日本政策投資銀行 代表取締役社長 橋本 徹氏 メザニンレンダーとしての役割果たし、他の金融機関とのリスクシェアを図る
3つの機能がソリューションに。航空機材ファイナンスに期待
どのようなソリューションでこれらの重点課題を解決していくのか。
橋本 当行が持つ3つの機能がソリューションになる。1つ目の機能は「金融機関等との適切なリスクシェア」だ。我々は長期や大口、メザニンファイナンスといったリスク性の高い資金供給を手がけるなど、他の金融機関などとの適切なリスクシェアを図り、資金循環の活性化につなげていく。
羽田空港国際線旅客ターミナルの案件では、他の金融機関とともに1000億円を超える巨額かつ超長期のシンジケート・ローンを組成した。東武鉄道が東京スカイツリーなどの大規模プロジェクトに着手した際には、財務体質向上のために発行された優先出資証券(ハイブリッド証券)を引き受け、複数の金融機関との協調融資を実施している。
2つ目は「投資家の運用ニーズへの対応」になる。シンジケート・ローンなどの金融スキームを通じて地域金融機関や年金基金などの運用の多様化を図ると同時に市場の活性化を促す。
2013年にはスカイネットアジア航空の航空機の購入資金を融資するため、地元の金融機関である宮崎銀行をはじめ、九州地域の金融機関とシンジケート・ローンを組んだ。就航地に拠点を構える地域金融機関に運用機会をもたらすWIN-WINのスキームになったといえるだろう。
「金融の枠を超えたナレッジの提供」が3つ目の機能だ。中立的ネットワークと産業調査力を活かして、新しい「場」の創造などに取り組むとともに、長期的視点に立った良質なナレッジを提供していきたい。
DBJが本邦初の金融スキームとして手がけたPFIやプロジェクトファイナンスは日本でもかなり浸透してきた。第二のPFIやプロジェクトファイナンスとして期待している新しい金融スキームはあるか。
橋本 期待という意味では航空機材ファイナンスが挙げられる。現在、国内の航空会社だけでなく、トルコ航空といった海外の航空会社にも航空機材を担保に、長期資金を調達する航空機材ファイナンスを行っている。
また、カナダ・オンタリオ州教職員年金基金(OTPP)と共同で、米ゼネラル・エレクトリック(GE)の航空事業部門であるGEアビエーションと、航空機エンジン「GE9X」(米ボーイングの新型航空機777Xに搭載される予定のエンジン)に使用される高度な技術開発を支援すべく戦略提携を行っている。今後も年金基金などと協力していきたい。
社会的な課題解決と利益創出の両立を目指す
DBJの今後の収益源は何か。
橋本 やはり我々の得意分野であるメザニンファイナンスになるだろう。通常の融資や社債が該当するシニアファイナンスより返済順位が下位にあり、投資リスクが高い優先株や劣後ローンをはじめとしたメザニンファイナンスを取り扱うことで、企業にとっては資金調達手法の多様化、投資家にとってはミドルリスク・ミドルリターンの投資機会をもたらす。
これからもメザニンレンダーとしての役割を果たして、シニアローンを主力とするメガバンクとのリスクシェアを図っていきたい。
海外市場に活路を見出す日本企業が増えている。DBJはどのような海外戦略を描くのか。
橋本 海外進出の足がかりを得るには、これからもM&Aが有力な手段になるのは間違いがない。
当行ではシンガポールとロンドンに現地法人、ニューヨークに事務所と、主要都市に海外拠点を構えている。これらの拠点と連携しながら買収資金の融資のみならず、M&Aのアドバイザリー業務を通じて企業の海外進出を手助けしている。また、英国の洋上風力発電所「ガンフリート・サンズ」に出資するなど、海外企業の事業支援も行っている。
DBJが目指す理想の金融機関像とは。
橋本 社会的な課題解決を目的とした金融活動をし、そのうえで利益を得る。2011年にハーバード・ビジネス・スクールのマイケル・ポーター教授が提唱したCSV(共通価値の創造)の概念と方向性は同じだ。
短期的にはいろいろな利益の創出方法があるが、我々は持続的な利益の創出に取り組んでいく。これからも公益に奉仕しながら利益を生み出す金融スキームを提供していきたい。