Advertisementアクサ・インベストメント・マネージャーズ
TOP > 注目記事 > 世界的に広がる“金利低下”懸念から
新しい債券への期待感が高まる

J-MONEY2013年冬号 注目記事

機関投資家のポートフォリオ戦略

世界的に広がる“金利低下”懸念から
新しい債券への期待感が高まる

国内では安倍首相が掲げる「公共事業」「金融緩和」「成長戦略」という3本の矢を軸とした「アベノミクス」への期待感が膨らんできた。世界に目を転じると「財政の崖」問題の回避で米国経済の復調が現実味を帯び始めている。しかし、機関投資家の多くはいまだ運用難という名の迷路からなかなか抜け出せないでいるようだ。迷路からの脱出の道しるべとなる運用アイデアを掘り起こすため、それぞれの運用機関に昨今の傾向や主力の運用商品などを聞いた。(工藤晋也)

債券――先進国債券に代わるインカム系のアセットクラス

 今回の取材で頻繁に登場したキーワードが「金利の低下」だ。欧州債務問題などによって世界経済が混迷を深めるなか、日本や米国の金融緩和政策によって生み出された大量の投資マネーが、安全資産と目される主要先進国の国債市場に流れ込んだ。その副作用として世界的な金利低下が広がっている。

 金利が低下すれば債券価格が上昇するため、収益の面ではメリットがある。問題は、現状の主要先進国の国債金利水準がほぼ下限にあることだ。万一、金利が上がった場合、主要先進国の国債を保有していることが機関投資家の大きなリスクとなる。こうした懸念から「金利低下」がキーワードとして取り上げられたのだ。

 ピムコジャパンリミテッドの年金担当シニア バイス プレジデントの井上真司氏も金利低下の問題について、次のように指摘する。「先進国国債の保有目的のひとつに、保有株式に対する分散効果が挙げられる。だが、世界的に国債金利が低迷しているなか、これ以上の金利低下の余地が限られてきていることから、これまでのような分散効果が期待できなくなってきている。逆に先進国国債の金利が上昇すれば価格下落により損失を被る恐れもある。この先進国国債の金利上昇リスクが機関投資家の昨今の懸念材料だ。特に年金基金は、債券インデックスに沿って投資するいわゆるパッシブ運用で、金利上昇によって債券価格が下落する影響を受けざるを得ない」

 かつてないほどの超低金利局面で、機関投資家は次なる一手を模索している。どのような一手を講じているのか。ニューバーガー・バーマン代表取締役社長、マネージングディレクターの大平亮氏は「世界的な低金利環境下において、先進国の国債のみに投資しても利回りは限定的。年金基金などは年金給付の資金に対応する必要があり、先進国の国債のみを対象とした運用戦略に代わる相対的に高い利回りのインカム系のアセットクラスに投資する運用戦略を求める動きがある」と分析する。

 機関投資家のインカム志向に合致した運用戦略のひとつが、ショートデュレーション・ハイイールド債券戦略だ。「機関投資家からの問い合わせも急速に増えている」(大平氏)という。

 アクサ・インベストメント・マネージャーズの執行役員 投信・投資顧問部長、大津博道氏も「半年前からショートデュレーション・ハイイールド債券の引き合いが強まっている」と手応えを感じている。

 ショートデュレーション・ハイイールド債券とは、デュレーション(償還までの平均残存期間・債券価格の金利感応度を示す指標)の短いハイイールド債券を投資対象にした債券のこと。一般的に利回りに優れる代わり、リスクが高くなるハイイールド債券のリスクを限定的にしたアセットクラスだ。

 「先進国債券より相対的に高い利回りを確保するとともに、金利上昇によるリターンのブレを抑えられることから、ショートデュレーション・ハイイールド債券が投資先として選ばれている」と話すのは、アライアンス・バーンスタイン債券運用調査部、シニア・ポートフォリオ・マネージャーの日暮太一氏。

 「ヘッジファンドなどのように複雑な仕組みではなく、デュレーションの短いハイイールド債券という仕組みのシンプルさ」(大津氏)の点からも、ショートデュレーション・ハイイールド債券が新しいインカム系のアセットクラスとして注目されている。

 ハイイールド債券より高い信用格付けを持ち、より手厚い担保が保証されたバンクローンも「数年前までは関心も薄かったが、2012年に入ってからニーズが急速に高まった」と、アライアンス・バーンスタイン、プロダクト・マネジメント部の債券担当ディレクターである横谷宏史氏は解説する。

 これまで未整備だった法制度が整い、決算報告書などのディスクロージャールールが定まってきたことから、「2012年の後半からはエマージング社債も人気を集めている」(横谷氏)

割高傾向の先進国債券
異なる収益源泉を持つ債券も

 利回りの低い先進国債券を避け、ショートデュレーション・ハイイールド債券やバンクローン、エマージング社債といったアセットクラスに資金が向かう一方で、より安全志向を重視する動きもある。

 アライアンス・バーンスタイン債券運用調査部のシニア・ポートフォリオ・マネージャー、大森夏生氏は「欧州債務問題を経てイタリアやスペインなど一部の先進国国債が株式のようにボラティリティが激しくなった。投資家のなかには先進国国債のうち、より信用力の高い債券に投資する動きが出ている」と話す。

 しかしながら、国の信用力を正しく見極めるのは簡単なことではない。市場が最も注目するのが格付機関による格付けだが、投資の目安になるという役割から格付判断には慎重さが求められる。その結果、格付けの変更が実態の変化の後追いになる場合もある。これに対して同社では独自の格付基準を設けている。「当社の格付けはあくまでも社内的なもので、実態の変化を先取りする形で判断している。また、適切な銘柄に投資し、リターンを出すことが前提の格付けになっており、一般的な格付けよりコンサバティブなものだ」と大森氏は語る。

 しかし、投資対象を高格付けの債券に絞ると2つのデメリットがある。ひとつは、超低金利の環境下で高格付けの債券に投資することで、さらに利回りが低くなってしまう。もうひとつは、より信用力の高い債券に投資マネーが集中しているために「ドイツやオーストラリア、カナダなど、トリプルA格の国債がとくに相対的に割高になっている」(横谷氏)ことだ。

 金利低下によって主要先進国国債の魅力が低下する半面、依然としてマーケット環境に不透明感が漂うことから、債券そのものへの期待は根強い。こうした機関投資家のニーズに応えるため、さまざまな収益の源泉を持った債券を各運用機関では用意している。そのいくつかを紹介しよう。

①キャットボンド

 アクサ・インベストメント・マネージャーズが提供しているのが、保険会社系の運用会社ならではの「キャットボンド運用戦略」だ。キャットボンドとは、地震や台風といった大規模災害の発生に伴う損失リスクを証券化した保険リンク証券の一種。3~4年前から機関投資家の間で普及し始めてきた。

 「キャットボンドは大規模災害という保険リスクを証券化しており、アクサ・インベストメント・マネージャーズが保険会社グループとして世界有数のアクサ・グループの一員として積み上げてきたデータベースやモデルをフルに使えるのが強み。株価や景気、金利などの市場の動きと相関性が低く、ポートフォリオに加えることでリスクリターンの改善に期待できるのが特徴だ」と大津氏は強調する。

②ショートデュレーション・ハイイールド債券

 「年金基金や金融法人、生命保険ともに人気を集めるショートデュレーション・ハイイールド債券運用戦略では、アクサ・インベストメント・マネージャーズは草分け的な存在だ。米国のショートデュレーション・ハイイールド債券運用戦略による運用資産額では最大級の規模を誇る」と大津氏は自負する。2011年にはユーロ建て、2012年にはエマージング通貨建てのショートデュレーション・ハイイールド債券運用戦略も提供し始めた。

 アライアンス・バーンスタインもショートデュレーション・ハイイールド債券に力を入れる。「当社ではダブルB格に注目している。投資不適格であるダブルBと、投資適格であるトリプルBの間には大きな断層がある。トリプルBからダブルBに格下げされただけで、デフォルト率が急激に上がると思われがちだが、データで見る限りダブルBとトリプルBの間にそれほどの差はない。むしろダブルBとシングルBの間でデフォルト率は急激に上がる。ダブルB格とは実にアノマリー(合理的に説明できない経験則)のある格付けといえるだろう」と日暮氏は解説する。

③ストラテジックインカム(米国マルチ・インカム)戦略

 ニューバーガー・バーマンも投資家の株式から債券戦略へのニーズの流れを受け、インカム系の運用戦略としては、ショートデュレーション・ハイイールド債券に加え、バンクローンやメザニン債などを投資対象とした運用戦略を提供している。なかでもストラテジックインカム(米国マルチ・インカム)戦略への注目度は高い。これは米国債や政府機関債、米国投資適格社債、ハイイールド債、モーゲージ証券、エマージング債、バンクローンなど、多様なアセットクラスを投資対象にし、これらの幅広いアセットクラス間で機動的に組み入れ比率を変更することで、長期的に安定した高い利回りを目指す戦略だ。

 「ひと口に債券系のアセットクラスといっても収益の源泉はさまざま。2008年のリスク・オフの局面においては米国債やモーゲージ証券のパフォーマンスが比較的に優れており、リスク・オン、リスク・オフそれぞれの局面に応じてリターンに差が生まれる。ファンドマネージャーが今後の見通しに基づき、各アセットのリスク管理をしつつ、機動的なアセット・アロケーションを実施し、徹底したボトムアップによる個別銘柄を厳選していくことで安定したインカムと相対的に高い収益を狙って運用している。いまやストラテジックインカム戦略は日本のみならず、世界的にも評価が高まっており、運用資産はグループ全体でこの1年間で倍以上に拡大した」と大平氏は語る。

④債券特化型オルタナティブ戦略

 債券運用に定評のあるピムコも、従来とは異なる新しい仕組みの商品を提供している。代表的なのが債券特化型のオルタナティブ戦略だ。

 オルタナティブ戦略は、株式の代替として、株式並みのリターンと株式との低い相関性という期待のもと、多くの投資家が投資をしてきた。「だが、2008年のリーマン・ショック時に大幅に落ち込むなど、株式との低相関性という意味では期待はずれに終わった」(井上氏)

 そこでピムコでは、投資家が本来オルタナティブ戦略に望んでいる株式並みのリターンと株式との低相関性を両立する債券を中心にしたオルタナティブ戦略を提供している。

 そのひとつは、金利や為替の「マクロ戦略」、社債やモーゲージ債などの「セクター戦略」、市場にゆがみが生じた場合に裁定取引機会を捉える「相対価値戦略」の3つを組み合わせたオルタナティブ戦略だ。さらに、社債や資産担保証券などの個別債券のロングポジションとショートポジションを組み合わせる戦略も提案している。

 「一昨年夏の米国債格下げ、昨年春の欧州周縁国問題の深刻化などで株式が下落した局面でも、相対的に安定したパフォーマンスを示した」(井上氏)

株式――有効な銘柄選定で高いパフォーマンスを実現

 世界的な低成長の長期化などから株式市場全体の期待リターンが低下する一方で、マーケットボラティリティは高いことなどを背景に、機関投資家の間で株式離れが進んでいる。しかし、「なかには魅力的な個別銘柄もある。有効な銘柄選定を行えば、中長期的に株式市場全体を上回る高いパフォーマンスを追求することも可能」(井上氏)と、ピムコでは株式運用戦略も用意する。

 一例が「ディープバリュー戦略」だ。この戦略は市場価格とピムコが算出した本源的価値との間に3割以上のギャップがある割安な銘柄に投資。その本源的価値の回帰によるキャピタルゲインを狙う。また、株式市場全体の大幅下落に対する備えとして「テールリスクヘッジ戦略」を組み込んでいるのも特徴だ。

 そして配当に着目した戦略が「高配当株式戦略」。「超低金利環境のなか、インカム志向の強い機関投資家は増えており、需要は高い。我々は配当利回りが高いだけでなく、配当が将来にわたり成長していくことも重要であると考えている。特に米国で一部の高配当銘柄はすでに割高になってきている。グローバル株式投資を通じて、高配当かつ高配当成長が見込まれる割安銘柄を厳選することで中長期的に高いパフォーマンスが期待できるだろう」と井上氏は話す。

その他――新しいスマートベータを開発
カスタマイゼーションのニーズ強まる

 アセットクラス以外でのトレンドもある。これまで運用の世界では、時価総額加重ベースのインデックスが主流だった。ところが、時価総額加重ベースのインデックスの場合、大型株や人気株など時価総額の多い銘柄に投資ウエイトが偏ってしまう傾向があった。債券の場合も同様で、時価総額加重ベースインデックスでは債務残高の高い、いわゆる借金の多い債券に集中するのが悩みだった。

 こうした課題に対して運用の世界では、時価総額加重ベースインデックスの見直しが進んでいる。その結果としてポートフォリオ内のリスクが最小になるように分散投資する「最小分散ポートフォリオ」や、均等に投資する等ウエイト(均等加重)インデックスなどの新しいインデックスの開発が進んできた。

 しかしながら、最小分散ポートフォリオであれば、ポートフォリオ内のリスクは抑えられるものの、リターンに期待できなかったり、逆にリターンはあるのにリスクが高いために排除されるなど、決して問題がないとはいえなかった。

 アクサ・インベストメント・マネージャーズでは、2012年に社債を使ったスマートベータ運用戦略を開発。このスマートベータ運用戦略はある一定のルールのなかで国際分散し、厳選した200銘柄をスクリーニングして等ウエイトするという仕組みだ。「社債を使う理由は昨今、国債より社債の方が安全性が高いと考えられるケースもあるから。スクリーニングも単純なのでバックテストの信頼性が高いことも特徴だ」と大津氏は語る。

 一方で、「個別のソリューションやカスタマイゼーションへのニーズが銀行や生命保険といった金融法人を中心に強まっているのも近年の傾向だ。バーゼルIII対応など厳格化する金融規制を背景に、流動性や投資対象を制限するといったきめ細かい対応を必要とするカスタマイズされたポートフォリオを求める金融法人が増えている。それぞれの金融法人ごとのニーズが多様化し、それに対応するカスタマイズされたポートフォリオの提案を運用会社に求める動きが顕著になっている」と大平氏は解説する。

 伝統的資産からオルタナティブ資産へのシフト、ホームバイアスの改善などは引き続き進んでいるものの、今回の取材で明らかになったのは、金利低下による国債の見直しだ。とくに下限まで金利が低下し、逆に金利上昇リスクが高まっている円債への対応に頭を悩ませている機関投資家は多い。運用難の改善につながるようなアイデアが提供できるのか──。それぞれの運用機関の力量がいま試されようとしている。