ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント(以降ステート・ストリート)の『ABF 汎アジア債券インデックス・ファンド(PAIF)』は、アジア8カ国・地域の債券へ低コストで分散投資を可能にするパッシブETFだ。米国一極集中の見直しが進み、アジア現地通貨建て債券への関心が高まるなか、ステート・ストリート運用部の駱正彦氏と山下文音氏に、アジア債券市場と『PAIF』の魅力を聞いた。

ステート・ストリート運用部の駱正彦氏と山下文音氏
ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント
運用部 チーフ債券ストラテジスト 駱 正彦氏(左)
運用部 ポートフォリオ・マネジャー 山下 文音氏(右)

AI株高の波及効果も

2025年4月の「解放の日」を境に、世界の資金の流れは大きく変わった。ドルベースでは米国株式や先進国株式の上昇が3割台にとどまる一方、新興国株式は約6割上昇。債券でも新興国債券のリターンは先進国国債を大きく上回っている。

駱 正彦氏

「最大の変化は『脱・米国』の動きだ。新興国の中央銀行や機関投資家は過去20年にわたり新興国資産をアンダーウエートとしてきたが、その見直しが始まった。ウエートを中立に戻す資金フローは今後も続く」と、チーフ債券ストラテジストの駱氏はこの変化を構造的なものと捉える。

まとまった資金の受け皿となり得る市場は限られる。金やトリプルA格の小規模な国債市場を経て、資金は新興国、なかでもアジアに向かうと駱氏はみる。追い風となるのがAI(人工知能)だ。「AIの恩恵は、生成AIを主導した米国一強の段階から、AIインフラやフィジカルAIへ広がる局面に入った。そこで最大の受益者となるのはアジアだと考えている」。台湾や韓国の株高はその表れだ。見逃されがちだが、株式が上がれば、年金基金などの機関投資家はその分リバランスを行うため、債券市場への資金流入も促される。「AIブームによる株高の“第2の波及効果”がアジア債券に及ぶ可能性が高い」(駱氏)

先進国金利との低相関

アジア債券市場そのものの成熟も無視できない。日本を除くアジア主要国が世界のGDP(国内総生産)に占める割合は約22%に達し、域内債券の年間発行額は2020年比で約4倍に拡大。財政悪化から格下げが相次ぐ先進国とは対照的に、アジアのソブリン格付けは改善傾向にある。

山下 文音氏

市場整備の進展を象徴するのが韓国だ。ポートフォリオ・マネジャーの山下氏は「韓国は為替取引時間の延長や決済インフラの整備など、外国人投資家を呼び込む取り組みを重ねてきた。2026年4月に始まったWGBI(世界国債インデックス)への段階的な組み入れはその成果であり、アジア債券市場の成熟を象徴する出来事だ」と話す。

注目すべきは、WGBIの金利感応度と比較すると、アジア債券は先進国債券より安定感がある点だ(図表1)。駱氏は、「第一に、アジアは国内投資家層が厚く自国で資金調達を完結できるうえ、年金制度の発達により自国債券への安定した需要がある。第二に、財政拡張でインフレが高止まりする先進国と異なり、中国発のディスインフレ圧力が域内の物価を抑えている」とアジア債券市場の優位性を説明する。

【図表1】WGBIの金利変化に対する各国10年債金利の感応度
WGBIの金利変化に対する各国10年債金利の感応度
出所:Bloomberg、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2026年6月末時点。WGBIおよび各国10年債の月次利回りデータ(2016年7月~2026年6月の10年間)を基に算出。

こうした結果、リスク調整後リターンは先進国債券を上回る水準だ(図表2)。過去10年の円ベースのリターン/リスクは、アジア債券の1.25に対し先進国債券は0.89。リターンの主要な源泉は年率約4%の安定したインカム収益だ。現地ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント『ABF 汎アジア債券インデックス・ファンド(PAIF)』通貨建てゆえに為替変動は伴うが、「主要な新興国債券指数と比べてアジア通貨は為替のボラティリティが安定しており、2014年以降の長期パフォーマンスでも上回っている。とりわけ足元の中東情勢で各国通貨が振れるなかでも人民元が安定を保ち、ポートフォリオ全体を支えている」(山下氏)。

【図表2】アジア債券と先進国債のリスク・リターン比較
アジア債券と先進国債のリスク・リターン比較
出所:Bloomberg、ステート・ストリート・インベストメント・マネジメント。2026年6月末時点。アジア債券=iBoxx ABF Pan-Asia Bond Index、先進国債=FTSE世界国債インデックス(除く日本、WGBI ex Japan)。円ベース、2016年7月~2026年6月

独自設計の分散力

このようなアジア債券の強みを享受するのが、ステート・ストリートのETF『ABF汎アジア債券インデックス・ファンド(以降、PAIF)』である。PAIFは、アジア通貨危機を教訓に、東アジア・オセアニア中央銀行役員会議(EMEAP)が立ち上げた域内債券市場育成イニシアチブから誕生した。中央銀行の後ろ盾を持つ異色のETFだ。2005年の設定から20年超の実績を重ね、香港証券取引所と東京証券取引所の両方に上場する。純資産は約38億米ドル(2026年3月末時点)に上り、ETFならではの日次流動性も備え、直接投資のハードルが高い現地通貨建て債券への効率的なアクセス手段となっている。

投資対象はアジア8カ国・地域の国債・政府関連債だ。これら8カ国を、高い利回りが期待できる「高キャリー」のインドネシアとフィリピン、低インフレ環境への移行が進む「日本化」の中国とタイ、そして「AI関連投資の恩恵」が見込まれるマレーシア、韓国、香港、シンガポールと3テーマで整理できる。性格の異なる市場を一つの商品で組み合わせ、アジア債券の構造的な成長を取り込む設計だ(図表3)。

【図表3】PAIFはアジア8カ国・地域の現地通貨建て国債・政府関連債に分散投資

PAIFはアジア8カ国・地域の現地通貨建て国債・政府関連債に分散投資

時価総額加重に依らない独自のウエートも特徴だ。「時価総額では中国が市場の約8割を占めるが、PAIFは各国25%を上限に、均等12.5%をベースとして市場規模や流動性、格付けなどから独自にウエートを決める。市場を整えるほどウエートが大きくなる仕組みだ」と山下氏。現在、唯一指数内で最大の25%を占める中国は「金利・通貨の両面で、足元のパフォーマンスの安定に寄与している」という。

PAIFの年間0.18%という低い経費率も魅力であり、これは債券インデックス運用のパイオニアたるステート・ストリートの運用規模がなせる業だ。同社の債券取引額は2025年だけでグローバルで1.4兆ドルに達し、この規模が取引コストの低減を支えている。

山下氏は「債券ポートフォリオの中核となっているWGBI連動の先進国債券の一部をアジア債券に置き換えることは、分散の観点から検討に値する」と日本の機関投資家にアドバイスを送る。さらに駱氏は、「当社では、原油価格の落ち着きと利下げサイクル入りを前提に今後数年間で5~10%程度の緩やかなドル安・円高が進むと予想している。為替の影響で割安化したアジア通貨を保有する意義も増すだろう。また利下げ局面に移ればキャピタル収益にも期待できる」と補足する。こうしたエントリーの好機のなか、安定したインカム収益と地域分散、そしてAIがけん引するアジアの成長機会を一つのETFで取り込める『PAIF』は、債券投資の有力な選択肢となるだろう。

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【手数料・費用】ABF汎アジア債券インデックス・ファンドの信託財産において生じる費用は合計で当ETFの純資産価額の年率0.18%(2026年6月末時点)です。その他の費用等は、運用状況等により変動するものであり、事前に上限額を示すことができません。上記の費用はいずれも将来にわたり変更される可能性があります。

ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズ株式会社

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