2023年2月の消費者物価上昇率は大幅鈍化

角田 匠(信金中央金庫)
信金中央金庫
地域・中小企業研究所
上席主任研究員
角田 匠

全国消費者物価指数に先行して公表された2023年2月の東京都区部の指数は、変動の大きい生鮮食品を除くベース(コア消費者物価)で、前年同月比3.3%の上昇と1月の4.3%の上昇から大幅に鈍化した。

物価上昇率が鈍化した主因は政府による電気・ガス料金の負担軽減策によるものだ。2023年1月使用分から電気・ガス料金が引き下げられ、検針ベースとなる2月の物価指数に値下げ効果が反映された。消費者物価ベースの電気代は、2023年1月に前年同月比で24.6%上昇していたが、2月は同1.7%の下落に転じた。

この結果、ガス料金とガソリン・灯油を含めたエネルギー品目のコア消費者物価への寄与度は、2023年1月のプラス1.4ポイントから2月にはプラス0.3ポイントに縮小している。

2023年3月24日に発表される2月の全国消費者物価の上昇率も大幅に鈍化する見通しである。全国ベースのコア消費者物価は、2023年1月の前年同月比4.2%の上昇から2月には3.1%の上昇に鈍化すると予測している。

1月のコア消費者物価の前年比を1.2ポイント押し上げていたエネルギー品目の寄与度が2月にはゼロポイントに縮小するとみている(図表)。

【図表】全国コア消費者物価(生鮮食品を除く総合)の前年同月比と寄与度
全国コア消費者物価(生鮮食品を除く総合)の前年同月比と寄与度
出所:総務省統計局「消費者物価指数」

食料・エネルギーを除く総合指数の伸びは加速

2023年2月の消費者物価上昇率は鈍化したものの、インフレ圧力が後退したわけではない。米欧でコア消費者物価として用いられる「食料・エネルギーを除く総合指数」でみると、2023年2月の東京都区部の指数は前年同月比1.8%の上昇と1月の1.7%から加速している。

品目別では紙製品の値上げが目立った。2月はティッシュペーパー、トイレットペーパー、おむつ、生理用品の物価が大きく上昇している。食料・飲料といった必需品から日用消耗品などへ値上げの動きが広がっている。

賃上げ機運の高まりを背景に補習教育費にも値上げの動きがみられる。2月は中学受験塾など小学生向けの補修教育の物価指数が上昇しており、4月には中高生向けの補習教育費も値上げとなる見通しである。

都区部のデータを基に試算した全国ベースの「食料・エネルギーを除く総合指数」の前年同月比上昇率は、2023年1月の1.8%から2月には2.0%へ加速すると予測する。

2023年夏頃までは高めの物価上昇が続く

当面も多くの品目で値上げの動きが続く。2023年3月18日からはJR東日本、東京メトロ、関東の私鉄の運賃が引き上げられるほか、新年度入り後の4月1日からは関西、中部のJR、私鉄各線の運賃も引き上げられる。3月から4月にかけて鉄道運賃の上昇が物価指数を押し上げよう。

食品の値上げラッシュも続く。これまでの原材料コストの高騰を段階的に価格転嫁しているためだ。物流費や容器代などのコスト増もあり、2023年4月にかけて多くの品目で小売価格の引き上げが予定されている。

電気料金は政府による補助金効果で引き下げられたが、大手電力10社中、中部、関西、九州を除く7社が規制料金の値上げを申請している。審査が難航していることから予定していた2023年4月からの値上げは先送りされる公算が大きいが、夏頃までには規制料金の改定が認可される見通しだ。政府による負担軽減策が相殺される格好になり、コア消費者物価の上昇率は再び加速する可能性がある。

2022年に比べると原油価格や穀物市況が軟化しているため、物価上昇率は2023年後半にかけて徐々に鈍化していくと想定しているが、夏頃までは高めの物価上昇が続くだろう。