M・コーリー・ゴールドマン(M. Corey Goldman)
カナダを拠点に北米経済全般・資本市場をカバーするフリーの金融ジャーナリスト。以前は、ブルームバーグ・ニュース、CNN、トロント・スター、カナダ・フィナンシャル・ポストなどで取材・編集を担当。社会奉仕活動ではHelp For Children/Hedge Funds Care(ニューヨーク)役員を兼任。

嫌われ者同士で争った大統領選

2016年11月8日投票を前にした米大統領選挙運動期間を通して、米国を含む大半の国々は、世界にとって重要な枠組みがスローモーションのように崩れる様を否応なく見せつけられてきた。

共和党のドナルド・トランプ氏、民主党のヒラリー・クリントン氏の両候補は、修辞法と誇張法を駆使してそれぞれの主張を繰り返した。しかし、今回の選挙が嫌われ者候補2人のなかからましな方を選択するしかないものになったことは衆目のほぼ一致するところだ。

全米各地の演説などで明らかになった両候補の経済、金融、財政、貿易に関する立場が、米国経済や世界経済への投資家の期待に直接影響する場面は見られなかった。しかし、日本やその他の国々は、両候補の貿易に関する発言に最も神経をとがらせてきた。トランプ氏は、中国、メキシコを筆頭に諸外国に対して激しい口調で否定的な見解を述べ続けた。国務長官当時、TPP(環太平洋経済連携協定)の旗振り役だったクリントン氏は、選挙戦に入ると立場を一変させてTPP断固反対を貫いている。

トランプ氏は選挙期間中、「TPPはひどい協定で、(米国に)トラブル以外の何物ももたらさない」と繰り返し断言した。一方、クリントン氏は「今は(TPPに)反対だ。選挙後も反対する。もちろん、大統領に選ばれても反対する」と明言してきた。

両候補の発言からは、いずれが大統領になっても新米政権が打ち出すと思われる政策がはっきり読みとれる。新政権下での米国の諸外国との関係の在り方は必然的に変わる可能性が高い。TPPについては、協定の見直しまたは廃棄のいずれの場合でも、米国が輸入の直接規制か、米国企業による生産の海外アウトソーシングの規制を行うことが懸念される。そうなれば、世界情勢は2017年から決定的に変貌する。

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