TOPインタビュー グローバル・サステナビリティ戦略で持続可能な将来とリターンの両立を推進
2020年には、SDGsにリンクした新長期目標を追加導入する
なぜ、そこまで力を入れるのか。
土岐 企業を調査して選別投資する運用会社だからこそ、企業側の考え方や行動に影響力をおよぼせる。良いパフォーマンスを提供して顧客の富を保全・増やすことに加えて、投資家である立場を活用して、持続的な世界をつくることにも貢献できるのが我々運用会社だ。
サステナビリティ戦略および関連するチームやシステムへの投資は、我々の強い意志の反映だ。この取り組みを推進することで、顧客に持続可能なリターンを提供できると考える。戦略の進ちょくは定期的に開示する。2020年には、3つのEに関連し、かつ特定のSDGs(持続可能な開発目標)にリンクした新たな長期目標を追加導入する予定だ。2016年発効の温暖化対策の枠組み「パリ協定」や、2015年に国連サミットで採択されたSDGsが求める将来のために、今こそ金融界が断固とした役割を果たすべきと考える。
GSSの哲学に賛同して投資している日本の機関投資家はいるか。
土岐 当社には、水処理や節水、水リサイクル、水道網の質の向上などを手がける世界の企業に投資する水資源関連株式戦略などもあり、日本の一部の年金基金に採用いただいた。様々な商品提供を通じてGSSの理念を一層広めていきたい。
ソーシング力を備えたプライベート・デットに強み
足元では、世界的な低金利の影響もあり機関投資家は運用難に直面している。商品ラインアップのなかで、とくに強みとする資産クラスは。
土岐 まずはプライベート・デットで、国内投資家向けにすでに提供している欧州ABS(資産担保証券)戦略のほか、インフラデット戦略などが含まれる。インフラデットを投資戦略として商品化するには、運用者自らが企業の資金ニーズを発掘しなければならない。機関投資家の安定運用ニーズに応えるには、業種や地域などを分散する必要もある。流動性が低く、他の資産に比べて市場規模が小さいプライベート・デット投資では、運用者のソーシング力(案件発掘力)がパフォーマンスを左右する。当社が属するBNPパリバ・グループは世界中の様々なプロジェクトに関与し、企業の資金ニーズについて豊富な情報をもつ。当社は利益相反の懸念を確実に回避しながら、グループ内で適切に連携して投資妙味の高い案件に投資する。
日本の年金基金の間では、長期安定運用に資するオルタナティブ資産の関心が高い。
土岐 現在、日本でオルタナティブ資産といえば不動産などのイメージが強いが、我々は、今後インフラの注目度が高まるとみている。従来のインフラ投資の対象資産は、海外の発電所や空港などが多かった。一方、日本では、今後多くの公共施設が老朽化による更新時期を迎える。政府は公共施設の整備・運営と財政健全化を図るために、民間の創意工夫で新たな価値・ビジネス機会を創出する「PPP/PFI(官民連携事業/民間資金等活用事業)」に力を入れている。これにより、日本国内でインフラ投資に適した資産が続々と誕生するだろう。
BNPパリバ・グループの地元のフランスでは、水道など公益事業の民間委託が早くから行われている。それに伴いインフラ投資用の資産が市場に供給され、金融商品化が進んだ。当グループが培ったインフラ資産の選別や商品化のノウハウは、日本のインフラ資産でも十分に発揮できる。現状、インフラ商品は金融機関向けなどが中心だが、今後は年金基金も利用しやすい国内資産のインフラ商品も開発・提供していきたい。