アリアンツ・グローバル・インベスターズ プライベートデット、不動産が市場のけん引役に。金利変動リスクが限定的な『ALWOCA』に注目欧州機関投資家のオルタナティブ投資動向
欧州でオルタナティブ資産への投資意欲が高まっている。ボラティリティが増大している株式や、利回りの低下にあえいでいる債券に対して、独自のリスク・リターン特性により分散効果やパフォーマンスの向上が期待できるからだ。世界有数の保険会社であるアリアンツ SEを親会社に持ち、オルタナティブ資産市場において実績を積んできたアリアンツ・グローバル・インベスターズのグローバル・ヘッド・プロダクト・スペシャリスト・オルタナティブのハンス・ユルゲン・バイデンバッハー氏に話を聞いた。
オルタナティブ資産のボラティリティ低減効果が再注目
株式や債券といった伝統資産に代わるオルタナティブ資産の市場動向は?
オルタナティブ資産市場は直近、世界全体で平均15%ほどのペースで拡大している。市場拡大のけん引役になっているのが、プライベートデットだ。同じくけん引役の一つに挙げられる不動産は以前ほどの伸びは見られなかったが、引き続き注目の投資先であることは間違いない。
オルタナティブ資産の投資ニーズは今後5年間でさらに高まり、平均20%程度の高い伸びで推移していくと見る。
欧州機関投資家のオルタナティブ資産に対する投資意欲は?
リーマン・ショック以降、オルタナティブ資産への投資ニーズは高まる一方だ。その理由は3つある。1つ目は株式や債券といった伝統4資産と異なる値動きが期待できること。例えばプライベートエクイティや不動産、インフラといった多様な収益の源泉を持つアセットクラスへの投資による分散効果が期待されている。
2つ目は歴史的な低金利によって債券の投資魅力が大きく低下するなか、少しでも高いイールドを求める多くの機関投資家がオルタナティブ資産に目を向けていること。
3つ目がボラティリティの低減効果だ。とくにコロナ・ショックにより金融市場が動揺し、株式市場や債券市場においてボラティリティが急拡大した一方で、オルタナティブ資産のなかには軽微な影響で済んだアセットクラスもあったことから、改めてボラティリティの低減効果が注目されている。
一般的な債券はインカムが低減し、株式のボラティリティが高まっていることから、足元では欧州機関投資家が債券よりインカムが高く、ボラティリティの低いオルタナティブ資産への投資ニーズの向上は必然的と言える。
とくに最近は、コストやリスクに対する意識が一段と高まっており、よりリスクやコストが低い投資先が好まれる構造になっている。単純に流動性を犠牲にしてもリターンが高ければよいという発想ではなく、リスク対比、コスト対比でどれほど魅力があるかを重視する傾向が強まっている。
ダイレクトレンディングが人気魅力的な投資先が残るアジア地域
オルタナティブ資産のなかで、欧州機関投資家から特に引き合いの強いアセットクラスは何か?
欧州以外の国・地域でも同じような傾向が見られるが、プライベートデットの一つであるダイレクトレンディングに目を向ける機関投資家が多い。オルタナティブ投資の経験がまだ浅い機関投資家は、先進国を好む傾向にあるが、欧米地域では有望な投資先が減っているのが実情だ。
そこで弊社では、魅力的な投資先が十分に残っているアジアを対象にした『アジアダイレクトレンディング』を提供している(図表1)。今後は、分散投資の視点からもアジアなど、多くの機関投資家が資金を振り向けてこなかった地域への投資も増えてくるだろう。
■図表1 約13兆円※の幅広い非流動性オルタナティブ戦略提供
社会貢献活動と収益を両立する『ブレンデッド・ファイナンス』
SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)などに対する関心はどうか?
もちろん注目度は高い。SDGsやESGなどの進展により、環境や社会への好影響と運用収益との両立をめざすインパクト投資や脱炭素投資などが増えている。弊社でもSDGsやESGの観点で、開発銀行などの国際金融機関が手掛ける新興国を中心としたインフラ投資案件などに、民間からの投資資金も入れることで、社会性の高い活動に貢献するとともに収益も得られる『ブレンデッド・ファイナンス』と呼ばれる戦略も提供している。
同戦略は、2021年3月にEU(欧州連合)で導入されたSFDR(サステナビリティ情報開示に関する規則)のなかで、最も厳格といわれる9条に適合した運用プロダクトであり、サステナビリティに注目している投資家から高い関心を集めている。
安定性と高いリターン獲得を目指すインフラ戦略
インフラ投資へのニーズはどうか?
弊社でもインフラエクイティとインフラデットの戦略の引き合いが多い。なかでも『アリアンツ・レジリエント・オポチュニスティック・クレジット(AROC)』は、コア、コア+、コア++/バリューアッドといった幅広いインフラ資産のシニア/ジュニアデットに投資を行うことで、高いリターンの獲得を目指す。インフラならではの安定性を有しながらも、高リターンを狙う。同戦略は、長期投資を志向する生命保険会社や大手の年金基金のニーズにマッチするのではないか。
銀行の規制強化や手形の電子化が『ALWOCA』の追い風に
ほかに御社が提供する戦略のなかで、機関投資家からの引き合いが強いものは何か?
足元では欧米の利上げが想定され、インフレの高進やロシア・ウクライナ情勢の悪化などの様々な要因により、マーケット全体でボラティリティが高止まりしている状況にある。こうした環境下で機関投資家からの関心が高まっている戦略の1つが、『アリアンツ・ワーキング・キャピタル戦略(ALWOCA)』だ。金融ショック以降の規制強化によって、これまでのような資金提供が難しくなった銀行融資に代わって存在感の増すトレードファイナンスの商品になる(図表2)。欧州での手形の電子化義務化という環境変化も追い風となって引き合いが強まっている。
■図表2 商取引の円滑化を支える短期のファイナンス「トレードファイナンス」
ALWOCAは安全性の高い売掛債権・買掛債務ファイナンスに約8割を配分しており、グループ企業であるユーラーヘルメスなどのリソースを活用してクレジットを分析。ソーシング力などの強みを生かし、3カ月EURIBOR+200bpsを目標にしている。
ALWOCAの大きな魅力は金利リスクの低さだ。例えば欧州ハイイールド社債は高いリターンが期待できるものの、デュレーションが長いため、大きな金利リスクを負うことになる一方で、ALWOCAはウルトラショート・デュレーションと呼ばれる60日~90日程度の回収期間が非常に短い債権に投資していることから、金利の変動リスクが限定的に抑えられる。すぐに使わないような資金、例えば将来のM&Aに備えて口座に置いてあるような性質の資金の投資先として考えられるだろう。
「risklab」を通じて運用ソリューションサービス提供
アリアンツ・グローバル・インベスターズのサービスについて、どのような点が評価されているか?
弊社が機関投資家から評価いただいている点は4つある。まずは親会社であるアリアンツ SEと同じ考えのもとで、長期目線の投資を行っている点だ。世界有数の保険会社ということもあり、新しく取引を始める方にとって大きな安心材料になっている。
2つ目は、豊富な経験と実績を持つ運用チームを擁していること。特にダウンサイドリスクに耐性のある、長期保有に適した運用プロダクトを中心に、多様なラインアップをそろえている。長い間に培った信頼感をベースにしたソーシング力も高く評価されている。
3つ目は、ESG投資のフロントランナーであること。1999年に初のSRI関連戦略を立ち上げ、2007年にはPRI(責任投資原則)に最初に署名した50社の1つとなるなど、ESGという言葉が広がる前から取り組んでおり、現在はすべての運用プロダクトの投資判断にESGの要素をインテグレーションしている。
さらには運用プロダクトを提供するだけでなく、ポートフォリオ分析などの運用ソリューションサービスも行っている。それが専門家チーム「risklab」(リスクラボ)によるアドバイザリーサービスだ。60名以上の専門家が在籍しており、我々が持つ幅広い商品ラインアップのなかからどの運用プロダクトを組み合わせればいいのか、アドバイスを行っている。
私がアリアンツグループに入社して20年以上が経つ。その間、オルタナティブ資産のラインアップを増やし、プロダクトの組成などを手掛けてきた。今後も長期運用のベストパートナーとして、それぞれの機関投資家に最適な運用プロダクトや運用ソリューションを提供していきたい。
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アリアンツ・グローバル・インベスターズ・ジャパン株式会社
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