル決済業務部長の小野潤一郎氏は、具体的なサービスとその強みの一例として親子ローンの申請・認可・期日・金利機能の提供を挙げ、「プーリングやネッティングなどに加え、1つのシステムでさまざまな情報管理ができる使い勝手の良いシステムを、お客さまが軽量かつ廉価に導入できることも強みだ」と語る。

対話から顧客ニーズを具現化

 三菱東京UFJ銀行は、顧客との対話を何より重視する。トランザクションバンキング部業務推進グループ次長の梅野真氏は「顧客の商流に合わせたソリューションの実現はもちろん、コストとメリットが見合うかどうかをじっくり考える必要がある。顧客との対話を続けながら、ときには1年以上かけて慎重に準備を進めていく。例えば、顧客が最先端のシステムを求めても、それが必ずしも最適解にならない場合がある。真のニーズを見極め、オーダーメイドのサービスを提案する」と話す。

 GCMの導入を本社で決定しても、海外の拠点との意思疎通が図りづらい場合などは、日本から担当者が現地に説明に行くこともある。

 同行のネットワークは世界40カ国以上、1100以上の拠点があり、どの地域のニーズにも対応できる体制を整えている。「キャッシュ・マネジメントの担当者は全員海外経験があり、海外の企業が困る場面などが現場感覚としてわかるから、きめ細かいケアが可能となる。こうした『日本品質』も我々の強みだ」と、業務推進グループ調査役の三瀬修平氏は胸を張る。

 M&Aのような大きな資金が必要な場面では、三菱東京UFJ銀行の総合力がより生かされる。業務推進グループ上席調査役の倉橋久氏は「買収案件に関連する資金管理をできるだけ負担をかけずに行えるよう、資金提供とプーリングの両方をスムーズにできる仕組みも提供できる。通り一辺のサービスではなく、各社ごとのニーズに合ったサービスを開発できる体制があるし、そのための十分な投資も行っている」と説明する。

為替の強みをGCMに生かす

 海外に幅広い支店網を持つ外資系銀行は、カバーする地域や通貨の豊富さが特徴だ。ドイツ銀行のグローバル・キャッシュ・マネジメント・システム「db-direct internetc」は、世界で数万社による利用実績がある。

 「日系企業のGCMのニーズはプーリングが中心だが、欧米企業はそこから一歩進んで、送金や入金など決済の効率化を進めている。欧米のグローバル企業は『シェアードサービスセンター』や『ペイメントファクトリー』を設置して、グループ内部の業務や決済の一元化を図っており、銀行のGCMにはこうした動きを金融面で支えるための対応が求められている。貿易に基づくサプライチェーンファイナンスなど、より高度な資金の一体管理を求めるケースも増えている。日本でも大企業の一部でこうしたニーズが出てきている」と指摘するのは、トランザクションバンキング部のキャッシュマネージメントグループ・グループ長、長谷川真琴氏。

 ドイツ銀行のGCMの特徴は、グローバルで共通のシステムを使えること。規制の変化にいち早く対応するため、世界各国で規制当局との関係を密にしているのも特徴だ。さらに、ドイツ銀行グループが最も得意とする為替においては、約130種類の通貨を扱っており、システム上で送金や決済を行える。

 信託・エージェント業務を絡めたサービスも同行ならでは。ドイツ銀行のグローバル・トランザクション・バンキング統括部長に就任したピーター・マシオン氏は「在日外銀で信託業務を扱うところは少ない。信託のほかにも投資銀行部門とも連携して、M&Aなどに必要な資金をタイムリーに融通するためのさまざまな仕組みを持っている」と説明する。

今後の海外展開にも即応できる

 「GCMには財務効率の向上だけでなく、ガバナンスの強化や不正の抑止という効果も期待できる」と語るのは、シティバンク銀行のトランザクション・サービス部門、トレード・アンド・トレード・ソリューションズ本部長の副島弘行氏だ。

 「シティバンクはプーリング、ネッティングから支払業務の集約まで安価で提供でき、それぞれの地域で現地のスタッフが当局からの許可取得も含めてきめ細かくサポートする」(副島氏)

 ラテンアメリカ地域やアフリカ諸国に強いのも特徴。さまざまな国の決済制度に加盟しており規制が強い国の決済情報にも精通している。同行のシステムがカバーする国は100カ国に及び、利用者は共通のユーザーインターフェイスで資金管理を行うことができる。

 「グローバルな競争が加速し、国境を越えたサプライチェーンやM&Aも増えていくなかで、顧客の既存の海外拠点網だけでなく今後の海外展開にも即応できるGCMのシステムインフラを導入しておくことが肝要。特に途上国では独特の決済慣行や規制などのため、思わぬ障害にぶつかることもある。豊富な知識と経験に基づいたシティのソリューションを導入することにより、財務部門の業務負荷の軽減や規制への対応、ガバナンスの強化といった点でも確かなメリットを感じていただけるはずだ」と副島氏は語る。