学校法人・金融法人の担当者必見! 機関投資家ゼロからの資産運用 新シリーズ【さらに知りたい勘どころ】第1回 マルチ・アセット運用(前編)〜資産の選択と配分が収益源泉
今回から新シリーズ【さらに知りたい勘どころ】がスタートします。これまでの連載でカバーし切れなかったテーマや、読者のみなさまから「もっと詳しく知りたい」と要望があった点などに関して、ラッセル・インベストメントの金武伸治さんに深掘りしていただきます。第1回、第2回は昨今、その効用に関して様々な意見があるマルチ・アセット運用にフォーカスを当てます。
そもそも、マルチ・アセット運用とはどういった戦略なのですか。
金武 株式や債券など複数(マルチ)の資産(アセット)を対象として、横断的な投資を行う運用戦略です。投資対象資産の選択と配分が主な収益源泉となります。
先進国株式や債券だけでなく、新興国の株式や債券、さらにはハイイールド債券なども投資対象とします。ヘッジファンドやプライベート・アセット(主には不動産)などのオルタナティブ、原油や金などのコモディティに対象を広げる場合もあります。
各運用機関・運用戦略は、投資対象資産の配分比率の決定や変更方法に特徴を持たせて、他のマルチ・アセット運用戦略との差別化を図っています。また、個別資産をアクティブ運用することで、銘柄選択などによる超過収益を狙う運用戦略も多いです。
「ジャッジメンタル」と「リスク・パリティ」
資産配分比率の決定方法には、いくつか種類があるのですか。また、それらに大きな違いが存在するのでしょうか。
金武 マルチ・アセット運用は「ジャッジメンタル型」と「リスク・パリティ型」に大別することができます。
ジャッジメンタル型とは、各投資対象資産の投資魅力度、つまり期待リターンやリスクに応じて、機動的な資産配分比率の変更を行う戦略です。多くの場合、個別資産に対する分析に基づいて資産配分比率を定性的に決定します。このため金融市場のリスクが高まる局面では、株式から債券に資産配分をシフトさせることや、キャッシュに逃げるなどといった投資行動をとることがあります。
リスク・パリティ型とは、各資産に等リスク配分で分散投資を行う戦略です。高リスク資産に対する配分を下げ、低リスク資産に対する配分を高めることによって、各資産からのリスク寄与度を均等にしようというものです。
また個別資産の間には、互いに相関が高い資産や、逆に相関が低い資産が存在します。このため、相関が高い資産同士に対してはやや配分を低くし、相関が低い資産同士に対してはやや配分を高めるなど、リスク(標準偏差)と相関係数の双方を考慮したうえで、等リスク配分ポートフォリオを構築します。
そして市場リスクが高まる局面では、ポートフォリオ全体のリスクを低下させます。具体的には、個別資産に対する配分比率を一定に保ちながら、全体の投資金額を縮小させます。キャッシュ保有比率を高めたり、レバレッジを下げたりします。
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