【特別寄稿】ブルームバーグ Buyside Journey – 世界のバイサイドのリーダーが選択する4つの道筋とは。あなたなら、どの方針を選びますか?
Bloomberg L.P.
Steven Ioannou, Philippa Thompson
効率的なデータの活用と拡張性の高いオペレーションの実現
世界のリーダー的立場にあるアセットマネジャーの皆様は、競争力を維持し続けるために、最先端の技術を採用し、積極的に新しい資産を取り込み、パフォーマンスの最適化に努めている。そして業務を遂行するにあたり、最も効率的で効果的なデータの活用方針と、それを実現する最新のテクノロジー戦略を選択する必要性を感じている。
規制機関や顧客の皆様が透明性と効率をより重視し、業界全体が以前に増して手数料に敏感になっている今、こうした傾向は特に加速している。2018年1月には欧州でMiFID IIが施行された。この規制は世界規模でさまざまな影響をもたらしており、香港ではファンドマネジャーに対する業界ルールの改正、米国ではミューチュアルファンドに関するルールの近代化も進んでいる。規制の影響は、今後も大部分のアセットマネジメント企業およびウェルスマネジメント企業に波及していくと見られる。
複雑で広範囲なデータへの需要が急速に高まりを見せるなか、次世代のオペレーションを目指すバイサイド企業間において、データのあり方を中心に据えた技術戦略、つまり成長を促すことができる、効果的かつ拡張性の高いオペレーションを実現し維持することができる、明確なターゲットオペレーティングモデル(TOM)が不可欠になってきている。
TOMを開発するにあたり、考慮すべき重要なポイントは以下の3つである。
まず、既存のシステムとプロセスを見直す必要があること。アセットマネジメント企業の多くが複数のテクノロジーソリューションを利用しているが、その結果として、TOMの開発において、不十分な統合化や従来型ソフトウェアによる制約が発生した場合、包括的な投資の監督や、運用会社全体での不正行為の監視が困難となる。また、複数のファンドの運用実績の計算や特定の発行体へのエクスポージャーを把握するといった、一般的な業務も難しくなる可能性がある。
2つ目は、社内におけるステークホルダー間の優先順位を確認すること。最高経営責任者、最高投資責任者、最高技術責任者、そして最近、台頭している最高データ責任者などが、それぞれの立場において異なる事項を優先してしまうことがある。TOMの開発は、このような各ステークホルダーに連携を促し、共通の優先事項を再確認し、共有することを可能にする。
3つ目に、外部の技術パートナーが御社の優先事項を十分に理解しているのか、また彼らに何を求めるのか、再確認することが重要である。ある第三者機関の研究によれば、従来型社内システムは、新たな取り組みに必要な拡張に対応しないため、注文や執行管理、ポートフォリオのリスクと分析、データ管理などの重要かつ複雑なシステムに関しては外部の技術パートナーに頼っている。データ要件を将来にわたって使えるようにするうえで、堅牢なホスト型システムが非常に有効となるだろう。
技術変革において重視すべき4つのカテゴリー
ブルームバーグは、世界中のバイサイド企業の皆様とのTOMの開発に取り組んだ結果、データおよび技術変革を、企業の置かれている状態や目的別に、大きく4つのカテゴリーに分別し、明確化することができた。
資産運用会社は目標のTOMに達成するために、1つを選択する場合、もしくは成長の過程でいくつかの変革を経験し、最終目的に達成することもある。
ここでは資産運用会社が選択できる方針を大きく4つ挙げたが、技術やデータを変革する方法は1つには限られず、完全に終わることはない道のりでもある。
専門性、展開、統合、あるいはアライメント、これらのどれを実行に移すかにかかわらず、その途中で組織とオペレーションモデルは進化し、新しい技術とデータセットも出現する。
ますます競争が激しくなる投資環境のなかで優位性を保つためには、各企業のビジネスリーダーと技術リーダーは、TOMが確実に時の流れに耐えられるよう、再評価することも必要なのだ。